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@mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
2012年11月2日号
☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 尾本委員からひとこと 事故調査報告
┣ 定例会議情報 国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)第3回
┃ 執行委員会会合結果について
┃ 高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組についての有識
┃ 者との意見交換
┃ 原子力人材の確保・育成に向けた取組に関する意見交換
┃ 東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置
┃ に関する提言(案)の検討と意見募集について 等
┣ 部会情報等
┣ 事務局だより いま思うところ
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
事故調査報告
尾本 彰
映画にもなった小説「天地明察」を読んだ。主人公が度々重大なミスを冒し、
何処が間違っているのかを知り打ちのめされ、やっと元気を取り戻して何故間
違ったかを解明し、将来に繋げてゆく様が描かれている。「何処が」と「何
故」とは異質の疑問で、後者が普遍的な教訓を得る上で重要なのは言うまでも
ない。人や組織は間違い、何故間違ったかを解明して教訓を得る中で賢くなる。
そのために事故調査報告がある。我が原子力委員会も安全が原子力利用の前提
と語ってきたが、安全確保方策について政策評価も実施しながら、いわばその
実施を訴求する「しつこさ」に欠けていたと反省した声明文を出した。
原子炉事故については、米国スリーマイルアイランド事故の後のケメニー大
統領委員会報告は、運転操作、訓練及び安全への姿勢といった人的要因に事故
の原因を求めるとともに規制委員会を批判し、長官制度への変更を含む組織改
編を求めた。これに続く議会での議論は、日本の規制組織変更に際し参照され
たものと思う。チェルノブイル事故から4ヶ月後、国際原子力機関(IAEA)事故
検討委員会にソ連を代表して出席したレガソフ氏の率直な事故報告と、欠陥の
指摘は世界を驚かせた。彼は事故の2年後、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉
の設計とこれを生み出したソ連の開発運営体制に問題があったとし、心を打つ
メモを残して自殺した。国際社会は組織安全文化を教訓とした。
宇宙分野では、チャレンジャー事故及びコロンビア事故それぞれで、米航空
宇宙局(NASA)を含めた専門家等を集結した議論の末に大統領委員会報告が出さ
れている。コロンビア事故報告は、断熱材剥離が常態化する中で発射の意思決
定という過誤について、それを生む背景にある組織文化を含め議論している。
福島第一原子力発電所事故のおよそ1年前に起きたメキシコ湾での原油漏洩
事故は、その事故コストが福島を超えないまでも、それに近いと言われている。
昨年1月の大統領への事故報告では、内務省においてオフショア採掘事業推進
と安全規制の両方を同じ機関である鉱山資物管理部が担ってきたことや、事業
者の注意力の欠如に事故原因を求め、事業者による原子力発電運転協会(INPO)
を参考にした自己規制組織創出の必要性と自主基準のあり方、事故時の環境影
響緩和設備の早期配備を論じていて興味深い。INPOがこのように他産業の範と
なるまでに信頼を勝ち得てゆく過程は”Hostages to each other”に描かれて
いる。
さて、上に書いた普遍的教訓という点でこんなことを思っている。再度の原
子炉事故を世界中で防止するには、今回の事故で明らかになった自然災害、全
電源と熱の逃がし先の喪失への直接的な対策を超えて、脆弱な点を無くす努力
が必要である。これまでの世界の議論でも既に表出していることだが、あらゆ
る不測事態への備えを高めること(レジリアンスの向上)、事業者・規制者に
よる責任ある利用と規制、それにも拘らず生じるかもしれない事故による環境
影響を長期的な移住が必要とされない範囲に確実に押さえ込むべきことが普遍
的な教訓だと思う。さらに、この教訓が実のある変化を生むには、先述のケメ
ニー報告が、「どれだけ技術的対策を積重ねても根底にある問題(人の姿勢)
への手当にはならない」と、わざわざ「警告」というタイトルの下で書いてい
るように、人の問題に踏み込まざるを得ない。「安全文化に問題があった」と
一般論で片付けるだけでは解決しない。「切迫性に関する判断」、「社会性を
含めた異なる分野を統合した判断」を含め、どのようにして誤りの少ない判断
ができるかが重要だと思う。「切迫性に関する判断」について専門家の役割に
一石を投じたのがイタリアのラクイア地震に関する司法判断で、当然論義を呼
んでいる(実際には専門家判断の問題よりも行政による広報のあり方が問題
だったようだが)。3.11全体について、「何故誤ったのか」に遡り、そこから
「どのようにして誤りの少ない判断ができるか」に寄与する地震、津波、原子
力の専門家による議論がまだ必要とされていると思う。
●次号は近藤委員長からのひとことの予定です!
