II 原子力委員会の計画および方針

7 原子力第1船建造について

(41年7月14日
決    定)

 当委員会は,昨年7月以来「原子力第1船開発基本計画」の実施上の問題点につき検討を行なってきたが,このたび,日本原子力船開発事業団を通じて国産舶用炉を搭載した場合と輸入舶用炉を搭載した場合とのそれぞれにつきその予備設計および船価見積りを詳細に比較検討し,さらに原子力船懇談会等関係各方面の意見をも聴取した結果,下記の諸点を考慮し,既定の計画の線に沿って国内技術を主体とする原子炉を搭載する原子力第1船の建造を推進すべきであることを確認した。
 なお,本計画の遂行にあたっては,造船工業会,原子力産業界等の関連業界の積極的な協力が不可欠であり,また,舶用炉の設計および製作を効率的に進めるためには最小限度海外技術を活用することが必要であると考える。


(1) 前記の比較検討の結果,国産舶用炉搭載船および輸入舶用炉搭載船のそれぞれの船価見積りの概算額の間には大差がなく,いずれも50億円をこえる額であったこと。

(2) 船価見積りの概算額は,すでに予算化されている建造費36億円を大幅に上廻ることとなるが,これは,主として計画立案当時における船価算定根拠に関する情報の不足から,結果的には船価の評価が不正確になっていたことのほか計画決定後における船価の上昇があったこと等の事情によるものであること。

(3) 昨年7月当時の船価見積りの内容には少なからず不確定要素が含まれており,国内技術を主体とする原子炉の採用について,検討すべき問題点となっていたが,その後における関係者の努力により,この不確定要素もおおむね明らかにされるに至ったこと。

(4) 西独におけるオットハーン号建造の進捗状況,米国における高速原子力商船体の建造計画の推進等の原子力船をめぐる国際情勢の進展にかんがみ,また,将来におけるわが国の造船技術の国際的主導性を維持するためには現時点において原子力第1船の建造を促進する必要性が強まっていること。


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