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資料

地層処分研究開発5ケ年計画

昭和61年11月21日
科学技術庁原子力局



  はじめに

1.高レベル放射性廃棄物の最終的な処分方策については、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会が昭和59年8月及び昭和60年10月に取りまとめた報告書において、「高レベル放射性廃棄物の処分に当たっては、その放射能が減衰して、環境汚染あるいは放射線の影響のおそれが十分軽減されるまで、長期間にわたり人間環境から隔離を行うことが必要である。この隔離の方法としては、従来方針通り地層処分によることとし、地下数百メートルより深い地層中へ処分を行い、天然バリアと人工バリアを組みあわせた多重バリアによることを基本的な概念とする。」とされている。

 また、同報告書においては、地層処分に至る全体の流れとして、これまでの「有効な地層の選定」(第1段階)の成果を踏まえ、今後、「処分予定地の選定」(第2段階)→「処分予定地における処分技術の実証」(第3段階)→「処分場の建設・操業」(第4段階)という段階を踏むこととされ、当面する第2段階の調査・研究開発項目が示されている。

 更に、同報告書では、「処分のための研究開発は、長期間を要するものであり、かつ、原子力政策上の重要課題である。このため、第2段階及び第3段階の研究開発を国の重要プロジェクトとして計画的に推進することとし、国による総合調整の下に、動力炉・核燃料開発事業団は、開発プロジェクトを推進し、あわせてこれに必要な研究も進めるとともに、日本原子力研究所は、安全性の評価に必要な研究等を実施するものとする。また、地質調査所等の国立試験研究機関、大学等は、それぞれの専門的知見を生かした研究を行うものとする。」とされている。

 一方、地層処分の安全研究の進め方については、原子力安全委員会放射性廃棄物安全規制専門部会が、昭和60年8月に「高レベル放射性廃棄物等安全研究年次計画」を取りまとめている。

 このような原子力委員会及び原子力安全委員会の基本的な方針に沿って、現在、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所等において、第2段階の地層処分の研究開発が進められているところである。

2.科学技術庁原子力局においては、原子力委員会及び原子力安全委員会の基本的な方針に沿って、今後の地層処分の研究開発を一層円滑に推進していくため、関係各方面の専門家の意見も徴しつつ、第2段階のほぼ前半に当たる当面の5ケ年間(昭和62年度~昭和66年度)において国が進めるべき具体的な研究開発課題、実施スケジュール、関係機関の役割分担等を「地層処分研究開発5ケ年計画」として取りまとめた。

3.もちろん、地層処分の研究開発は、この5ケ年計画をもって終了するわけではない。第2段階の後半においては、この5ケ年計画の成果を踏まえつつ、引き続き、地層処分の研究開発を推進し、第2段階の目標とする処分予定地の選定に資するとともに、第3段階以降の技術的課題に備えていくことが必要である。また、第3段階及び第4段階においても、それぞれの段階において必要とされる研究開発を進めていくことが不可欠である。

 このため、今後の研究開発の進展等に応じ、この5ケ年計画の見直しを行うことは当然のこととして、この5ケ年計画以降の具体的な研究開発計画についても、原子力委員会及び原子力安全委員会の方針を踏まえ、適時に策定していく必要がある。

  Ⅰ.研究開発の重点事項

1.第2段階の研究開発の進め方
 第1段階の「有効な地層の選定」の成果については、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の報告書において、「我が国における『有効な地層』としては、未固結岩等の明らかに適性に劣るものは別として、岩石の種類を特定することなくむしろ広く考え得るものであることが明らかになった。」とされている。

 この第1段階の成果を踏まえて昭和60年度から開始された第2段階においては、処分予定地の選定を目指して、①全国的な視野に立って、文献調査、概査、ポーリング調査等の調査を行うとともに、これと並行して、②所要の研究開発を進めていくこととしている。

 このため、②の研究開発では、第2段階の終りに処分予定地を選定するために必要な技術的な基盤を確立し、科学的な知見を蓄積することを目標に、地層処分システムの開発、地層処分の安全性評価のための試験研究等を総合的に推進していく必要がある。

