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@mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
2011年12月9日号
☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 大庭委員からひとこと 過剰な「我慢」をせずにすむ社会を目指して
┣ 定例会議情報 平成24年度原子力関係経費概算要求ヒアリング
┃ 第9回ITER理事会の開催結果について
┃ 放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針について
┃ 秋庭原子力委員会委員の海外出張報告について 等
┣ 部会情報等 第9回新大綱策定会議の開催について 等
┣ 事務局だより 最近あまり話題にならなくなったこと
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●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.htmlまで、ぜひお寄せください。
━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
過剰な「我慢」をせずにすむ社会を目指して
大庭 三枝
日本における将来のエネルギー・ベスト・ミックスのあり方を議論する際、
ヨーロッパの状況が参照される。メディアを中心に注目が集まっているのは、
ドイツやスイス、イタリアなど脱原発を決定した数カ国である。現在、原発依
存度が70%を超えるフランスも、大統領選挙と絡んで、脱原発が論じられてい
ることから、別の意味で注目されている。
しかしながら、冷静に見れば、イギリス、フィンランド、スウェーデンをは
じめとする原発を依然として保持し続ける姿勢を示している国、またポーラン
ドのように原発導入の姿勢を明確に示している国も多く存在している。また、
すでに脱原発を決定した諸国は、以前から、行きつ戻りつしながらも、その路
線を歩みつつある国であった。すなわち全体としてみれば、ヨーロッパの状況
は「推進」と「撤退」に二分されるという状況がより鮮明になってきている。
ご存じの通り、ヨーロッパはEUのもとで統合され、相当程度の電力市場の自
由化を達成し、また2009年のリスボン条約にはEUとしてのエネルギー政策につ
いての条項も盛り込まれた。各国それぞれのエネルギー・ベスト・ミックスの
決定は各国政府に委ねられているが、他方で、EU全体としてのエネルギー政策
について、様々な「指令」によって方向付けがなされてきている。また、来週
にはEUがエネルギー需給に関する長期的な複数のシナリオの提示を盛り込んだ
「ロードマップ2050」を発表する予定である。すなわち、ヨーロッパ各国およ
びEUレベルで、エネルギー安全保障の確保や地球温暖化対策を踏まえた上での
エネルギー政策の策定が行われている。
このようなヨーロッパにおいて展開されている「現実」を把握するため、現
在ヨーロッパに出張している。初日はベルリンで、脱原発へとドイツが舵を切
る際の正当性の根拠を提供した、ドイツ倫理委員会のメンバーの方、またドイ
ツ連邦経済技術省や連邦環境・自然保護・原子力安全省の方々と、二日目はEU
代表部のエネルギー総局や欧州議会、さらにベルギー政府の方々とお会いし、
意見交換を行うとともに、さる研究所開催のセミナーにおいてプレゼンを行い、
質疑応答の際には日本のエネルギー政策の見直し状況に関するフロアからの率
直なご意見を多数いただいた。
旅はまだ半ばであるが、議論の中で印象深く感じたことがある。それは、彼
らの多くが口々に技術開発等による「エネルギー効率性の向上」の重要性を挙
げながら、「節電」の役割についてはあまり言及しないことである。もちろん、
関東における今夏の節電効果について数名の方が驚きと感嘆の意を表していた。
しかしながら彼らが提示する今後のエネルギー政策のありかたにおける「節電」
の位置づけは、あまり大きくはない。日本において、節電効果への期待が大き
いことを考えると、ずいぶんちがうなと感じたのである。もちろん、節電と一
言で言っても、エネルギー効率向上策を導入して節電をはかる、という言い方
もあろう。電気からガスへの変換を図ることによる節電策、というのも存在す
る。しかしながら、日本において今少なくとも議論されている「節電」は、個
々の市民や事業体が電気の需要を抑制すべきである、というところに力点が置
かれている気がする。
思えば、ドイツ倫理委員会の報告書には、脱原発によって失われる電力量を
どう補填するかについての基本的考え方の一つとして、以下のような文言があ
る。「簡単に電力の強制的合理化によって節電をするべきではない。というの
も、これは人々の生活の要求及びハイテク国家の経済に矛盾するからである」。
この点について、面談の場でもエネルギー効率向上の重要性を力説しておられ
た倫理委員会メンバーのヒュットル博士(ドイツ科学技術アカデミー会長)に
お伺いした。すると彼は、過剰な節電は人間の自然な欲求とは明らかに矛盾す
ること、また過剰な節電のもたらす経済的なネガティブ効果を勘案することが
必要だとの説を展開していた。
このとき、日本を出発する直前に開かれた新大綱策定会議において、日本商
工会議所が提出した、今夏の節電について事業者からとったアンケート結果を
