2.原子力委員会の決定等

(2)主な原子力委員会決定・委員長談話

高速増殖炉懇談会の設置について

平成9年1月31日
原子力委員会決定
1.目的
 原子力政策円卓会議における議論等を踏まえ、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について幅広い審議を行い、国民各界各層の意見を政策に的確に反映させるため、高速増殖炉懇談会(以下、「懇談会」という。)を設置する。

2.審議事項
(1)「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について
(2)その他

3.構成員
別紙のとおりとする。

4.その他
(1)懇談会は、必要に応じ、懇談会構成員以外の者からの意見も聞くものとする。
(2)その他、懇談会に関し必要な事項は、座長が懇談会に諮って定める。


(別紙) 高速増殖炉懇談会構成員

秋元 勇巳 三菱マテリアル(株)取締役社長
植草  益 東京大学経済学部教授
内山 洋司 (財)電力中央研究所経済社会研究所上席研究員
大宅 映子 ジャーナリスト
岡本 行夫 外交評論家
木村尚三郎 東京大学名誉教授
河野 光雄 内外情報研究会会長
小林  巌 フリージャーナリスト
近藤 駿介 東京大学工学部教授
住田 裕子 弁護士
鷲見 禎彦 関西電力(株)取締役副社長
竹内佐和子 長銀総合研究所主任研究員
中野不二男 ノンフィクション作家
西澤 潤一 東北大学名誉教授(元総長)
松浦祥次郎 日本原子力研究所副理事長
吉岡  斉 九州大学大学院比較社会文化研究課教授


当面の核燃料サイクルの具体的な施策について

平成9年1月31日
原子力委員会決定

 当委員会は、昨年10月に決定した「今後の原子力政策の展開にあたって」に基づき、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会の検討結果も勘案し、当面の核燃料サイクルの具体的な施策について審議を行った。
 その結果、エネルギー・セキュリティーの確保と地球環境問題への対応の観点から、原子力発電は今後とも有力なエネルギー源であり、安全の確保と平和利用の堅持の大前提の下に、着実に開発利用を進めることが引き続き必要であること、また、我が国のおかれている資源的な制約や環境保護の観点から、原子力発電を長期に安定的に進めていく上で、核燃料サイクルを円滑に展開していくことが不可欠であることを改めて確認し、以下の通り当委員会の考え方を示す。
 なお、当委員会は、今後とも核燃料サイクルの着実な展開に向けて、その進捗状況と状況の変化を的確に把握し、必要に応じ適切な場において評価・検討を行い、これらの結果については、平成6年に策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の見直しをも視野に入れ、適切に政策に反映していく。

(1)軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)
 再処理によって回収されるプルトニウムは、ウラン資源の節約と有効利用の観点から核燃料として利用するが、その際、国際的な協調の下、計画の透明性を確保し、余剰のプルトニウムを持たないとの基本的な方針を堅持する。
 とりわけ、プルサーマルは、安全性、経済性の観点及び海外や「ふげん」での利用実績から、現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であり、原子力発電所を有する全ての電気事業者が共通の課題として取り組み、プルトニウムの回収見通しから、2010年頃までには全電気事業者が実施する必要がある。
 具体的には、まず、海外再処理で回収されたプルトニウムを用いて2000年までには3〜4基程度で開始し、その後、国内外でのプルトニウムの回収状況や個々の電気事業者の準備状況等に応じて2010年頃までに十数基程度にまで拡大することが適当である。
 このため、国における基本的な方針の下、まず、電気事業者は全事業者に係わるプルサーマル計画を速やかに公表することが必要である。これを踏まえ、早急に、国及び電気事業者は、所要の準備等を促進するとともに、情報の公開や対話の一層の促進等地元をはじめとした更なる国民的な合意形成に向け、特段の努力を傾注していくことが重要である。
 さらに国はプルサーマルの具体化等を勘案しつつ、東海再処理工場等を活用して、使用済混合酸化物(MOX)燃料再処理技術の開発を推進する。