 また、②の研究開発の一環として、①の調査を適確かつ効率的に実施していくため、地層処分の観点からのサイト特性の調査技術を開発するとともに、その一層の向上を図る必要がある。

 更に、第3段階では、第2段階で選定された処分予定地において、調査坑道を開削し、そこで各種試験を行うなどにより処分技術の実証を行うこととしているので、第2段階においては、このような第3段階への移行に備えた研究開発も実施する必要がある。

2.当面の5ケ年間の重点事項
 上記のような第2段階全体の研究開発の進め方と、これまでの研究開発の成果及び研究開発の現状を考慮すれば、第2段階のほぼ前半に当たる当面の5ケ年間においては、次の諸点を重点事項として、地層処分の研究開発を体系的に推進していくことが必要である。

(1)地層処分の長期的信頼性に関する基本的な考え方の確立
 地層処分システムの長期的な信頼性に関する基本的な考え方を確立するため、人工バリア及び天然バリアより成る多重バリア・システムの放射性物質に対する隔離機能の有効性及び長期安定性を評価するとともに、長期的不確実性事象の取扱等について検討する。

(2)地層処分システムの基本的な仕様の明確化 我が国の地層の地質構造、水理機構等に関する調査研究を行って、その地質環境条件を把握するとともに、これに応じた人工バリア・システムを開発する。

 その成果も踏まえつつ、地層処分システムの概念設計(処分場の具体的立地地点を定めない段階での設計)を行い、我が国における地層処分システムの基本的な仕様の明確化を図る。

 また、ここで設計された地層処分システムは、工学的に実現可能なものでなければならないことから、人工バリアの施工技術、地質環境が有する隔離機能に支障を与えることのない坑道開削技術等の開発を行い、設計された地層処分システムが実現できるとの見通しを得る。

(3)原位置試験の推進
 我が国の地質環境条件の把握、人工バリアの性能評価等のため、これまでも、既存鉱山の実際の岩盤等を利用した原位置試験を実施してきたが、原位置試験は、地層処分の安全性及び信頼性に関する実証的データを得る上で極めて重要な研究手段であるので、今後とも、各種の地層における原位置試験を積極的に推進する。

 また、こうした原位置試験を補完するため、国内各地でのこれまでの鉱山活動、トンネル工事、地下発電所建設工事等の経験から得られた知見を収集し、分析する。

(4)大型研究施設の建設
 第2段階の後半以降において、それまでに行われる研究開発の成果を結集し、地層処分の研究開発を総合的に推進していくため、当面の5ケ年間において、次の大型研究施設の建設を進める。
① 実験室内で放射性物質を用いて人工バリア及び天然バリアに関する各種試験を行うための「環境工学試験施設」。
② 深地層で放射性廃棄物を用いずに、人工バリア及び天然バリアの調査研究、処分場建設に必要な土木技術の研究開発等を総合的に実施するための「探地層試験場」。
(5)サイト特性調査技術開発の推進
 調査地点の地質環境に大きな影響を与えることなく、深部の地質環境を適確かつ効率的に評価するためのサイト特性調査技術の開発を推進する。

 サイト特性調査技術の開発は、体系的かつ総合的に進めていく必要があるので、その開発に当たっては、適切な場所において所要の研究開発を実施するほか、深地層試験場における研究開発の成果も活用していくものとする。

(6)ナチュラル・アナログの活用
 人工バリアの隔離機能及び天然バリアの隔離機能と長期安定性を評価する上で有益な類似の自然現象を摘出し、その調査研究(ナチュラル・アナログ研究)を行う。

 こうした調査研究の成果は、実際に発生した自然現象に基づく極めて長期的かつ客観的なものであるため、地層処分の安全性について国民の理解を得る上でも重要である。

(7)基礎的なデータ・ベースの整備
 人工バリア及び天然バリアの中での核種移行に係る熱力学的データ、我が国の地質環境データ等の地層処分に関する基礎的なデータの蓄積を図り、地層処分のデータ・ペースとして整備する。