思い出した。それによれば、会員企業の48%が15%の節電に成功した一方で、
製造業では13%ほどが生産抑制で対応、また休日出勤等の労働負荷の傾向が顕
著であった。さらに、会員企業の30%、製造業の40%が節電によるコスト増を
訴えていたという。特に、中小企業からは、いかに今夏の節電対策に尽力した
かとともに、これ以上の電力需要の抑制について懸念を抱く声が多数寄せられ
たという。
今後の日本において、一定程度の電力需要の抑制にむけた努力をしていくこ
とは、必要なことではある。また、今現実に電力需要が逼迫している中、短期
的に国民が「我慢」しなければならないのももっともである。しかしながら、
そうした意味での節電を長期的にも有効な方策として考え、その効果に過剰な
期待を抱いてよいのだろうか。戦時中の電力需要抑制も含めた統制経済下での
市民生活の息苦しさを知る人は数少なくなったとは思う(もちろん私も直接に
は知らない)が、長期にわたる、かつ相当程度以上の「我慢」を国民に強いる
ような方策は、安定性にも、持続性にも欠け、人々の活力を奪ってしまうだろ
う。それよりも、科学技術立国として、様々な技術の開発により、エネルギー
効率の向上を図り、人々の「我慢」を強いらずにすむ社会を作るという発想を
専門家のみならず市民の間でも共有することが重要ではないか。
●次号は尾本委員からのひとことの予定です!
━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●11月29日(火)第47回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。
【議題1】平成24年度原子力関係経費概算要求ヒアリング(警察庁、厚生労働省、
文部科学省、経済産業省)
<主なやりとり等>
警察庁、厚生労働省、文部科学省及び経済産業省より、平成24年度原子力関
係経費概算要求について説明がありました。
委員からは、厚生労働省に対して、放射性物質が食品等へ与える影響等につ
いて評価した結果は、迅速かつ正確に国民に情報提供するべき等の意見や、経
済産業省に対して、軽水炉安全対策高度化とは具体的にどのようなものか等の
質問がありました。
【議題2】北陸電力株式会社志賀原子力発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号
原子炉施設の変更)について(諮問)(原子力安全・保安院)
<主なやりとり等>
原子力安全・保安院より、北陸電力が志賀原子力発電所の使用済み樹脂タン
クの貯蔵裕度の確保を目指して、1号炉と2号炉の使用済み樹脂タンクの共用化
を図るための設置変更許可申請を行っている旨の説明がありました。審査の結
果、原子力・安全保安院は同申請を問題ないと判断したことから、経済産業省
が当委員会に諮問を致しました。
【議題3】近藤原子力委員会委員長の海外出張について
<主なやりとり等>
近藤委員長より、11月30日から12月4日まで米国へ出張する旨の説明がありま
した。ワシントンDCにおいて米国原子力関係者と面談し、我が国の原子力政策
の見直しの検討状況等について意見交換等を実施する予定です。
【議題4】大庭原子力委員会委員の海外出張について
<主なやりとり等>
大庭委員より、12月4日から11日までドイツ、ベルギー等へ出張する旨の説明
がありました。欧州における東京電力(株)福島第一原子力発電所事故を受けて
のエネルギー政策や研究開発体制の検討や対策の実態を把握するため、政府関
係者と意見交換等を実施する予定です。
●12月6日(火)第48回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。
【議題1】第9回ITER理事会の開催結果について(文部科学省)
<主なやりとり等>
文部科学省より、2011年11月17日、18日にフランスのカダラッシュで開催さ
れた第9回ITER理事会の結果について説明がありました。理事会では、核融合実
験炉ITERの建設状況の紹介等がありました。その他、日本国内で取り組んでい
る幅広いアプローチ活動の進捗状況について紹介がありました。
委員からは、同理事会によるITER機構に対するマネジメントの評価結果は公
表されているのか、このような先端技術を子供達へ紹介するような広報活動は
行っているのか、等の質問がありました。
【議題2】放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針について(環境省)
<主なやりとり等>
環境省より、平成23年11月11日に閣議決定した平成二十三年三月十一日に発
生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射
性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法の基本方針に基づき、今
後の除染及び汚染された廃棄物の処理に関する取組について説明がありました。
委員からは、IAEAから受けた除染作業に対する提言を考慮した取組となって
いるのか等の質問や、作業に当たっては、住民の皆さんのニーズに応えるため
に、市町村が取組の計画を策定し、国が支援する体制が望ましい等の意見があ
りました。
【議題3】秋庭原子力委員会委員の海外出張報告について
<主なやりとり等>
秋庭委員より、11月20日から27日までスイス・フランスへ出張した結果につ
