第1章 国民の信頼回復に向けて
2.動燃問題と動燃改革

(1)アスファルト固化処理施設火災爆発事故とその後の不適切な対応

 1997年3月動燃東海事業所において発生した火災爆発事故は、その後の不適切な対応が重なったこともあり、国民の原子力に対する不信感が高まりました。

 1997年3月11日、動燃東海事業所再処理施設アスファルト固化処理施設で火災爆発事故が起こった。この爆発によって、施設が破損し、環境や健康に影響を及ぼすレベルではなかったものの、放射性物質が放出された。この事故の原因究明等を行うため、科学技術庁は「東海再処理施設アスファルト固化処理施設における火災爆発事故調査委員会」において調査検討を行った。その結果、運転条件の変更により、ドラム缶内で遅い化学反応により長時間にわたり温度が上昇し、ついには、硝酸塩/亜硝酸塩とアスファルトとの発熱反応が活発に進行し火災に至ったという事故の基本的原因及び事故の進展に係る基本構成を把握し、1997年12月15日に報告書を取りまとめた。
 この事故は、1995年12月に発生した「もんじゅ」事故から時を置かずして起こったこともあり、動燃の安全管理に対する国民の懸念が高まったが、事故の経過が明らかになるにつれて、国民の目は、事故の技術的な安全性に加えて、むしろ動燃の組織としての体質にも向けられた。例えば、過去の実験において鎮火には8分程度の消火が必要であるとの知見を得ていたが、現場に徹底されず完全な鎮火が行われなかった結果爆発事故に至ったこと、また「目視により消火したと判断した」との報告書の記述が事実に反した虚偽の報告であったこと、さらに事実に反することを知りながらそれを隠蔽するなどの工作が組織的に行われたことなどが明らかとなった。この件に関し、科学技術庁は動燃職員3名及び動燃を告発した。「もんじゅ」事故の際、事故後の不適切な対応として事故現場の「ビデオ隠し」が問題となり、社会的に大きな批判を招いた経験は、教訓として生かされなかった。
 また、1997年4月14日には、新型転換炉「ふげん」発電所の重水精製建屋で、重水の微量漏洩が発生し、その際、関係機関へ連絡通報が遅れ、さらに、1997年8月26日、動燃東海事業所ウラン廃棄物屋外貯蔵ピットにおいて施設内に水がたまり、ウラン廃棄物を収納したドラム缶に腐食、損傷が見られるという不適切な管理状況にあることが判明した。同ピット周辺の環境調査の結果、環境や健康に影響を及ぼすものでないことが科学技術庁のデータ評価検討会において確認された。また、科学技術庁の調査の結果、貯槽改修費が1993年から毎年計上されていたにも関わらず、予算の約9割近くが予定通り執行されず、他の事項に使用されていたことが明らかとなった。
 このような度重なる不祥事により、動燃に対してのみならず原子力に対する国民の不信感が高まった。動燃はすべての業務について徹底的な安全性総点検を行い、その結果、法令違反から軽微な事象も含め、動燃の不適切な安全管理の実体を自ら公表した。さらに、監督官庁である科学技術庁も独自に動燃の全施設・設備の現地調査を行い、動燃の業務を徹底的に調査した。

図1−2−1 動燃東海再処理施設アスファルト固化処理施設を視察する谷垣科学技術庁長官(いずれも写真中央)


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