第1章 国民の信頼回復に向けて
2.動燃問題と動燃改革

(2)動燃改革への取組

 「動燃改革検討委員会」では動燃の事業を抜本的に見直すとともに、経営の刷新を図り、新法人として解体的に再出発すべきとして、動燃改革の基本的方向を取りまとめました。これに基づき動燃改革法案が国会で審議、成立し、現在、動燃において、意識改革や安全性の向上などの取り組みが実施されるとともに、1998年10月の「核燃料サイクル開発機構」への改組に向けた作業が進められています。

 1997年4月11日、動燃事業団の体質及び組織・体制について、徹底的な第三者チェックを行い、抜本的な改革を図るため「動燃改革検討委員会」(座長:吉川弘之前東京大学総長)を設置し、動燃改革の具体的検討を開始した。動燃改革検討委員会は、6回に及ぶ審議を重ね、1997年8月1日、動燃の事業を抜本的に見直し、新法人として解体的に再出発させることなどを内容とする報告書「動燃改革の基本的方向(参照)」を取りまとめた。
 報告書は、動燃問題の構造的問題として、「基本意識、方法などを異にする『先例のない研究開発』、『原子力であるが故の高い安全性』及び『競争力ある技術の供給』の同時的実現という困難な課題を同時に追求しなければならなかった」ことを指摘し、一方で「動燃は自らを取り巻く様々な状況の変化に的確に対応できない『経営の不在』という状況にあった」と分析した。その具体的な内容としては、施設運転部門の軽視などによる「安全確保と危機管理の不備」、外界の反応を得るための発信を怠った「閉鎖性」、業務や組織の適正な管理を困難とした「事業の肥大化」という状況が生まれていたとしている。

図1−2−2 動燃改革検討委員会

 このため、事業の肥大化を防ぐ観点から、動燃を改組した法人の中核的事業は「高速増殖炉開発及びそれに関連する核燃料サイクル技術開発」、「高レベル放射性廃棄物処理処分の研究開発」とし、「海外ウラン探鉱」、「ウラン濃縮研究開発」、「新型転換炉開発」からは撤退させるとともに、「経営の機能強化」などによる経営の刷新、「現場責任の確立」などによる安全確保の機能、「地域社会との共生」や「広報・情報公開の強化」などを通じた社会に開かれた体制の構築などが必要と指摘した。同報告書は、改革の基本的な方向性として「明確に設定された裁量権」「明確な事業目標の設定とその適切な評価」「新組織の経営体の自己改革」「経営の外部評価」などの必要性を指摘した。

図1−2−3 動燃改革検討委員会吉川座長(左)から近岡科学技術庁長官(当時)への報告書の提出(1997年8月1日)

 一方、動燃自らは1997年10月、職員の心構えやとるべき行動を示す「動燃行動憲章」を定め意識改革に努めるとともに、理事長診断会による業務品質の向上や全施設・設備の総点検による安全性の向上など、抜本的な改革に向けた具体的な作業を進めている。
 また、同報告書は、動燃を監督する科学技術庁の責任についても指摘しており、これを受けて、1997年8月1日、科学技術庁は「科学技術庁の自己改革について(参照)」を発表し、原子力行政への国民の信頼を速やかに回復するよう最大限の努力を払うこととし、職員の意識改革、緊急時対応の強化などを進めている。
 動燃改革検討委員会の指摘を踏まえ、1997年8月6日、科学技術庁は、新法人の経営や体制整備、実施すべき事業計画などについて、具体的な改革案の策定作業に入るため「新法人作業部会」(部会長:鈴木篤之東京大学教授)を設置し、1997年12月9日、中間報告「新法人の基本構想(参照)」が取りまとめられた。
 同部会においては、動燃改革検討委員会の指摘を具体化するため、事業を重点化するとともに、経営の刷新のためその機能強化や役職員の意識改革を図るなどの必要性が指摘されているほか、新法人の組織体制について、特に運転管理部門の強化、危機管理体制の整備等により、安全確保体制を確立するとともに、本社の茨城県東海村への移転や、広報、情報公開の強化、地域フォーラムの開催等により社会に開かれた体制を確立するための検討が行われた。
 これらの検討結果を基に科学技術庁は「原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法の一部を改正する法律案(参照)」(以下、「動燃改革法案」という。)を1998年2月、第142回通常国会に提出し、同法案は1998年5月可決成立した。現在、1998年10月の新法人「核燃料サイクル開発機構」の設立に向けて具体的な作業が進められている。


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