§2 濃縮ウランをめぐる世界の動向
2米国の動向

米国は,オークリッジ,パデューカ,ポーツマスの三濃縮工場を有しており,これによって自国および自由世界に対してウランの賃濃縮を行なっているが,現在のままでは,早晩需要に応じきれなくなるため,とりあえず現有施設の拡充改善により,1978年頃までに分離作業能力を年間最大26,000トンSWU程度に高める計画をもつている。しかし,この計画を達成したとしてもなおこの時点での世界全体の需要を満たすことはできず,1980年以前に新工場の建設が完了していなければならないとされている。なお,現在のところ新工場建設計画については具体的な動きはみとめられない。
 一方,1969年11月ニクソン大統領は,将来濃縮工場を民間に移管する方針である旨の声明を発表し,これに続いて現在濃縮工場を管理している米国原子力委員会(USAEC)は1971年2月から濃縮料金を28.7ドル/1kgSWUに改訂し,さらに9月からはこれを32ドルに値上げすることを決定した。
 このような米国の一連の動きは,濃縮を米国に依存している各国に大きな不安を与えており,こうした事情から欧州諸国では独自に濃縮工場を建設しようという動きが出ている。


目次へ          第2章 第3節へ