(2)使用済燃料の管理
 我が国は、発生する全ての使用済燃料を再処理することを基本としており、この観点から、六ヶ所再処理工場の建設を着実に推進する必要がある。
 この再処理を行うとの基本の上に立って、使用済燃料は再処理されるまでの間、エネルギー資源として適切に貯蔵することが重要である。このため、いくつかの原子力発電所においては、当面の対策として、その貯蔵能力の増強を地元の理解を得つつ早急に実施する必要がある。
 さらに、今後の使用済燃料の貯蔵量の増加を見通して、長期的な使用済燃料の管理に係わる具体的対応を図っていくことが必要であり、従来からの発電所敷地内での貯蔵に加えて、2010年頃を目途に発電所敷地外における貯蔵も可能となるような所要の環境整備について早期に結論を得るべく、関係省庁と事業者からなる具体的な検討の場を早急に設ける必要がある。

(3)バックエンド対策
 高レベル放射性廃棄物の処分については、原子力バックエンド対策専門部会の報告書が近くまとまる予定であり、その結論をも踏まえて研究開発を推進するとともに、高レベル放射性廃棄物処分懇談会での社会的・経済的側面を含めた幅広い議論を通じて、処分の円滑な実施へ向けた処分対策の全体像をできる限り速やかに明らかにするべく、一層の努力を傾注する。
 また、原子力施設の廃止措置に関して速やかに所要の制度整備を進めることが重要であり、発生する放射性廃棄物の処分方策について、原子力バックエンド対策専門部会において検討を開始する。

(4)高速増殖炉の開発
 長期的観点から実施している高速増殖炉の開発については、別に定めるとおり、高速増殖炉懇談会を設置し、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について、幅広く検討を行う。


IAEA保障措置の強化・効率化方策にかかるモデル議定書の採択について

平成9年5月20日
原子力委員会委員長談話

  1.  今般、国際原子力機関(IAEA)の特別理事会において、IAEA保障措置の強化・効率化方策、いわゆる「93+2計画」に係るモデル議定書が採択された。この「93+2計画」は、イラクの核開発計画の発覚に端を発し、未申告核物質、未申告活動に対するIAEAの探知能力の向上を目指し、各国参加の下、1993年より検討が開始されたものであり、我が国も積極的に対応してきたところである。
  2.  各国とも、本計画は国際的な核不拡散体制の強化を図るうえで重要なものと認識し、精力的に検討が行われた。今回、特別理事会において、圧倒的多数の国が、保障措置体制の一層の強化に向けて、このモデル議定書の重要性を理解し、支持を表明したことは、国際的な核不拡散体制の強化という点で極めて重要な前進であると評価したい。
  3.  核不拡散条約を誠実に遵守し、かつ、原子力の平和利用に徹している我が国は、従来より保障措置の厳格な実施に努めてきたところであるが、これを契機として原子力活動の透明性を一層向上し、さらには核不拡散の面での信頼性を高める努力をすべきであることは当然である。今後、我が国としては、本計画の円滑かつ効果的な実施と保障措置の一層の効率化に十分に留意するとともに、国内の関係事業者等の理解が得られるよう最大限の努力を払うべきである。
  4.  国際的な核不拡散の強化の観点からは、本計画の諸方策は、関係するすべての国において実施されることが重要である。このため、我が国は、従来より、核兵器国等が本計画の目的達成のために必要な方策を積極的に受け入れることが重要である旨強く主張してきたところである。この度、一定の範囲ながら核兵器国からそれぞれ必要と考える方策について受入が表明されたことは前進と考えるが、今後とも、核不拡散体制の強化の観点から本計画がより実効性のあるものとなるよう、核兵器国をはじめとする関係主要国はもとより、IAEAに対しても、引き続き働きかけていくべきである。


核燃料サイクルの推進について

平成9年6月20日
原子力委員会委員長談話

  1.  一昨年12月の「もんじゅ」のナトリウム漏洩及び本年3月の東海再処理施設アスファルト固化処理施設の火災爆発という動燃事業団の二度にわたる事故は、原子力に対する国民の不安、不信を惹起し、今後の原子力開発利用、特に核燃料サイクルの円滑な展開に少なからぬ影響を及ぼしている。
  2.  他方で、エネルギー資源の大宗を輸入に依存する我が国のエネルギー供給構造の脆弱さ、地球環境問題への対応の必要性等を踏まえれば、我が国にとって原子力発電を今後とも安定的に進めていく上で、核燃料サイクルの重要性はいささかも変わるものではない。
  3.  従って、本年2月4日の閣議了解「当面の核燃料サイクルの推進について」に示された方針に則り、政府は、六ヶ所再処理工場計画の着実な進展やプルトニウムの軽水炉利用(プルサーマル)の実施、使用済燃料の貯蔵・管理対策等諸般の施策を図っていくことが重要である。


