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5-4 原子力関係機関における取組

(1) 国の取組

 原子力の利用に当たっては、その重要性や安全対策、原子力防災対策等について、様々な機会を利用して、国民全体及び原発立地地域の住民に対し、丁寧に説明することが重要です。
 資源エネルギー庁では、原子力を含めたエネルギーに関するシンポジウムや説明会等を2016年から累計300回以上実施するとともに、近時ではウェブサイトを通じた活動等の充実に努めています。例えば、エネルギーに関する話題を分かりやすく発信するスペシャルコンテンツをウェブサイトに掲載しています(図5-3)。同コンテンツでは、週に約2回、エネルギーに関する記事を更新しているほか、様々なテーマに関する解説記事に加え、インタビュー、基礎用語、Q&A、国際、歴史等、幅広い切り口でコンテンツを掲載しています [15]


図5-3 スペシャルコンテンツ

図5-3 スペシャルコンテンツ

(出典)資源エネルギー庁「スペシャルコンテンツ」[16]より作成


 加えて、資源エネルギー庁では、核燃料サイクルや、高レベル放射性廃棄物の最終処分を含む原子力政策等に関する広報・広聴活動を実施しています [17]。この活動では、立地地域はもちろん、電力消費地域や次世代層をはじめとした国民全体に対して、シンポジウムや説明会の開催等による丁寧な理解活動に取り組んでいます。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しては、2017年7月に科学的特性マップが公表されて以降、国民理解・地域理解を深めていくための取組として、資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO9 、以下「原環機構」という。)により、対話型全国説明会をはじめとする全国での対話活動が行われています [18] [19] [20]
 さらに、資源エネルギー庁は、地域の実情に応じて、様々な主体が構築する「地域共生プラットフォーム」(対話の場)の活動 を支援しています(図5-4)。同プラットフォームは、地域住民をはじめ、行政、電力事業者、科学者や地域の様々な主体が参加し、原子力やエネルギー政策に加えて、原子力防災等について、双方向のきめ細かな対話を継続的に実施することを想定しています [15]
 2019年度の「広報・調査等交付金」では、立地地域の住民の理解促進を図るため、地域共生プラットフォームの活用も含め、地方公共団体が行う原子力広報等の各種取組への支援を行っています [21]。なお、過年度に同交付金を活用して実施された広報事業等の概要と評価をまとめた報告書は、資源エネルギー庁のウェブサイトにて公開されています [22]


図5-4 地域共生のためのプラットフォーム

図5-4 地域共生のためのプラットフォーム

(出典)第19回総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会資料7資源エネルギー庁「自主的な安全性向上に係る政府の取組と今後の方向性について」(2019年) [15]

 原子力規制委員会では、2017年11月に行った5年間の活動に関する振り返りの議論の中で、立地地域の地方公共団体とのコミュニケーションの向上の必要性を確認し、これを踏まえ、委員による現地視察と地元関係者との意見交換を実施しています。具体的には、委員が分担して国内の原子力施設を視察するとともに、当該原子力施設に関する規制上の諸問題について、被規制者だけでなく希望する地元関係者を交えた意見交換を行う取組を継続的に行っています [23]。2019年4月に四国電力株式会社伊方発電所に関して、2020年2月に九州電力株式会社川内原子力発電所に関して、地元関係者と意見交換を行いました [24]

(2) 原子力関係事業者の取組

 各原子力関係事業者は、原子力発電所の周辺地域において地方公共団体や住民等とのコミュニケーションを行っています。例えば、原子力総合防災訓練に参加し、防災体制や関係機関における協力体制の実効性の確認を行うことや、発電所立地県内全自治体へ毎月訪問して原子力に係る情報提供や問合せ対応等を行っています。また、一般市民への説明においては、原子力発電所やその安全対策の取組についてより理解を深められるよう、投影装置、映像、ジオラマ、VRスコープを活用した説明等が実施されています [25]
 また、原子力発電所の立地地域や周辺地域だけでなく、広く国民全体やメディアに向けて、報道会見、プレスリリースや広報誌の発行等を通じた情報発信も行っています [26] [27]
 これらの原子力関係事業者による取組を継続するとともに、より一層強化する必要があります。2019年2月の総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会では、原子力の自主的な安全性向上における双方向コミュニケーションを通じた安全の確保の必要性や双方向のコミュニケーションの強化に向けた取組等について、議論が行われました [28]
  2019年9月、関西電力株式会社の役職員等が、福井県高浜町の元助役から多額の金品を受領していたことが明らかになりました。この問題を受けて、経済産業省は関西電力株式会社に対して、電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づく報告を求めました [29]。関西電力株式会社は、同年10月に同件に関する背景や根本原因の究明、再発防止策の提言を行う第三者委員会を設置し、2020年3月14日に委員会による調査報告書を公表し、併せて調査結果について経済産業省への報告を行いました [30] [31] [32] [33]。経済産業省では、報告の内容を精査し、同社役職員による多額の金品受領や取引先等への不適切な発注行為等の問題が認められたことから、同月16日に業務改善命令を発出しました。その主な内容は以下のとおりです [34]