(8)国際協力の推進
 地層処分の研究開発については、各国とも精力的にその推進を図っているところであり、我が国における研究開発を合理的かつ効率的に進めるためにも、また、我が国における研究開発の成果で世界的な研究開発の進展に貢献していくためにも、積極的に国際協力を推進する。

  Ⅱ.関係各機関の役割分担

1.国の役割
 地層処分の研究開発は、国の重要プロジェクトとして、計画的に推進することとされており、国は、この研究開発が適切かつ確実に進展するよう、必要な措置を講ずる。

 特に、国は、地層処分の研究開発が関係各機関の有機的な連繋のもとに総合的かつ計画的に進められるよう、研究開発の進捗状況、その成果等を絶えず評価し、その結果を踏まえつつ、研究開発の総合調整を行うものとする。

2.国の研究開発機関の役割分担
(1)動力炉・核燃料開発事業団は、地層処分の開発プロジェクトの中核推進機関として、処分予定地の選定のための調査を進めていくことにしているが、これと並行して、地層処分の研究開発の分野では、我が国における地層処分技術の確立を目指した研究開発を推進し、その際、これに必要な地層処分システムの性能評価等の研究を進めるものとする。この一環として、今後の研究開発に必要不可欠な大型研究施設である深地層試験場及び環境工学試験施設の建設・整備を進めるとともに、調査の実施主体として、サイト特性調査技術の開発を推進するものとする。また、第3段階以降に必要となる技術についても、着実に研究開発を進めていくものとする。

(2)日本原子力研究所は、動力炉・核燃料開発事業団が行う開発プロジェクトと密接な連繋を保ちつつ、国が行う地層処分の安全性の評価に資するための研究を進めるとともに、必要な体制整備等を行って、核種移行に係るデータ・ベースの整備等の基礎研究を担うものとする。また、長期的観点に立って、将来技術・新技術についての研究を実施するものとする。

(3)地質調査所、国立防災科学技術センター等の国立試験研究機関は、動力炉・核燃料開発事業団又は日本原子力研究所との連繋を保ちつつ、それぞれ専門的知見を生かした研究を実施していくものとする。

3.民間及び大学との関係
 電力中央研究所等の民間及び大学においても、地層処分に関する研究が実施されているが、我が国における地層処分技術全般の水準の向上を図る観点からも、民間及び大学における研究が一層積極的に進められることを期待する。特に、大学における研究は、地層処分に係る人材育成及び新しいアイデアの発掘の観点から重要である。

 国の研究開発機関は、このような民間及び大学の研究活動とも十分な連繋を図るものとし、特に、動力炉・核燃料開発事業団は、電気事業者、鉱山会社、土木・建設会社等の民間の協力を得るとともに、その技術力を十分に活用しつつ、開発プロジェクトを進めていくものとする。

  Ⅲ.研究開発課題

〔研究開発課題総表〕
1.地層処分の長期的信頼性に関する基本的な考え方の検討

2.地層処分システムの開発
① 地層処分システムの設計研究
② 人工バリア・システムの開発
③ 処分施設の建設・操業・閉鎖技術の開発
④ 地層処分システムの経済性評価
3.サイト特性調査技術の開発

4.地層処分の安全性評価のための試験研究
① 地層処分システムの総合安全性評価手法の開発
② 各バリアの性能評価に関する研究
5.地層処分に関する基盤的試験研究
① 地層処分の安全性及び信頼性に関する基礎的な試験研究
② 核種の移行特性に関する研究
③ 我が国の地質環境特性に関する研究
6.関連技術に関する試験研究
① TRU廃棄物の処分に関する研究
② 高レベル放射性廃棄物の核種分離技術、核種変換技術等に関する研究
③ 海洋底下処分技術の研究
④ 新固化技術の研究
1.地層処分の長期的信頼性に関する基本的な考え方の検討

1) 研究目的
 地層処分システムの長期的な信頼性に関する基本的な考え方を確立するため、これに必要な検討を行う。

2)研究内容
(i)人工バリア及び天然バリアより成る地層処分システムの放射性物質に対する隔離機能の有効性及び長期安定性について検討する。

(ii)長期的不確実性事象の取扱に関する調査等を行うとともに、安全裕度の確保に関する基本的な考え方について検討する。

(iii)制度的管理の継続性、管理期間と社会的受容との関係等について検討する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)研究機関
 科学技術庁

