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資料

総合エネルギー調査会原子力部会報告

原子力ビジョンについて

1986年7月
資源エネルギー庁



1.7月18日、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会の原子力部会(会長 山下 勇氏、経団連評議員会議長)から、「原子力ビジョン」(-21世紀の原子力を考える-)と題する報告書が提出された。

2.同報告書は、原子力と石油、石炭、天然ガスとの”エネルギー競争の激化”に伴い2030年までの45年間について、安全確保を大前提として、原子力発電の見通しを想定し、我が国の炉型戦略と核燃料サイクル戦略を策定するとともに、技術開発、人材の育成、原子力産業の活性化等について、政策提言を行っている。

3.同報告書は、昨年秋から約1年間にわたる関係者の精力的な検討によりとりまとめられた。

4.通産省は、今後、同報告書の提言の実現に向かって努力する方針。

原子力ビジョンのアウトライン

1.安全第一の再確認
 「安全性高度化計画-セイフティ21-」の推進(国による規制や事業者による保安の充実、技術開発、緊急時対応等)

2.原子力のシェアは増加(石油代替エネルギーの中核)
1985 2010 2030 (年)
(1)原子力発電規模  2,452 →  8,700 →   13,700 (万kW)
(2)原子力発電量比率  26 →  49 →  58 (%)(kWhペース)
   (注)数値はケース1の場合

3.炉型戦略と核燃料サイクル戦略の整合性をとること。
 (1)軽水炉時代の長期化
   (2030年にFBRのシェアは5%)
 (2)核燃料サイクルの自立が課題
   (濃縮、再処理、廃棄物)

4.原子力産業の将来
 2030年までの45年間の売り上げは約180兆円。その内、発電所の建設約50兆円、管理・保修約60兆円、核燃料サイクル約70兆円。

5.技術開発と人材の育成
 (1)民間活力の導入をめざした新しい技術開発体制の再構築
 (2)研究者、技術者とともに運転員、保修員の確保と資質向上が重要。
   (1985年 5万人 → 2030年 17万人)

6.立地の推進
 (1)地域振興に努力
 (2)立地地点の確保

7.国際化
 (1)平和利用の国際センターをめざす。
 (2)国際的パブリック・アクセプタンスの確立

(参考)原子力の現状
1.我が国の原子力発電
①1986年7月現在 32基 2,452万kW
(米7,784万kW、仏3,753万kW、ソ連2,776万kWについで世界第4位)

②1985年度 全発電電力量のうち原子力の割合は26%(石油火力の割合25%を上回る)1985年度 設備利用率76%(過去最高)

2.原子力の占めるウェイト
  (出典:総合エネルギー調査会需給部会見通し 昭和58年11月16日)
1985年度
(実績)
1990年度 1995年度 2000年度
原子力発電規模 2,452万kW 3,400万kW 4,800万kW 6,200万kW
一次エネルギーに占める割合 10% 11% 14% 16%
電力供給に占める割合 26% 28% 35% 39%

3.安全対策の現状
① 設備利用率は近年70%以上と高水準で推移。
② 周辺住民の被ばくは、法定の年間許容被ぼく線量(500ミリレム/年)を大幅に下回る。
③ 原子炉の緊急停止(スクラム)回数は、1炉年当たり1件以下と、先進国の中でも極めて低い。

4.軽水炉の高度化
 原子力部会報告書「21世紀への軽水炉技術高度化戦略」に沿って推進。
① 既存型軽水炉 今後5~10年の間に技術開発し、成果は現在の軽水炉へいかしていく。
② 新型軽水炉 1990年代中頃の運転開始を目途に開発。
③ 次世代型軽水炉 2005年頃の導入開始を目途に開発。

5.新型炉の導入

6.核燃料サイクル
① ウラン濃縮
・現在、米、仏に濃縮役務を委託。
・日本原燃産業(株)が1991年操業開始を目途に、商業工場(1,500tSWU/年)を建設準備中。
② 再処理
・現在、英、仏に再処理役務を委託しており、一部は動燃東海工場で再処理を実施。
・日本原燃サービス(株)が1995年再処理操業開始を目途に商業工場(800tU/年)を建設準備中。
③ 低レベル放射性廃棄物
・現在、発電所等で貯蔵中。
・日本原燃産業(株)が1991年操業開始を目途に貯蔵施設(貯蔵規模200リットルドラム缶100万本)を建設準備中。
(注)1.100万kWの軽水炉が1年間に必要とする濃縮役務量は約120tSWU、1年間に発生する使用済燃料は約25tU。
(注)2.我が国国内で1年間に発生する低レベル放射性廃棄物は約5万本。
7.技術開発
① 技術開発資金(1984年度)3,700億円(民間1,100億円、電特多様化勘定900億円、一般会計700億円)
② 研究者数(1984年度)8,200人(民間3,000人、国5,200人)

8.原子力産業
① 1985年の関連産業市場は1兆6千億円。
② 現在世界の軽水炉プラント・メーカーは11社。濃縮は4社。再処理は2社。


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