§1 原子力発電所の建設
4原子力発電所の立地

急速に拡大しつつある電力需要を満たすことは,国民生活の向上,産業社会の発展にとって不可欠のことである。しかし,国土が狭く,人口が密集し,また原子力に対して極めて敏感な国民感情を持つわが国において,原子力発電所の立地を確保するには,種々の困難をともなってくる。このため,国,地方公共団体および電気事業者等は原子力発電の安全性の確保や地元住民の理解と協力を得て立地確保を円滑に推進するため,住民と一体となった放射能監視体制や環境保全に多大の努力をはらってきた。
 国は38年度より原子力発電所立地調査を全国的に行なってきている。これは国が県等に委託して地質調査,気象調査を行なうもので,これら調査された地点め中から数ケ所が電気事業者によって原子力発電所の建設予定地として選定されている。45年度は北海道瀬棚郡北檜山町字共和,および岩手県下閉伊郡田野畑村大字田野畑の地点について調査が行なわれた。
45年度に漁業補償等の問題が解決して着工の運びとなった地点としては,中部電力浜岡(静岡県),九州電力玄海(佐賀県)があり,交渉中のものとしては東北電力女川(宮城県)がある。このほか電気事業者でもそれぞれの地点で用地買収漁業補償等の交渉を行なっている。
 これらの用地を確保して原子力発電所の建設を促進するためには,地域住民の理解と協力を得るため原子力に関するPR,放射能監視体制の確立,温排水に対する水産業への配慮等が必要である。国および財団法人日本原子力文化振興財団等は,45年度も各種のセミナー,原子力に関する講演会,巡回PR映画会,展示会等を開催し,原子力に関する一般の関心を高めるよう努めた。温排水問題についても放射能調査委託費により水産資源保護協会が東海発電所および原研のJPDRの温排水を利用した養殖に関する試験研究を計画しており,積極的に取りくんでいる。


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