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5-4 原子力関係機関における取組

(1) 国の取組

 原子力の利用に当たっては、その重要性や安全対策、原子力防災対策などについて、様々な機会を利用して、国民全体及び立地地域の住民に対し、丁寧に説明することが重要です。 例えば、2018年5月及び2019年1~2月にかけて、新潟県、茨城県がそれぞれ開催した新規制基準適合性審査に関する説明会において、原子力規制庁が審査結果等について説明を行いました[16][17]
 立地地域とのコミュニケーション活動以外にも、資源エネルギー庁では、原子力を含めたエネルギーに関するシンポジウム・説明会等を2016年から累計300回以上実施するとともに、近時ではウェブサイトを通じた活動等の充実に努めています。例えば、ウェブサイトにエネルギーに関する話題を分かりやすく発信するスペシャルコンテンツを掲載しています(図 5-2)。同コンテンツでは、週に約2回、エネルギーに関する記事を更新しているほか、様々なテーマに関する解説記事に加え、インタビュー、基礎用語・Q&A、国際、歴史など、幅広い切り口でコンテンツを掲載しています。2018年11月末までに136本の記事を配信し、同年11月には月に約19万アクセスがありました[18]


     

図 5-2 スペシャルコンテンツ

(出典)資源エネルギー庁「スペシャルコンテンツ」9


 加えて、資源エネルギー庁では、核燃料サイクルや、高レベル放射性廃棄物の最終処分を含む原子力政策等に関する広報・広聴活動を実施しています[19]。この活動では、立地地域はもちろん、電力消費地域や次世代層をはじめとした国民全体に対して、シンポジウム・説明会の開催等による丁寧な理解活動に取り組んでいます。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しては、2017年7月に科学的特性マップが公表されて以降、国民理解・地域理解を深めていくための取組として、資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO10)により、対話型全国説明会をはじめとする全国での対話活動が行われています[20][21][22]
 さらに、資源エネルギー庁は、原子力発電施設等に関する地域住民の理解の促進を図るため、「広報・調査等交付金」によって原子力発電に係る知識の普及や、住民の生活に及ぼす影響に関する地方公共団体による調査等を支援しています[23]。同交付金を活用した事業概要及び評価報告書は、資源エネルギー庁のウェブサイトにて公開されています[24]
 資源エネルギー庁は、今後の対話や広報活動等のコミュニケーションの在り方について、地域の実情に応じて様々な主体が構築する「地域共生プラットフォーム」の活用等による地域住民の関心に即した対話型の広報(図 5-3)や、ITやスマートフォンなどの進歩・普及などの社会変化に対応した効果的な広報を実施していくことなどを検討しています[18]>。


図5-3 地域共生のためのプラットフォーム

(出典)第18回総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会資料3 資源エネルギー庁「原子力政策の動向について」(2018年)[18]


 原子力規制委員会では、2017年11月に行った5年間の活動に関する振り返りの議論の中で、立地地域の住民や地方公共団体とのコミュニケーションの向上の必要性を確認し、これを踏まえ、委員による現地視察と地元関係者との意見交換を実施しています。具体的には、委員が手分けして国内の原子力施設を視察するとともに、当該原子力施設に関する規制上の諸問題について、被規制者だけでなく、希望する地元関係者を交えた意見交換を行う取組を継続的に行っているところです[25]。2018年6月に高速増殖原型炉もんじゅに関して、同年10月に九州電力(株)川内原子力発電所に関して、地元関係者と意見交換を行いました[26]


(2) 原子力関係事業者の取組

 各原子力関係事業者は、原子力発電所の周辺地域において地方公共団体や住民等とのコミュニケーションを行っています。例えば、政府等が参加する原子力総合防災訓練に参加し、防災体制や関係機関における協力体制の実効性の確認を行うなど、発電所立地県内全自治体へ毎月訪問して原子力に係る情報提供や問合せ対応等を行っています。また、一般の方への説明においては、原子力発電所やその安全対策の取組についてより理解を深められるよう投影装置・映像・ジオラマを活用したり、VRスコープを活用した説明等が実施されています[27]
 また、原子力発電所の立地地域や周辺地域だけでなく、広く国民全体やメディアに向けて、報道会見、プレスリリースや広報誌の発行等を通じた情報発信も行っています[28][29]
 例えば、原子力安全推進協会は、原子力事業者及び電気事業連合会の協力の下で原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」11を運営しています。ニューシアでは、最初の原子力発電所が稼働した1966年から現在の情報まで、原子力発電所や原子燃料サイクル施設の運転に関する情報を広く共有しています。
 これらの原子力関係事業者による取組を継続するとともに、より一層強化する必要があります。2019年2月の総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会では、原子力の自主的な安全性向上における双方向コミュニケーションを通じた安全の確保の必要性や双方向のコミュニケーションの強化に向けた取組等について、議論がなされました[30]


(3) 東電福島第一原発の廃炉に関する取組

 東電福島第一原発の廃炉については、福島県や国民の理解を得ながら進めていく必要があり、正確な情報の発信やコミュニケーションの充実が重要です。そのため、事業者や資源エネルギー庁では、様々な取組を行ってきています。例えば、廃炉・汚染水対策に関して、その進捗状況を分かりやすく伝えるためのパンフレットや解説動画の作成に取り組んでいます(図 5-4)。

図 5-4 東電福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関する広報資料

(出典)資源エネルギー庁「廃炉・汚染水対策ポータルサイト」12


 汚染水対策については、政府が設置した「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」が、多核種除去設備等処理水の処分方法や処分した際の懸念について、福島県民、国民の意見を伺う場として「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会」を2018年8月に開催しました。同説明・公聴会は、富岡町(福島県)、郡山市(福島県)、東京の3会場で開催され、その後の多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会では、説明・公聴会で頂いた論点ついて議論しています[31][32]
 また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が2018年8月に開催した第3回福島第一廃炉国際フォーラムの1日目では、「地元の皆さんと考える1F廃炉」をテーマに、地元住民を対象として、「知る」、「話す」、「問う」の3つのセッションが実施されました。「知る」セッションでは、東電福島第一原発の今と過去のフォーラムから見えてきた論点が紹介され、その内容を受けて「話す」セッションでは廃炉に対する思い等について全員参加型の意見交換会が実施されました。また、「問う」セッションでは、住民に対する事前調査や「話す」セッションで集められた意見に基づき、地元登壇者が、資源エネルギー庁、東京電力及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構の東電福島第一原発廃炉関係者との質疑応答を行い、双方向のコミュニケーションが実施されました[33][34]
 東京電力は、2016年9月、東電福島第一原発における廃炉等の取組を安全かつ着実に進めることを目的として、福島県及び東電福島第一原発周辺の11市町村と「福島第一原子力発電所の廃炉等の実施に係る周辺地域の安全確保に関する協定書」を新たに締結しました。同協定では、廃炉等に向けた取組について、県、町、議会、県民に対して情報公開を行い、透明性を確保することが規定されています。そのほか、国内外のマスメディア・有識者に東電福島第一原発の視察等の機会を設ける、廃炉作業の進捗や労働環境の改善などについて分かりやすく解説するウェブコンテンツを公開するなど、地域や国民、海外への情報発信やコミュニケーションを実施しています[35]
 なお、福島の復興・再生に関するコミュニケーションの取組については、第1章1-1(2)「福島の復興・再生に向けた取組」に記載しています。



  1. http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/
  2. Nuclear Waste Management Organization of Japan
  3. http://www.nucia.jp/
  4. http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/

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