第2章 国内外の原子力開発利用の状況
9.バックエンド対策

(2)原子力施設の廃止措置対策

 原子力施設の廃止措置は、原子力施設設置者の責任の下、安全確保を大前提に地域社会と連携を図りつつ実施することが重要です。また、商業用原子力発電所の廃止措置が具体化しつつあることから、これが円滑に実施し得る環境を早期に整備しておくことが必要です。

①原子力施設の廃止措置
 国内外では、60基程度の原子炉施設が廃止され、うち20基近くについて解体撤去工事が実施されている。このうち、米国のシッピングポート2、独国のニーダーアイヒバッハ、我が国の動力試験炉(JPDR)においては既に解体撤去が終了し、跡地の整地や敷地の解放が行われている。
 このような状況の中、日本原子力発電(株)は、1998年3月31日、東海発電所の営業運転を主として経済的な理由から停止した。具体的な廃止措置のスケジュール等については、現在、日本原子力発電(株)において検討が行われているが、今後3年半程度をかけて燃料を取り出し、その後安全貯蔵した後、解体撤去することとしている。
 原子力施設の廃止措置の基本方針としては、原子力施設設置者の責任の下、安全確保を大前提として、地域社会との連携を図りつつ進めることが重要であり、特に、商業用発電炉の廃止措置については、原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし、解体撤去後の敷地利用については、地域社会との協調を図りつつ、原子力発電炉用地として、引き続き有効に利用することとしている。
 廃止措置に係る技術開発については、日本原子力研究所においてJPDR(電気出力:約3万KW相当)の解体実地試験を1986年度から実施し、1996年3月には全ての地上構造物が撤去され、試験が終了した。これにより、解体前に各部分の放射性物質の濃度を測定・評価する技術、解体作業従事者の被ばくを防ぐ遠隔ロボットによる解体技術、安全に解体作業を行う最適な手順を評価するシステムの開発、実証などの大きな成果が得られており、今後の商業用発電炉の解体への活用が期待されている。
 このように、原子力施設の廃止措置は、既存技術により対応が可能であるが、除染技術、測定・評価技術、解体技術、解体システムエンジニアリング技術及び安全技術に関する技術の高度化等を進めることにより、一層合理的な廃止措置を実施することが可能であり、日本原子力研究所及び(財)原子力施設デコミッショニング研究協会、(財)原子力発電技術機構等において研究開発が継続されている。
 一方、再処理施設、燃料加工施設等の原子炉以外の原子力施設の廃止措置に際しては、放射化についてはほとんど考慮する必要がないが、TRU核種及び核分裂生成物による汚染に対応するため、原子炉の廃止措置とは異なった観点からの技術開発が必要である。このため、1990年度から日本原子力研究所の再処理試験施設(JRTF)をモデルとして除染技術や遠隔操作による大型槽類の解体技術等の再処理施設の解体技術開発が進められるとともに、解体実地試験を実施し、解体技術の実証を開始した。また、動力炉・核燃料開発事業団においても施設の更新、解体等のための技術開発が行われている。
 また、廃止措置に係る国際協力については、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の「原子力施設デコミッショニングプロジェクトに関する科学技術情報交換協力計画」に参加しており、日本原子力研究所を中心として廃止措置に関する情報交換を行っている。


JPDR:Japan Power Demonstration Reactor
JRTF:JAERI's Reprocessing Test Facility

(a)解体撤去前

(b)解体撤去後

図2-9-13 JPDR解体跡地

②廃止措置により発生する廃棄物
 原子力施設の廃止措置により発生する廃棄物については、原子力施設設置者に、その処理処分を適切かつ確実に行う責任がある。この廃棄物の大部分は、放射性廃棄物として取り扱う必要のない廃棄物であるが、発生する放射性廃棄物は、その対象施設により異なるものの、基本的には当該施設の運転に伴って発生する放射性廃棄物と同質である。このため、各々の処理処分方策に従って対処できると考えられるが、廃止措置に際しては、廃棄物に含まれる放射性物質の濃度が比較的高いものから低いものまで幅広く分布していること、比較的短期間に大量に発生すること等の特徴を考慮した安全かつ合理的な処理処分方策の検討を進めていくことが重要である。
 廃止措置の具体化が進んでいる原子炉施設の廃止措置に伴う放射性廃棄物については、放射性物質の濃度が比較的低いもの、及び、放射性物質の濃度が極めて低いものについては、概ね制度整備されている。しかしながら、炉内構造物のような現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物の処分方策や、放射性物質として、その特殊性を考慮する必要のないレベル(クリアランスレベル)の設定については、早ければ2001年にも予定される商業用発電炉の廃止措置の手続きが開始されるまでに、安全に対する十分な配慮を行いつつ、制度整備を進めることが重要である。
 このため、炉内構造物のような現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物については、前述したように原子力委員会の原子力バックエンド対策専門部会に低レベル放射性廃棄物(現行の政令濃度上限値を超えるもの)分科会を設置して、その処分方策を検討中である。また、クリアランスレベルについては、原子力安全委員会の放射性廃棄物安全基準専門部会において審議を進めているところである。
 廃棄物の減量、資源の有効利用の観点から、廃棄物を再利用することも重要であり、日本原子力研究所及び(財)原子力施設デコミッショニング研究協会では、金属廃棄物の再利用に関する技術開発が行われている。


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