第5章 安全対策

§1 放射線審議会の活動

 放射線審議会は,放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一をはかることを目的として,総理府に設置されている。同審議会は,技術的基準を策定するにあたって,放射線を発生する物を取り扱う従事者および一般国民のうける放射線の総量をこれらの者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とすることを基本方針としており,関係行政機関の長からの諮問に対して答申を行なったり,必要に応じて意見を述べたりする。
 放射線審議会は,国際放射線防護委員会(ICRP)が1962年に発表した勧告を検討するため,昭和39年10月に開催された第15回総会で,ICRP勧告特別部会を設置し,これを審議することとした。同特別部会は,40年2月以来,妊娠可能年令の婦人に対する職業上の被曝,ストロンチウム90の最大許容濃度等の事項について審議を行なっている。
 一方,運輸大臣から,39年9月,船舶安全法にもとづく原子力船特殊規則の制定にあたり放射線障害防止に関する技術的基準について諮問をうけたので,放射線審議会は,原子力船特殊規則特別部会を設け,7回にわたって審議を行なった後,40年3月に開催された第16回総会で,その結論をえて,答申を行なった。
 同じく運輸大臣から,39年10月,航空法および航空法施行規則にもとづく「航空機による爆発物等輸送基準を定める告示」の制定にあたり放射性物質の輸送基準について諮問をうけたので,放射線審議会は,第15回総会において,放射性物質航空輸送特別部会を設け,これを審議することとした。
 また,通商産業大臣から,40年2月,電気事業法にもとづく「原子力設備に関する技術基準を定める省令」の制定にあたり放射線障害防止に関する技術的基準について諮問をうけたので,放射線審議会は,第16回総会で,原子力発電基準特別部会を設け,これを審議することとした。
 他方,内閣総理大臣から,38年「放射性物質の大量放出事故に対する応急対策の放射線レベルについて」諮問をうけたので,放射線審議会は,災害対策特別部会を設け,諮問事項を審議することとした。同特別部会は,39年3月以降39年度末までに8回の会合をもち,放射線による災害の規模を想定し,放射線による生物学的影響に関するデータとその評価にもとづいて,放射線の遺伝的影響をも考慮しながら,放射性物質の大量放出時における応急対策の放射線レベルについて審議を行なってきた。40年度もひきつづき審議を行なうことになっている。
 放射線審議会の放射能測定部会は,自然に賦存する放射性物質から発生する放射線,核爆発にともなう放射性生成物から発生する放射線などの測定方法について審議を行なっており,これまでに,放射能測定法,ストロンチウム90分析法およびセシウム137分析法を制定したが,39年度には,よう素131分析法を制定すべく作業を行なった。


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