いて説明がありました。委員は、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故が各
国の原子力政策に与えた影響等について、関係者と意見交換を実施するととも
に、ベツナウ原子力発電所及びラ・アーグ再処理施設の視察、及び両施設の近
隣住民と意見交換を行いました。
※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm
●次回定例会議は12月13日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
(1)東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置に関する検討
結果について
(2)東北電力株式会社女川原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号及び
3号原子炉施設の変更)について(諮問)(原子力安全・保安院)
(3)近藤原子力委員会委員長の海外出張報告について
(4)鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
(5)その他
●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞ヶ
関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。
━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━
●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームペ
ージでご覧いただけます。
●11月30日(水)に第9回新大綱策定会議を開催しました。
詳しくはホームページに掲載される議事録をご覧下さい。
<主なやりとり等>
原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会の座長より、核燃料サイク
ルコスト及び事故リスクコストの試算が原子力委員会に、そしてエネルギー・
環境会議コスト等検証委員会に報告されたことが紹介されました。続いて、4人
の有識者から、中長期のエネルギーシナリオや核燃料サイクルについて説明が
ありました。
専門委員からは、日本は最先端の原子力技術を有しており、国際的な原子力
発電の安全性向上に貢献すべきである、これまでの原子力発電への依存が再生
エネルギーの導入を阻害している、将来の電力需給に対して節電による需要減
を期待しているが、中小企業は節電により痛みを伴っている、等の意見があり
ました。
●12月7日(水)に第7回東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措
置検討専門部会を開催しました。
詳しくはホームページに掲載される議事録をご覧下さい。
<主なやりとり等>
事務局より、パブリックコメントの募集を通じ同専門部会の報告書(案)に寄
せられた意見、意見に対する回答(案)、及び報告書(案)の修正(案)について説
明がありました。
専門委員からは、作業員と公衆の安全を確保することは重要なので、放射線
管理組織の確立が重要という文言を入れるべき、福島県が将来発展して欲しい
ことは同専門部会委員の共通の思いなので、それが伝わるような表現を入れる
べき、等の意見がありました。報告書等のとりまとめは部会長に一任され、部
会での意見を踏まえ、報告書(案)を一部修正の上、最終報告書にすることとな
りました。
●次週の専門部会等開催情報
・次週は専門部会等の開催は予定されていません。
+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
最近あまり話題にならなくなったこと
12月になり冬らしい寒さとなってきましたが、11月には関東で夏日になるな
ど今年は比較的暖かい秋だったように思います。しかし、昔はもっと寒かった
です。例えば昭和56年の五六豪雪。私は雪国の小学生だったので、道が雪山の
ようになっている中、登校して楽しかったことぐらいしか覚えていませんが、
大人は物流や交通がマヒし大変だったようです。また、家も(古かったせいも
ありますが、)もっと寒かったです。霜焼けにもよくなりました。
実際に、近年世界全体の気温が上昇傾向にあり、これは温室効果ガスの影響
ではないかとの説が有力だそうです。
気温や温室効果ガスの濃度が著しく上昇しても、生物が絶滅するとは思いま
せん。なぜなら、今よりも、気温が高かったことや、温室効果ガスの代表であ
る二酸化炭素濃度が高かったことは、生物誕生以来いくらでもあったからです。
しかし、気温の著しい上昇は、生態系の変化をもたらし、ひいては人類の生存
と繁栄に、なんらかの影響を与えるのではないかとは思います。
最近、地球温暖化の話をあまり耳にしなくなったような気がしますが、人類
の生存と繁栄のためには、とても大事な話ではないかと思っています。
(小森)
●次号配信は、平成23年12月22日(木)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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