━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●10月24日(水)第46回臨時会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。
【議題1】国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)第3回執行委員会
会合結果について
<主なやりとり等>
事務局より、10月10日にモロッコ王国のマラケシュで開催されたIFNEC第3回
執行委員会(閣僚級会合)の結果概要について報告がありました。日本からは、
近藤原子力委員会委員長等が出席しました。同会合では、基盤整備ワーキング
グループ等の各グループによる活動状況と今後の活動方針が報告され、これら
を踏まえた共同声明が取りまとめられました。
委員からは、共同声明の中に人材育成についての記述があるが、IFNECとし
ての具体的な活動提案はあったか、原子力ファイナンスに関して原子力規制機
関の重要性等が指摘されているが、安全性に関するリスクが問題になったのか、
等の質問がありました。
【議題2】近藤原子力委員会委員長の海外出張報告について
<主なやりとり等>
近藤委員長より、IFNEC執行委員会における日本政府代表としての挨拶、フ
ランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)における関係者との意見交換及
び視察結果概要等について報告がありました。
【議題3】鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張報告について
<主なやりとり等>
鈴木委員長代理より、10月17日に韓国の慶州で行われた世界グリーンエネル
ギーフォーラム2012において、福島第一原子力発電所事故以降の原子力政策と
世界の原子力産業への影響について講演を行った旨の報告がありました。
【議題4】高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組についての有識者との意
見交換(公益財団法人原子力安全研究協会 放射線・廃棄物安全研究所長 杤山
修氏、一橋大学大学院 教授 高橋滋氏、原子力資料情報室 共同代表 伴英幸氏、
東北大学 名誉教授 北村正晴氏)
<主なやりとり等>
高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分の今後の取組のあり方について、有識者
と意見交換を行いました。
有識者からは、HLWは地層処分が適していると選択された過程を社会と共有
すべき、最終処分施設の処分量・形状を明確にした処分計画を策定すべき、
「安全」を定義するに当たっては、何を根拠に、誰によって語られるかが重要、
等の意見がありました。
委員からは、HLW処分に関する国民的議論と政治的意志決定を今後どのよう
に進めていくべきか、処分施設の立地について国民の理解を得られていないこ
とを踏まえて、今後具体的にどのような活動をすべきか、等の質問がありまし
た。
本議題については、11月2日(金)に開催した第48回臨時会において、他の有
識者を招いて第二回目の意見交換を行いました。
●10月30日(火)第47回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。
【議題1】原子力人材の確保・育成に向けた取組に関する意見交換(経済産業省、
文部科学省)
<主なやりとり等>
経済産業省より、原子力発電所に係る技術、産業構造等の紹介の後、原子力
関係機関において今後必要となる人員規模や、人材確保・育成に関する取組の
課題等について説明がありました。次に、文部科学省より、原子力関係学科を
志望する学生の動向、人材育成に係る課題等について説明がありました。
委員からは、原子力産業界だけではなく、産業横断的な人材育成の取組など
は考えていないのか、産学官による人材育成活動のネットワーク化の推進・拡
大とは具体的にどのような活動なのか、等の質問がありました。
原子力委員会は、これまでの意見交換を踏まえて、原子力人材の確保・育成
に係る提言を検討していくこととなりました。
【議題2】東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置に関する提
言(案)の検討と意見募集について
<主なやりとり等>
「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期にわたる
取組の推進について(見解案)」について議論を行いました。
委員からは、福島第一原子力発電所の清浄化に関する取組の情報は公衆や作
業員と共有することを記載すべき、等の意見があり、案文を一部修正の上、国
民の皆様からのご意見を募集することとしました。ご意見募集期間については、
おって原子力委員会のホームページにてお知らせいたします。
●11月2日(金)第48回臨時会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。
【議題1】高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組についての有識者との意
見交換(財団法人地球環境産業技術研究機構 理事 山地憲治氏、幸せ経済社会
研究所 所長 枝廣淳子氏、株式会社野村総合研究所 顧問 増田寛也氏)
<主なやりとり等>
高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分の今後の取組のあり方について、有識者
と意見交換を行いました。
有識者からは、社会全体の不信に根本的に対処し、各所の分断を紡ぎ直すべ
き、原子力関連施設立地地域に政府と自治体、住民との意思疎通、情報共有を
行う常設の場を設けるべき、等の意見がありました。
委員からは、処分場の立地の受け入れを自治体が表明した場合に生じる住民
の賛成、反対の強い二項対立を避ける具体的な方法はあるのか、提言されてい
る常設の意思疎通、情報共有の場の構築を自治体はどのように受け止めると思
われるか、等の質問がありました。
原子力委員会は、これまでの意見交換を踏まえて、HLWの処分の今後の取組
に係る提言を検討していくこととなりました。
【議題2】鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
<主なやりとり等>
鈴木委員長代理より、11月5日から9日までドイツのベルリンに出張する旨の
説明がありました。委員長代理は、日独フォーラムに出席し、エネルギー安全
保障と環境に関する緊急課題及び日独協力の可能性についてスピーチを行うと
ともに、日独双方のオピニオンリーダーと意見交換を行う予定です。
※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm
●次回は11月6日(火)に定例会を開催します。議題は以下のとおりです。
(1) 原子力人材の確保・育成に向けた取組の推進に関する提言(案)の検討と
意見募集について
(2) その他
●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、
霞ヶ関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催
案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。
━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━
●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホーム
ページでご覧いただけます。
●専門部会等の開催はありませんでした。
●次週の専門部会等開催情報
・次週は専門部会等の開催は予定されていません。
+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
いま思うところ
この部署へ着任して、2年と4か月が経ち、事務局だよりを書くのもこれが
3回目である。
2回目の事務局だよりが本年1月27日号であったが、その後、原子力委員会を
取り巻く情勢も一変してしまい、原子力委員会は9月に策定された「革新的エ
ネルギー・環境戦略」において、「廃止・改編を含め抜本的に見直す」となっ
たのである。
原子力委員会が設置されたのが1956年、本年末で56年が経ち、この間、原子
力船「むつ」の放射線漏えい問題からの原子力安全委員会の誕生、省庁再編、
福島原発事故からの原子力規制委員会の誕生などあったが、ついに原子力委員
会見直しである。原子力委員会見直しについては、国家戦略担当相の下に有識
者会合が設置され、その検討結果等を踏まえ、12月下旬にはエネルギー・環境
会議で見直し案がとりまとめられるようである。
このような原子力に係る歴史的な変移の中、この部署に配属されていること
の巡り合せを感慨深く思う次第であり、今後どのようになるか先行き不透明な
ところであるが、一生懸命頑張っていきたいと思う。
(近藤)
●次号配信は、平成24年11月16日(金)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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