前頁 | 目次 | 次頁

関係機関

第36回IAEA総会について

科学技術庁

1. 日 程:1992年9月21日(月)~9月25日(金)

2. 場 所:オーストリアのウィーン国際会議センター

3. 参加国:加盟国113カ国のうち100カ国以上から総勢約600名が参加、我が国からは、

 谷川 寛三 科学技術庁長官(原子力委員会委員長)
 田畑 米穂 原子力委員会委員
 久米 邦貞 在ウィーン国際機関日本代表部特命全権大使
 須藤 隆也 外務省大臣官房審議官
 石田 寛人 科学技術庁原子力局長
 末廣 恵雄 通商産業省資源エネルギー庁長官官房審議官
 内田 秀雄 原子力安全委員会委員長
 らが出席

4. 主要議題審議結果概要

(1) 全般的概要
 ① 今次総会は、保障措置の整備・強化、原子力安全問題等IAEAの直面する重要課題について原子力分野での国際協力推進の中心的専門機関としての立場から地道な掘り下げた議論が行われ、総じて有意義な総会であった。

 ② 今次総会の議長には、アフリカよりアデカニエ在ウィーン代表部大使が選出された。

 ③ 我が国政府を代表して谷川大臣が演説を行い、原子力平和利用の前提である国際的な核不拡散体制の維持・強化の重要性を訴えるとともに、旧ソ連・中東欧諸国に対する原子力安全協力の重要性を指摘するとともに、我が国の原子力開発利用、とりわけプルトニウム利用に関わる基本的な姿勢を表明した。

 ④ 今次総会では、クロアチア、スロヴェニア、ウズベキスタン共和国の3カ国の加盟申請が異議なく承認され、IAEA加盟国は承認ベースで119カ国となった。

(2) 個別事項
 ① 保障措置の合理化
 本件については、総会直前の9月理事会においてブリックス事務局長よりSAGSI(事務局長の保障措置実施に関する常設諮問グループ)を通じての具体的検討を進めるとの報告があったのを受け、右方針を支持し、事務局長が更に努力を継続することを要請するとの内容の決議が我が国、ベルギー等保障措置合理化に関心を有する諸国の主導の下コンセンサスで採択された。

 ② 北朝鮮の保障措置協定履行
 北朝鮮の保障措置協定履行問題については、総会直前のIAEA9月理事会で本件問題が取り上げられたこともあり、総会では我が国、米国をはじめとする関係国がその代表演説の中で協定の完全履行等について言及した以外は、取り上げられなかった。

 ③ 原子力安全問題
 昨年の総会では、総会の直前に原子力安全に関するハイレベルの政策決定者会合が開催されたこともあり、安全問題は多くの関心を集めたが、今次総会でも引き続き各国より安全問題につきIAEAが積極的に取り上げていくことの重要性が指摘され、具体的には安全条約について早期に合意する必要性等について言及したいくつかの関連決議案が採択された。

 ④ 財源問題
 近年保障措置活動、予算が新規対象施設の増大等により拡大する傾向にある中で、途上国側は技術協力関係予算が総体的に減額されることに危機感を有しているが、今次総会においても、昨年度同様、保障措置関係予算と技術協力関係予算の均衡をとった配分を求める内容の決議が採択された。

 ⑤ イラクの保障措置協定義務不履行
 本件は、米国、我が国等西側諸国が共同提案国となった昨年とほぼ同内容の決議(IAEAとの保障措置協定を含め、イラクの核不拡散義務違反を強く非難する、イラクが直ちにかつ完全にIAEAとの保障措置協定及び関連の安保理決議に基づくすべての義務を遵守するよう要求する、事務局長に対し可能な限り早期に安保理決議715に基づく長期監視計画の実施のための所要の措置を講じるよう要請する、等)が賛成多数(反対はイラクのみ、一部非同盟諸国が棄権)で採択された。

 ⑥ 政治問題
 (1) イスラエル問題
  イスラエルをめぐっての審議には従来の総会にない動きがあったのが注目される。即ち過去の総会では「イスラエルの核能力と脅威」と題するイスラエル非難の決議が毎年採択されてきたが、今次総会では当初同国目が議題に入っていたものの、米国、イスラエルをはじめとする関係国の調整の結果、審議を行わないこととなり、したがって決議案も採択されなかった。
 (2) 南ア問題
  昨年9月に南アとIAEAとの時の保障措置協定が発効して以来、協定履行に南アが積極的に協力してきていることを評価する等の内容の決議がコンセンサスで採択された
 (3) 新ユーゴの代表権問題
  本件については、IAEA総会中に、国連総会の関連決議が採択されたため、IAEAとしても緊急理事会を開催する等本件問題に対する対応を行った。結局、24日にIAEA総会の場で国連総会で採択されたのとほぼ同じ内容の決議を採択し、IAEA総会、理事会に新ユーゴを参加させないこと等について決定を行った。

(3) その他
 谷川大臣は、原子力分野での世界各国の有力者が集まるIAEA総会出席の機会を利用して、英、米、仏、独、ロシア、韓国等の各国代表及びIAEAブリックス事務局長と会談を行い、右関係国及びIAEA事務局との相互理解の促進、関係強化をはかった。

前頁 | 目次 | 次頁