委員長談話

平成9年8月1日
原子力委員会

 本日、当委員会は、科学技術庁から動燃改革検討委員会の検討結果について報告を受けた。
 当委員会は、これまでも、科学技術庁から動燃改革検討委員会の検討状況の報告を受けなから原子力に対する国民の信頼の回復や原子力政策への影響の観点から審議を重ねてきた。また、その過程では、核燃料サイクルを巡る諸情勢を踏まえ、改めて市の重要性を確認したところである。

 核燃料サイクルの確立に向けた研究開発は、真に国民の負託と信頼に応え、「国民とともにある原子力」を具現化し得る組織体において着実に行われていかなければならない。かかる観点から、動燃改革検討委員会が動燃の経営、安全管理体制、事業等の抜本的見直しを基に提案している核燃料サイクル関連の中核的研究機関のあるべき姿と動燃改革の実現の方向は十分理解できるものであり、これに沿って動燃改革の具体化が図られることが、核燃料サイクルの着実な推進と国民の原子力に対する信頼の回復にとって必要と考えられる。
 当委員会としては、動燃改革が適切かつ確実に行われていくよう引き続き審議を行っていくが、その際、動燃改革の状況について適宜科学技術庁から報告を求めることとする。

 当委員会は、一昨年12月の「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故を契機とした国民の原子力に対する不安、不信の高まり等を踏まえ、原子力政策円卓会議の開催、同会議からの要請を踏まえた情報公開の促進等、信頼の回復のために具体的な努力を積み重ねてきたが、今般類似の事故を再発を防ぎ得ず、動燃の在り方が根本的に問われる状況を招くに至った。また、動燃改革検討委員会の検討結果では、当委員会としての本件に係る責任、進法人の運営に果たす責務等について指摘されている。
 当委員会としては、このような状況等を真摯に受け止め、原子力政策の策定という自らに課せられた重責を改めて痛感し、進法人の運営に係る当委員会の責務を的確に果たしていくとともに、今後の原子力開発利用が国民の理解と信頼の下で着実に展開されるよう、当委員会として取るべき措置を順次明らかにしていくこととする。


今後の高速増殖炉開発の在り方について
平成9年12月5日
原子力委員会決定

  1.  平成7年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故を機に発足した原子力政策円卓会議での提言を受けて、本年1月末、当委員会は「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について幅広い審議を行うため、「高速増殖炉懇談会」(以下、「懇談会」と言う。)を設置した。懇談会はこれまで12回の会合を行い、当委員会は今般その報告を受けた。懇談会は、原子力の専門家のみならず、我が国各界各層の有識者で構成され、審議の過程では内外の様々なご意見の方々と直接意見交換を行った。さらに報告書とりまとめにあたっては、国民からの意見募集に加え、「ご意見を聞く会」を開催し、寄せられた意見を報告書に反映している。当委員会としては、懇談会報告書は、今後の高速増殖炉開発の在り方について国民各界各層の意見が適切に集約・反映されたものであると受け止めるものである。なお、懇談会報告書中に賛否両論の形で記された諸意見についても、当委員会としては、高速増殖炉研究開発に対する貴重な意見として真摯にこれを受け止めるものである。

  2.  我が国は、これまで原子力開発利用長期計画で、高速増殖炉を将来的に核燃料リサイクル体系の中核と位置付け、相当期間にわたる軽水炉との併用期間を経て将来の原子力発電の主流にしていくべきとし、動力炉・核燃料開発事業団において原型炉「もんじゅ」の研究開発を、また、実証炉については、2000年代初頭着工を目標に電気事業者が建設の準備を進め、2030年頃までには、実用化が可能となるよう高速増殖炉の技術体系の確立を目指すこととしてきた。
     懇談会報告書では、高速増殖炉を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、その実用化の可能性を追求するため、安全確保、地元の理解などを前提に研究開発を進めることが妥当としており、その際には、適切な評価と見直しを行うなど、柔軟な計画の下に進めることが必要であるとしている。また、原型炉「もんじゅ」についてはこの研究開発の場の一つとして位置付け、実証炉については、「もんじゅ」の成果及び民間の進めている研究開発の成果などを評価した上で具体的計画を決めることとし、さらに、高速増殖炉の実用化にあたっては、実用化時期を含めた開発計画について、柔軟に対応することとしている。