2.地層処分システムの開発

2-① 地層処分システムの設計研究
1)研究目的
 我が国における地層処分システムの設計研究を行う。

2)研究内容
(i)放射性核種のガラス固化体からの漏出、ニア・フィールド/ファー・フィールド/生物圏における核種移行、地下水の浸入、熱・放射線による緩衝材の変質及び化学的雰囲気の変化による核種の溶解性の変化等を評価し、地層処分システムの総合的な性能評価技術の開発を行い、地層処分システムの設計に資する。

(ii)地層処分システムに対し堀削、地下水、地震動、熱応力等が及ぼす影響及び埋め戻し材の放射性核種収着特性に配慮しつつ、いくつかの地質環境条件に対応した処分施設の概念設計を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)研究機関
 動力炉・核燃料開発事業団

2-② 人工バリア・システムの開発
1)研究目的
 人工バリア・システムの核種隔離性能を評価しつつ、適切な人工バリア・システムを開発する。

2)研究内容
(i)固化体パッケージ/緩衝材/岩石/地下水の複合系における核種の移行特性を解明し、各種の地質環境条件に応じた人工バリア・システムの核種隔離性能を評価し、固化体パッケージ、緩衝材等の核種隔離性能の目標を設定する。

(ii)上記の性能目標を達成するための人工バリア材の開発を行う。また、これらの人工バリア材を用いた人工バリア・システムの設計・施工技術の開発を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)研究機関
 動力炉・核燃料開発事業団

2-③ 処分施設の建設・操業・閉鎖技術の開発
1)研究目的
 処分施設の建設・操業・閉鎖に必要な堀削、止水、埋め戻し、モニタリング等の技術を開発する。

2)研究内容
(i)処分施設の収納岩体への損傷を最小限に止めるための発破掘削技術、機械堀削技術等を開発する。

(ii)処分施設周辺における水理特性改良技術、割れ目の充てん技術、グラウト工法等について、材料等を開発するとともに、その施工技術の開発を行う。

(iii)シール材及びプラグ材について、材料等を開発するとともに、その施工技術の開発を行う。

(iv)地層処分システムに適合したモニタリングの考え方を検討し、この考え方に基づいたモニタリング・システムを開発する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 動力炉・核燃料開発事業団

2-④ 地層処分システムの経済性評価
1)研究目的
 地層処分システムの建設・操業・閉鎖の経済性を評価する。

2)研究内容
(i)処分する廃棄物の量及び処分場の規模に関して、地層のタイプ、処分場の建設手順等を考慮したコスト評価を行う。

(ii)輸送に関して、その手段、回数、距離等の業務面及び輸送容器等の技術面をコストとの関連に於いて評価する。

(iii)処分場の地上施設及び地下施設の建設、処分トンネル及びピットの開削・埋め戻し、廃棄物の搬入手段、立坑の埋め戻し等に関して、地層のタイプ、深さ等の条件を考慮したコスト評価を行う。

3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 動力炉・核燃料開発事業団
(日本原子力研究所及び電力中央研究所の協力を得る。)

3.サイト特性調査技術の開発

1)研究目的
 具体的な調査地点における現地調査を適確かつ効率的に行うため、深部地質環境の調査技術及び評価技術の開発を行う。

2)研究内容
(i)地質環境の特性把握に必要なクロスホール調査機器等を開発する。

(ii)広域にわたる深地層の特性を効率良く評価するための技術を開発する。

(iii)クロスホール調査、浸透性調査、核種収着性調査、深部地下水の地球化学的調査、熱的・力学的特性調査等に係る技術を体系化し、サイト特性調査技術として確立する。

(iv)地層の長期的挙動の評価、調査密度と精度の関係等について研究する。

(v)処分予定地としての適性を分析するためのサイト評価システムを開発する。

(vi)自然的、社会的及び経済的な観点から総合的に処分予定地を選定するためのデータ・ベースを整備する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 動力炉・核燃料開発事業団

