我が国における原子力の研究、開発及び利用は、これを平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、民主的な運営の下に自主的に行い、成果を公開し、進んで国際協力に資するという方針の下、将来におけるエネルギー源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与するべく行われています。そこで、原子力をめぐる国内外の情勢と原子力の研究、開発及び利用の取組を記録し、さらに、いま何が主要課題かを示すことは、国民の皆様への説明責任を果たしていくために必須のことです。こうした考えの下、平成20 年版原子力白書を刊行しました。
平成20 年は、前年の地震の影響で柏崎刈羽原子力発電所が運転停止し、その経験・知見を踏まえた耐震安全性の見直し作業が全国で行われていることなどから、原子力発電設備の稼働率が低い水準に留まり、エネルギーの安定供給や地球温暖化対策に有用な原子力発電に対する国民の期待に十分に応えたとはいい難い一年でした。一方、国際社会においては、G8北海道洞爺湖サミットをはじめとする様々な国際的会合において原子力発電がエネルギー安全保障対策や地球温暖化対策に有効との認識が表明され、また、実際に原子力発電所の設置に向けて取り組む国も増加しました。他方、米国における金融危機に端を発して経済情勢が急激かつ大幅に悪化し、原油価格も歴史的な高さに達した後に急落し、世界は真に持続可能な発展を目指す調整期に入ったと思われます。
今回の原子力白書は、第1章において、こうしたことを年頭に国際社会での原子力への期待の高まりと、これに対する我が国の原子力の研究、開発及び利用の現状を概観するとともに、今後の課題についてまとめています。第2章から第6章においては、原子力の研究、開発及び利用に関する国と民間の活動の最近の動向を、「原子力の研究、開発及び利用に関する基盤的活動の強化」、「原子力利用の着実な推進」、「原子力研究開発の推進」、「国際的取組の推進」、「原子力の研究、開発及び利用に関する評価の充実」の各分野について説明しています。なお、「原子力安全白書」に記載されるべき安全規制に係る取組については詳述していません。
高度技術社会の持続可能な発展には、これに寄与できる技術システムの実現目標とそれを達成するための取組を社会と対話しつつ明確に定めて推進し、遭遇する困難を克服し、それを通じて得た知見を技術システムの設計や運営に適切に反映していくことが大切です。原子力委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項の企画、審議、決定を通じてこのことに貢献していきます。この原子力白書が、こうした活動に対する皆様のご理解を深めるための一助となることを期待しています。
平成21年3月
原子力委員会委員長 近藤駿介
|