  3.  当委員会としては、長期エネルギー源確保の必要性、安全確保及び地元の理解の重要性、財政事情の逼迫、経済性の追求重視といった内外の諸情勢も踏まえ、また、今後の原子力研究開発は資源論的観点に加え環境論的観点も重要であるとの当委員会のこれまでの指摘に鑑みても、懇談会報告書の結論は妥当と判断し、今後は同報告書を尊重して高速増殖炉開発を進めることとする。


動力炉・核燃料開発事業団の改革の方針について

平成10年2月6日
原子力委員会決定

 当委員会は、動力炉・核燃料開発事業団(以下、「動燃」という。)の改革問題に関し、平成9年8月1日に核燃料サイクル関連の中核機関のあるべき姿と動燃改革の実現の方向に関する委員長談話を発表し、その後、科学技術庁から動燃改革の作業状況を聴取しながら、動燃改革が適切かつ確実に行われるよう審議を行ってきた。また、動燃改革に伴う業務の整理縮小について関係機関から意見聴取を行うとともに、高速増殖炉懇談会報告書等を踏まえ、慎重に審議した結果、以下のとおりの結論を得た。

1 動燃の改革の基本的な方針並びに原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法の改正について

 動燃を改組して設立される核燃料サイクル開発機構(仮称)(以下、「機構」という。)は、将来の核燃料サイクル技術体系の柱となる高速増殖炉(これに関連する核燃料サイクル業務を含む)及び高レベル放射性廃棄物の処理処分の開発及びこれに必要な研究を実施する法人として再出発することとしているが、核燃料サイクルを技術的に確立する上で極めて重要な役割を果たしていくことが期待される。また、東海再処理工場については、六ヶ所再処理工場が本格的に操業を実施するまでの間は、電気事業者方の契約役務、「ふげん」等からの使用済燃料の再処理等を実施し、同工場が安定的に操業を実施する段階になれば、高速増殖炉燃料再処理等の開発及びこれに必要な研究を実施していくことが望まれる。
 動燃がこれまで行ってきた海外ウラン探鉱、ウラン濃縮開発、新型転換炉開発の業務については、次項以降に示すとおり、民間で事業化がなされている或いは経済性の観点から事業化が断念されているなど機構において業務を遂行する必要性が乏しくなったことから、一定の過渡期間内に機構において、関係機関と適切な調整を図りつつ成果の集大成を図った上で廃止する必要がある。
 一連の事故、不祥事を起こした動燃の経営体制については、国の政策や、社会との非難が未然に防止できる体制が構築されたものと考える。また、機構の業務運営については、安全確保を最優先に行うこととし、地元重視を基本とし、国民に対する適切な情報公開を行うなど社会に開かれた体制の下で進めることが極めて重要であると考える。

 以上の考え方に沿って、動燃改革を着実に行い、核燃料サイクルを円滑に推進することを通じて、国民の原子力に対する信頼回復を図っていくことが重要である。
 したがって、当委員会としては、動燃の事業、経営体制等を抜本的に見直し、我が国の原子力開発利用の計画的推進に寄与することを目的とする新法人を設立するため、原子力基本法及び動力炉・核燃料事業団法の改正を行うことが必要と考える。
 なお、当委員会としては、機構が主体性をもって中長期にわたり計画的かつ効率的に業務を運営できるように、機構に対し、明確な使命を与えるための基本方針の策定に主体的に取り組むなど、機構の運営に係る当委員会の責務を明確に果たしていくこととする。