4.地層処分の安全性評価のための試験研究

4-① 地層処分システムの総合安全性評価手法の開発
1)研究目的
 地層処分システムの安全性を総合的に評価するための考え方を確立し、総合安全性評価手法を開発する。

2)研究内容
(i)固化体パッケージの地下への搬入から処分施設の閉鎖までの処分場操業時の想定事故を摘出し、それらを対象とした安全解析手法を開発する。

(ii)処分施設閉鎖後の時間経過に対応した漏出シナリオを作成し、固化体パッケージから生物圏までの核種移行挙動も考慮して、環境への影響を被曝線量として評価する手法を開発する。また、評価に必要なパラメータの収集・整理を行い、不確かさを伴うパラメータ及び変動の予想されるパラメータについて、確率論的に取り扱うことのできる評価手法を開発する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所

4-② 各バリアの性能評価に関する研究
1)研究目的
 人工バリア及び天然バリアのそれぞれについて、バリアの安定性、核種の閉じ込め性能等を明らかにするとともに、それらの評価手法を開発する。

2)研究内容
(i)放射線、熱、地下水特性、共存物質等がガラス固化体、固化体パッケージ、緩衝材等の人工バリアに及ぼす影響に関する研究を行う。また、ガラス固化体の長期耐放射線性を明らかにするため、アルファ加速試験等を行う。これらの結果に基づき、人工バリアの核種閉じ込め性能、耐久性等に関する評価手法を開発する。

(ii)地下水の移動、岩石中への核種拡散、地球化学的反応による核種沈着等の複合現象が放射性核種の移行に及ぼす影響を明らかにし、天然バリアの核種閉じ込め性能に関する評価手法を開発する。特に、地下水については、地下水圧、透水特性、地形データ等を入力データとして地下水の動きを評価する計算コードを開発する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所

5.地層処分に関する基盤的試験研究

5-① 地層処分の安全性及び信頼性に関する基礎的な試験研究
1)研究目的
 地層処分システムの長期的な安全性及び信頼性に関する基礎的な試験研究を行い、その基本的な考え方の確立に資する。

2)研究内容
(i)断層運動、地震活動等を考慮しつつ、地質環境の長期的安定性に関する研究を行う。また、地質環境の長期的な変化が地下水理及び地球化学的特性に及ぼす影響について研究する。

(ii)模擬キャニスタの加熱試験等による周辺岩盤の割れ目の変化、熱拡散等の試験を行う。

(iii)深部岩盤の開削による応力状態の変化、長期的変形等を調査するためのフィールド実験を行う。また、変化量をモニタリングする技術を開発する。

(iv)ナチュラル・アナログの研究として、天然ガラス等の安定性及び浸出現象を研究し、ガラスの安定性を評価するとともに、歴史出土品の腐食、粘土鉱物の変質とその母層の年代等について調査し、人工バリアの安定性を評価する。また、ウラン鉱床等に起因する核種の地層中での沈着・移行状況等を調査し、天然バリア中における長期の核種移行を評価する。

(v)地質環境条件下における人工バリア材の耐食性等に関する研究を行う。

(vi)水と岩石の相互作用に関する実験岩石学的研究及び地質環境の地球科学的調査研究を行い、天然バリアの長期的な核種隔離性について研究する。

(vii)深地層中の微生物が地層処分システムの性能等に及ぼす影響について調査する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所
 動力炉・核燃料開発事業団
 国立防災科学技術センター
 金属材料技術研究所
 無機材質研究所
 地質調査所
 公害資源研究所

5-② 核種の移行特性に関する研究
1)研究目的
 人工バリア及び天然バリアの中での核種移行に係るデータ・ベースの整備等を行い、核種移行特性の評価に資する。

2)研究内容
(i)核種の深地層地下水中での溶解度、化学形等に関する研究を行い、国際協力も活用しつつ、熱力学的定数の収集、整理を行う。

(ii)核種移行特性に関するデータを取得するため、原位置において、水文・核種移行のコールド試験等を行う。また、カナダ等との国際協力により、放射性核種を用いた原位置試験を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所