〈関西電力株式会社に対する業務改善命令〉 10

  • 公益事業である電気事業の運営の健全性及び適切性を確保するため、以下の事項を含む問題事案の再発防止のための実効性ある具体的方策(以下「再発防止策」という。)を策定し、及び実施すること。

    • (1)今回の処分を踏まえた役職員の責任の所在の明確化
    • (2)健全かつ適切な業務運営に取り組むための法令等遵守体制の抜本的な強化並びに法令等遵守を重視する健全な組織風土の醸成
    • (3)工事の発注・契約に係る業務の適切性及び透明性を確保するための業務運営体制の確立
    • (4)上記を着実に実行し、定着を図るための新たな経営管理体制の構築

  • 1.の再発防止策を実施するに当たっては、当該再発防止策の実効性について、外部人材を活用した審査体制も含めて組織的に検証する体制を構築すること。また、当該再発防止策の実効性が不十分であると認められる場合においては、必要に応じて追加的な改善策を策定し、及び実施すること。
  • 上記1.及び2.に係る業務の改善計画を令和2年3月末までに提出するとともに、必要な取組について株主総会の開催等により速やかに決定し、及び実行し、その決定及び実行の状況について同年6月末までに報告を行うこと。その後も、経済産業省のフォローアップに誠実に対応すること。

(3) 東電福島第一原発の廃炉に関する取組

 東電福島第一原発の廃炉については、福島県や国民の理解を得ながら進めていく必要があります。そのため、正確な情報の発信やコミュニケーションの充実が図られており、事業者や資源エネルギー庁では様々な取組を行ってきています。例えば、廃炉・汚染水対策に関して、進捗状況を分かりやすく伝えるためのパンフレットや解説動画の作成に取り組んでいます(図5-5)。


図5-5 東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関する広報資料

図5-5 東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関する広報資料

(出典)資源エネルギー庁「廃炉・汚染水対策ポータルサイト」 [35]より作成


 原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、2016年より「福島第一廃炉国際フォーラム」を毎年実施し、廃炉の最新の進捗、技術的成果を国内外の専門家が広く共有するとともに、地元住民との双方向のコミュニケーションを実施しています [36]
 また、汚染水対策に関しては、風評被害等の社会的な観点も含めた多核種除去設備等(ALPS)で処理した水(以下「多核種除去設備等処理水」という。)の取扱いが課題になっています。これについて政府が開催した「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」が2020年2月に公表した報告書では、多核種除去設備等処理水の取扱いに関する技術的な観点からの提言に加え、風評被害対策の方向性についての提言がまとめられています [37]
 同報告書では、風評への影響を抑えるために、人々が安心できるような多核種除去設備等処理水の処分方法を検討し、処分開始時期、処分濃度等について関係者の意見も踏まえて決定することや、関係者をはじめ消費者の不安を払拭するために、周辺環境のモニタリングの強化と、測定結果の分かりやすく丁寧な情報発信を行うことが重要であるとされています。一方で、このような取組を行ったとしても、処分に際して風評被害が生じうることを想定し、これまでの取組事例を踏まえながら、情報を正確に伝えるためのリスクコミュニケーションの取組、風評被害防止・抑制・補てんのための経済対策の双方を拡充・強化すべきとされています。
 さらに、同報告書では、政府の方針決定及びその後における国民や関係者とのコミュニケーションに関して、以下の点が挙げられています。

  • 政府には、本報告書での提言に加えて、地元自治体や農林水産業者をはじめとした幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら、責任と決意をもって方針を決定することを期待する。その際には、透明性のあるプロセスで決定を行うべきである。
  • 政府の方針決定の中には、処分方法の決定のみならず、併せて講ずるべき風評被害対策についても、これまでの福島第一原発事故による風評被害対策の実績を踏まえ、拡充・強化する形で取りまとめられるべきである。
  • 方針の決定後も、国民理解の醸成に向けて、透明性のある情報発信や双方向のコミュニケーションに長期的に取り組むべきである。

 なお、廃炉に向けた取組については第6章6-1(2)「東電福島第一原発の状況と廃炉に向けた取組」に、福島の復興・再生に関するコミュニケーションの取組については第1章1-1(2)「福島の復興・再生に向けた取組」に詳細を記載しています。



  1. Nuclear Waste Management Organization of Japan
  2. 1.(2)から(4)の各事項は省略しています。

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