2 海外ウラン探鉱について

(1) ウラン資源については、将来の需給動向を踏まえつつ、我が国の原子力開発利用の自主性、安定性を確保するという観点から、その安定確保を図っていかなければならない。また、鉱山開発のリードタイムの長期化、ウラン産業の寡占化の進行等にも留意することが必要である。  しかしながら、天然ウラン市場は、1970年代半ばから80年代初頭の生産過剰等の理由により、現在に至るまで、比較的低価格の状態で安定して推移しており、さらに、カナダのマッカーサーリバー等の鉱量が大きい優良鉱区の開発計画が進行中であること、また、米国及びロシアの核兵器の解体に伴い発生する高濃縮ウランの低濃縮化による利用計画があることから、少なくも今後十数年間は、世界のウラン価格は安定的な状態にあると推定されている。これらに加え、長期購入契約等により今後10年近くの必要量を確保している電気事業者は、天然ウラン供給国が政治的に安定した国であり、かつ、友好関係にあることを踏まえ、今後とも、適切な価格により天然ウランの調達は可能との認識を表明している。

(2) 動燃の海外探鉱活動は、当初、先行する欧米の機関に比べ相当遅れた中、印鑑活動を補完することを目的に先駆的調査活動等を開始し、昭和62年の長期計画において、時宜にかなった開発プロジェクトの推進の役割が追加され、最近の10年間に世界で発見されたウラン量のうち13%の鉱量を発見し、現在、約4万トンUの権益を確保している。なお、これまでに、一部の成果については民間に引き継がれている。また、探鉱活動を通じて、動燃は、先端的な探鉱活動に必要な鉱床評価技術、探査技術等を開始し、優れた技術力を有している。  動燃のウラン探鉱活動については、1970年代の天然ウランの逼迫の可能性に対する、言わば燃料確保の保険としての機能を果たしており、その意義はあったものと評価する。

(3) ウラン資源がほとんど存在しない我が国において、原子力発電を安定的に めるためには、予期し得ない核燃料の供給不足、途絶と言う状況に対処し得るよう備えることが重要であり、天然ウランの安定確保とともに、プルトニウム、回収ウラン等の利用によるウラン資源の有効利用のため、核燃料サイクルの確立を政策の基本としている。  このため、国は必要な研究開発等を行い、民間においては、それらを活用しつつ事業化が進められている。既に、ウラン濃縮、再処理等については、一定規模の事業が展開されている。

(4) 海外ウラン探鉱については、天然ウラン市場状況及び今後の見通し、核燃料関連事業の進展等を踏まえるとともに、平成7年2月閣議決定「特殊法人の整理合理化について」も踏まえ、他のエネルギー資源・鉱物資源同様、国による必要な助成の下、民間活動に委ねることとし、動燃の探鉱活動は、適切な過渡期間を置いて廃止することが適当である。

(5) 一方、動燃の探鉱技術、人材、及び権益の取扱いについては、天然ウランの安定確保の観点も踏まえ、国、動燃及び民間の関係者間で早急に検討を行うこととし、当委員会は、その結果について報告を受けることとする。

3 ウラン濃縮技術開発について

(1) 動燃がパイロットプラント及び原型プラントの建設、運転等を通じて開発した遠心分離法濃縮技術は、六ヶ所ウラン濃縮工場に導入され、国内民間濃縮事業の確立に活かされており、適切な過渡期間を置いて動燃のウラン濃縮技術開発の業務を廃止することは適当である。その際、現在動燃と民間の協力により推進されている経済性の向上に不可欠な高度化された新素材高性能遠心機の開発については、六ヶ所ウラン濃縮工場への導入計画に支障をきたさぬよう開発を継続、完了させるとともに、原型プラント運転及びウラン濃縮関連技術開発についても、技術成果の取りまとめ等の観点から、適切な期間継続し、完了させる必要がある。

(2) ウラン濃縮事業については、世界的な濃縮役務供給能力の過剰な状況が今後とも継続するものと推定されており、従来以上に経済性の向上に積極的に取り組むことが極めて重要となっている。今後、ウラン濃縮機器の開発・製造体制を含めた我が国のウラン濃縮事業全体として、国際的に競争力のある役務の提供が可能となるよう、経済性の向上を着実に実現するため、遠心機の性能向上に係る技術開発等に一段と努力を傾注し事業の的確な展開を図ることを期待する。その際、核不拡散に配慮しながら、動燃に蓄積されてきたウラン濃縮技術及び人材の適切かつ円滑な移転が重要と考える。