5-③ 我が国の地質環境特性に関する研究
1)研究目的
 地層処分の観点からみた我が国の地質環境の地質的特性、水理地質的特性、地球化学的特性等を明らかにする。

2)研究内容
(i)放射性核種の閉じ込め性からみた地質的、水理地質的、地球化学的特性等に関する研究を行う。

(ii)長期にわたる地質環境特性の変化に関する研究を行う。

(iii)地層中地下水の起源、分布状況、化学的特性、移動機構等に関する研究を行う。

(iv)国内における鉱山活動、トンネル工事、地下水力発電所の建設工事等の経験から得られた知見について、その収集・解析を行う。

(v)以上の成果に基づき、我が国の地質環境データ・ペースを整備する。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 動力炉・核燃料開発事業団
(日本原子力研究所、地質調査所、電力中央研究所等の協力を得る。)

6.関連技術に関する試験研究

6-① TRU廃棄物の処分に関する研究
1)研究目的
 TRU廃棄物の処分に関する調査研究を行い、TRU廃棄物処分システムの確立に資する。

2)研究内容
(i)セメント、ビチューメン、セラミック等の固化体からの核種の浸出特性及びこれら固化体の安定性に関する試験を行う。

(ii)TRU核種を含む廃棄物の特性に応じた幾つかの処分方法を設定し、総合的な検討を行い、処分の観点からTRU核種を含む廃棄物の区分の考え方を整理する。

(iii)高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究と共通あるいは類似のものについては、相互にその成果を活用しつつ、浸出したTRU核種の人工バリア及び天然バリア内での移行挙動に関する研究を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実務機関
 動力炉・核燃料開発事業団
 日本原子力研究所

6-② 高レベル放射性廃棄物の核種分離技術、核種変換技術等に関する研究
1)研究目的
 高レベル放射性廃棄物に含まれる有用核種等を分離し、それぞれの特性に応じた利用技術の開発及び核種変換技術の開発を行う ことにより、高レベル放射性廃棄物の処理処分の安全性と効率性の向上、資源の有効利用等に資する。

2)研究内容
(i)核種分離技術及び有効利用技術に関する研究開発
イ)高レベル放射性廃液及び再処理不溶解残渣から超ウラン元素、Sr-90、Tc-99、Cs-137、貴金属元素等を分離する技術の研究開発を行う。

ロ)群分離によって得られる各群から有用元素を単離精製し処理するための研究開発及び有用元素の利用システムの研究開発を行う。

ハ)群分離後の廃棄物及び有効利用後の廃棄物の処理処分技術の研究開発を行う。
(ii)核種変換技術に関する研究開発
イ)超ウラン元素を消滅させる方法として、高速中性子による核分裂反応を利用する技術及び高エネルギー陽子による核破砕反応を利用する技術の研究開発を行う。

ロ)Sr-90、Cs-137等をガンマ線で核種変換させる技術の研究開発を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所
 動力炉・核燃料開発事業団

6-③ 海洋底下処分技術の研究
1)研究目的
 深海底堆積物中に高レベル放射性廃棄物を処分する海洋底下処分技術の可能性を評価する。

2)研究内容
 地層処分技術の代替法として、放射性核種の吸着性が高く、水の動きの少ない深海堆積物中に処分する方法の研究を実施する。

 OECD/NEAを通じた国際協力に参加し、情報交換を行うとともに、共同実験に参加し、堆積物の閉じ込め性の研究、容器材料の性能評価等、地層処分に関する研究の延長として実施できる研究を行う。

3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所

6-④ 新固化技術の研究
1)研究目的
 ホウケイ酸ガラス固化以外の有望な高レベル放射性廃液固化技術について、実用化の可能性を評価する。

2)研究内容
(i)シンロック固化法については、オーストラリアとの協力により、ホット固化体の特性試験、処理法に関する基礎研究等を行う。

(ii)ジルコニア固化法等のその他の新固化技術の基礎研究を行う。
3)研究期間
 昭和62年度~昭和66年度

4)実施機関
 日本原子力研究所


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