第2章 国内外の原子力開発利用の状況
8.核燃料サイクルの展開

(1)使用済燃料の再処理

 我が国の使用済燃料の再処理は、これまで、動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場、英仏への再処理委託により実施してきましたが、国内での商業用再処理に向けて、日本原燃(株)が青森県六ケ所村に再処理工場を建設しています。また、高速増殖炉使用済燃料の再処理の研究施設を動力炉・核燃料開発事業団が建設している他、日本原子力研究所が臨界安全性に関する研究を実施しています。

 我が国は、使用済燃料の再処理について、これまで、動力炉・核燃料開発事業団東海再処理工場にて行うほか、英国核燃料会社(BNFL)及び仏国核燃料会社(COGEMA)への再処理委託契約により実施してきた。
 我が国初の再処理工場である動力炉・核燃料開発事業団東海再処理工場での使用済燃料の累計再処理量は、試験運転期間を含め1977年9月から1998年3月末までに、約936トンUとなっている。
 また、日本原燃(株)は、現在、青森県六ケ所村に年間再処理能力800トンUの再処理工場の建設を進めている。1996年4月には運転保守性の向上や廃棄物発生量低減の観点からの設計変更について、内閣総理大臣に再処理事業変更許可申請が行われ、1997年7月に変更許可がなされた。再処理工場に試験用使用済燃料を搬入するに当たって、地元自治体と事業者の間で締結される安全協定について、1997年1月に地元自治体から案が示されており、調整が引き続き行われている。これに関し1997年9月には通商産業大臣、科学技術庁長官及び青森県知事から構成される核燃料サイクル協議会が設置・開催され、その後実務者クラスによる同協議会幹事会を活用し、安全協定及びそれに係る青森県から国への要望事項につき意見交換が行われている。
 一方、我が国の電気事業者は、BNFL及びCOGEMAと再処理委託契約を結んでいる。1998年3月末現在、軽水炉使用済燃料については、BNFL及びCOGEMAに合計約5,600トンUの再処理委託契約を結んでいるほか、ガス炉使用済燃料については、BNFLに約1,500トンUの再処理の委託を契約している。これらの契約に基づき、1998年3月末現在、軽水炉使用済燃料約5,600トンU(なお、未搬出量は15トンU)及びガス炉使用済燃料約1,300トンUが英国及び仏国に輸送されている。
 使用済燃料は、再処理されるまで適切に貯蔵・管理することとしており、各原子力発電所の貯蔵プールには、1998年3月末現在、合計6,700トンUの使用済燃料が安全に保管されている。初期に建設された発電所の貯蔵プールの中には貯蔵容量が比較的小さいものがあり、同じ発電所内で貯蔵要領に余裕のある他の原子炉の貯蔵プールに使用済燃料を移送したり、貯蔵容量を増強するなど、対策が講じられている。
 使用済燃料貯蔵対策については、今後長期的に使用済燃料の貯蔵量が増大するとの見通しを踏まえ、1997年2月の閣議了解に基づき、科学技術庁、通商産業省及び電気事業者からなる使用済燃料貯蔵対策検討会にて同年3月から実務的な検討を行った結果、従来からの発電所内での貯蔵に加え、発電所外において使用済燃料を中間的に貯蔵することを目的とした施設を2010年までに確実に操業開始できるよう、国及び電気事業者は直ちに所要の制度整備、立地点の確保等に取り組むことが必要であるとの報告をまとめた。これを受け、総合エネルギー調査会原子力部会において具体化のための検討が行われている。
 我が国における再処理技術に関する研究開発は、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所などにおいて行われている。
 動力炉・核燃料開発事業団は、高速増殖炉の使用済燃料の再処理のプロセス・エンジニアリングの確立を図るための施設である工学規模のリサイクル機器試験施設(RETF)の建設に1995年1月に着手し、建設を進めている。
 日本原子力研究所においては、燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)を完成させ、臨界安全性に関する研究、高度化再処理プロセスに関する研究、TRU廃棄物の安全管理技術に関する研究などについて、ホット試験を開始している。


RETF:Recycling Equipment Test Facility
NUCEF:Nuclear Fuel Cycle Safety Engineering Research Facility
ホット試験:実際に放射性物質を用いて行う試験。

図2−8−1青森県六ヶ所村日本原燃(株)再処理工場

表2−8−1海外再処理委託の状況(単位:tU)
(1998年3月末現在)
 BNFLCOGEMA合計
軽水炉2,700
(2,700)
2,900
(2,900)
5,600
(5,600)
ガス炉1,500
(1,300)
 − 1,500
(1,300)
上段は契約量
下段( )内は既搬出量

表2−8−2各原子力発電所の使用済燃料貯蔵量及び貯蔵容量(1998年3月末現在)

図2−8−2リサイクル機器試験施設(RETF)

図2−8−3燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)


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