4 新型転換炉の研究開発

(1) 新型転換炉については、平成7年8月に当委員会決定において、実証炉の建設計画を中止するとともに、新型転換炉関連の研究開発については、核燃料サイクルの進展に資する研究開発の一環として進めることとし、原型炉「ふげん」については、プルトニウム利用技術開発施設、国際的共同研究施設等として利用していくとの方向性が示された。  その後、動燃改革の一環として新型転換炉研究開発については、その役割が終了しつつあることから、適切な過渡期間をおいて撤退することが検討されることになった。

(2) 科学技術庁及び動燃においては、今後の「ふげん」についての具体的検討が進められ、「ふげん」の運転期間を5年としているが、その間の活用方策については、過去20年間の技術開発成果を含め、現在実施中の高燃焼度MOX燃料の安全評価等のプルトニウム利用技術や亜鉛を注入し放射能蓄積を抑制する技術などのプラント管理技術について、研究開発成果の集大成を行うとともに、海外のニーズに応じ、圧力管型炉の運転管理技術の取得の場として活用していくことが適当である。  また、運転停止後の廃止措置を円滑に行うため、「ふげん」の原子炉システムの固有の廃止措置技術の開発及びそれに必要な研究を実施する。なお、そこで得られた成果については、ニーズに応じ、効果的に技術移転を行う。


インドによる核実験の実施について

平成10年5月12日
原子力委員会委員長談話

  1.  昨日、インドが地下核実験を実施した旨発表があったが、冷戦構造の崩壊後、国際社会が核不拡散、核実験禁止に努力する中、今回インドが核実験を行ったことは、このような国際的な動きや核兵器の究極的廃絶を希求する我が国国民の願いに逆行するものであり、極めて遺憾である。

  2.  当委員会は、原子力の平和利用を円滑に進めるためには、核不拡散体制の維持・強化への国際的な取組みを高く評価するとともにこれら取組みに積極的に貢献していくことが重要であると考えている。

  3.  この考え方に基づき、平成7年5月12日には、「核兵器の不拡散に関する条約」が無期限延長された際、本条約は、原子力平和利用と核不拡散を両立させる枢要な国際的枠組みであるとの基本認識に立って、本延長を歓迎する原子力委員長談話を発表している。また、平成9年4月22日には、「包括的核実験禁止条約」の批准に際し必要となった「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正を適当とする原子力委員会決定を行った際にも、本条約が核兵器のない世界の実現に向けた歴史的な一歩となるものと評価したところである。

  4.  今回のインドの地下核実験の実施は、国際社会が歓迎した「核兵器の不拡散に関する条約」及び「包括的核実験禁止条約」の趣旨に反するものであり、当委員会としては、インドがこのような実験を二度と行わず、早急に核開発を停止することを強く求めるものであり、政府が本件に関し適切な方策を講じることを期待する。


パキスタンによる核実験の実施について(声明)

平成10年5月29日
原子力委員会

  1.  28日、パキスタン首相より同国が地下核実験を実施した旨発表があったが、先般のインドの核実験に対して国際社会が強く非難し、パキスタンに対しては我が国をはじめ各国が予め最大限の自制の要請を行ったにもかかわらず、パキスタンが核実験を実施したことは、核兵器の究極的廃絶を希求する我が国国民の願いに逆行するものであり、極めて遺憾である。

  2.  当委員会としては、「核兵器の不拡散に関する条約」の無期限延長や「包括的核実験禁止条約」の批准に伴う「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正の際、原子力の平和利用を円滑に進めるためには核不拡散体制の維持・強化が不可欠であるとの基本的認識を示してきたところである。

  3.  今般、パキスタンがインドに続いて核実験を実施したことは、当委員会が先般のインドの核実験に対して表明したのと同様、「核兵器の不拡散に関する条約」及び「包括的核実験禁止条約」の趣旨に反するものであり、核不拡散体制の維持・強化にとって重大な問題と受け止めている。当委員会としては、パキスタンに対して核実験及び核兵器開発の即時中止を強く求めるとともに、核兵器のない世界に向け、核不拡散体制の維持・強化のための取り組みを含む適切な措置が講じられるよう政府が最大限努力することを要請する。


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