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巻頭言 原子力委員会委員就任にあたって 原子力委員会委員
田畑米穂
今回はからずも原子力委員会委員の任命を受け、その責任の大きさを思うにつけ身のひきしまる思いをしております。お引受けした以上は最大の努力によって責務を全うしなければと心に誓っている次第です。
東欧諸国の政治改革、ベルリンの壁崩壊による東西ドイツの統合、湾岸戦争、ソ連邦の解体による東西冷戦の終結と目まぐるしい歴史上まれにみる激動がつづき、冷戦時の国際間の構造がくずれ、世界的に社会、経済および軍事的な再編が急ピッチで進んでいます。
一方、世界の人口は現在53億、2000年初頭には100億に達すると云われており、増大するエネルギー需要、それに伴う資源の涸渇と環境破壊が憂慮されています。急速な開発を重視する発展途上国と、環境を優先する先進国との間で対立が顕在化して来ています。
このような国際状勢のなかで、先進国としての我が国の原子力分野での果す役割は益々増大していると同時に、新しい困難な課題にも直面しつつあります。
すなわち、原子力発電による火石燃料の節減と環境保全の促進はもとより、東欧や旧ソ連地域における原子炉の安全な運転管理への協力、国際原子力機関(IAEA)を通しての核拡散防止と安全保障に対する積極的協力、さらに開発途上国に対する広い原子力分野での一般的な技術協力など、我が国の国際貢献が求められています。
国内的には、国民生活の維持向上をはかり、国の活力を持続・発展させていくために、資源小国である我が国にとってエネルギーの長期に亘る安定的確保が必須であることは云うまでもありません。このために、技術エネルギーあるいは半国産エネルギーとも云われ、またCO2発生のない環境にもやさしい原子力が中核的な役割を果すと思っています。
原子力も発電とともにエネルギーの多角的利用、さらにはアイソトープや放射線の利用も含めて、総合的にバランスのとれた開発が必要と考えています。特に基礎科学、基盤技術の充実は将来に向っての新技術の創生や人材の養成と確保の点から重要と位置づけています。
当然のことではありますが、原子力開発に当っては安全確保が第一で、また国民に十分な理解を得ることが最も重要です。就任にあたっては、あらためてこのことを肝に銘じて、気持を引締めて行きたいと考えています。
最後に、世界的視野に立って、長期的な観点から、原子力の推進に微力を侭したいと考えております。何卒皆様の御指導をよろしくお願い致します。
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