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日本原子力船研究開発事業団の統合について 昭和58年12月23日
原子力委員会
当委員会は、日本原子力船研究開発事業団(以下、「事業団」という。)の統合問題について昭和54年12月27日、その見解を述べたところであるが、事業団法上、昭和60年3月31日までに事業団を他の原子力関係機関と統合することが求められていることにかんがみ、同問題について検討を行うため、当委員会の中に原子力船懇談会を設置し、幅広く検討を行った。同懇談会の検討結果を取りまとめた報告書を基に、更に、関係法人等からの意見聴取を行いつつ、慎重に審議した結果、以下の理由により、事業団は日本原子力研究所(以下、「原研」という。)と統合することが適当であると判断する。 1. 原子力船の実用化時期は21世紀に入ってからとみられることから、実用化を急ぐよりも段階的、着実に研究開発を進め、必要が生じた時点で適切な対応ができるよう、技術、知見、経験等の集積に努めておくことが重要である。従って、原子力分野において、長期的観点から基礎的研究を含め、幅広く研究開発を進めている原研が適当である。 2. 原研は、研究炉JRR−4を利用した実験等「むつ」開発に側面から協力してきた実積がある。また、原研は事業団の発足以来、研究者を派遣する等人的な面でも事業団に協力してきている。更に原研には「むつ」の開発を進める上で有効な軽水炉に係る安全性研究等原子力の基礎から応用にわたる幅広い技術基盤がある。 「むつ」の開発を進めるに当たっては、慎重な配慮の下に、技術的に万全の体制で臨む必要があるので、以上のような「むつ」に関連する技術的経験、実積のある原研が適当である。 3. 原研は、我が国初の軽水炉の発電炉JPDRの建設、運転や軽水炉に係る燃料、材料等の諸研究の豊富な実績を有し、これらの全体的能力を幅広く活用しつつ船舶用原子炉(以下、「舶用炉」という。)の研究を行うのに適している。 また、舶用炉は小型軽水炉であり、その研究の成果は、陸上での小型動力炉の利用の促進への寄与等種々の波及効果をもたらす可能性もあり、この観点からも幅広く研究を実施している原研が適当である。 なお、統合に当たっては、原子力船研究開発業務の円滑な移行という点には十分配慮しつつも、原研の原子力に係る諸般の研究成果、経験等が有機的、効果的に活用されるよう、組織、業務運営の方法に配慮することが極めて重要である。また、円滑な統合という見
地から、事業団は、統合までの間に「むつ」に係る諸懸案事項の解決に最善を尽すべきであると考える。 本統合により、我が国の原子力船研究開発が、より確固たる体制の下で推進されていくことを期待する。 |
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