第3章 核燃料
§1 核燃料所有方式の方針

 原子力委員会は33年4月,核燃料物質は原則として国の所有とし,内外における諸条件が整うにしたがい,民間の所有を考慮することを決定した。
 その後36年にいたり,この方針に従い,天然ウランおよびトリウムに限って,その民有を認めた。したがって,濃縮ウラン,プルトニウム等の特殊核物質は,現在なお国有となっている。1964年(昭和39年),米国において通称「特殊核物質の民有化に関する法律」が施行され,このため,日米原子力協力協定上,日本政府が特殊核物質を所有する義務は必ずしも必要ではなくなった。これにともない,わが国においても特殊核物質を民有化することが,原子力産業界から要望されるにいたった。
 このため,原力力委員会は,かつて国有を決定した際の条件の一つであった核燃料物質に関する平和利用の保障,安全の確保について,国内外の管理体制もすでに整備された事情にかんがみ,わが国の原子力発電が民間事業者によってようやく本格化しつつあるこの時期に,核燃料は民間に所有せしめ,これにより,各企業の責任において自主的に運営させることが,国としても原子力発電の推進にあたって,より有効であるとも考えられるので,特殊核物質民有化の方針を固め,日米協定の改訂,民有化にあたっての措置等その実施方策の検討をすすめている。


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