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原子力モニターの声(昭和57年度) 昭和58年10月
振興局
原子力局
原子力安全局
原子力モニター制度は、原子力開発利用に関して、広く一般国民から率直な意見等を聴取し、これらを原子力行政に反映させることを目的とするものである。 昭和57年度の原子力モニターは、昭和56年度に委嘱した者のうちから、本人の同意を得た416名について引き続き委嘱を行った。昭和58年3月に実施したアンケート調査及び昭和57年度中に寄せられた随時報告の概要は以下のとおりである。 Ⅰ アンケート調査 1. 調査の概要
(参考)男女別、職業別、年代別モニター数及び回答者数
(注) この報告で使われる記号の説明
1.Nは比率算出の基数であり、100%が何人の回答に相当するかを示す。特に示していない場合はN=314人(回答者)である。 2.SQ(追加質問):前問で特定の回答をした一部の回答者に対して行った質問。 3.MA(多数回答):1回答者が2以上の回答をすることができる質問、このときのMT(回答合計)は回答者数(100%)を越える。 2.調査結果の概要
(1) エネルギーの将来について
石油に代わるエネルギー供給源として、今世紀内で原子力が一番多く利用されると考えている者が80%、21世紀では原子力が利用されるとする者が78%あり、石油代替エネルギーとして原子力の期待が大きいことを示している。(MA)
(2) 原子力の開発について
① 原子力発電所の建設について
原子力発電所の建設については、56%の者が「安全性を十分確認しながら慎重に建設すべきである」と考えており、次いで33%の者が「安全性を確認しながら積極的に建設すべきである」と考えており、これらに「安全性は確立しているので積極的に建設すべきである」とする者3%を併せると原子力発電所の建設の必要性を認める者は91%となっている。 ② 原子力発電の経済性について
原子力発電が他の電源と比較して経済性に優れていることを81%の者が知っており、原子力発電の経済性に対する関心が高いことを示している。 ③ 原子力発電所の立地推進について
原子力発電施設の立地が難航している理由として、75%の者が「安全性に不安があるから」としており、次いで16%の者が「放射性廃棄物の処理処分に不安があるから」としている。また、この立地難の有効な解決策としては、50%の者が「原子力発電所の安全運転の実績をさらに積み上げる」ことと考えており、49%の者が「安全性及び安全対策、防災対策等について地元で一層ていねいに説明する」ことと考えている。(MA)
その他、原子力発電所の立地推進について、地元住民に対する巾広い広報活動の展開を求める意見等が寄せられた。(MA)
④ 核燃料サイクルについて
(ⅰ) ウラン濃縮について
今後我が国が必要とする濃縮ウランをどのようにして賄うべきかについて、78%の者が「できるだけ国産化を進めるべきである」と考えており、その理由としてこのうち48%の者が「より安定した供給を確保するため」とし、また34%の者が「ウラン濃縮事業の育成など我が国の原子力産業の振興に資するため」としている。一方12%の者が「将来とも濃縮ウランは輸入により賄うべきである」と考えており、その理由としてこのうち37%の者が「輸入によっても十分安定供給が可能であるため」とし、同じく37%の者が「技術開発等に多額の資金を要するため」としている。 (ⅱ) 使用済燃料の再処理について
原子力発電所からの使用済燃料の再処理を円滑に行っていくには84%の者が「将来は国内で再処理すべく、国内再処理事業の確立を図っていくべきである」と考えており、その理由として、このうち62%の者が「海外の事情による影響を受けずに、安定的に再処理を行えるため」とし、20%の者が「我が国の原子力産業の振興に資するため」としている。一方11%の者が現状どおり、海外への再処理委託を進めるべきである」と考えており、その理由としてこれらの者の97%の者が「海外への委託によっても十分再処理需要を満たすことが可能であるため」とし、59%の者が「再処理事業の確立を図るには多額の資金を要するため」としている。(MA)
(ⅲ) 低レベル放射性廃棄物の処理・処分について
低レベル放射性廃棄物の最終的処分はどうあるべきかについて33%の者が「内外の関係者の理解を得て、海洋処分を推進すべきである」と考えており、次いで23%の者が「海洋処分及び陸地処分を同時に推進すべきである。」と考えている。(MA)その他、放射性廃棄物の放射能の消滅処理に関する研究の推進を求める意見等が寄せられた。 (3) 原子力安全行政について
① 立地問題、安全問題についての施策
原子力をめぐる立地問題、安全問題について政府の施策のうち最も重要と考えられるものについては、31%の者が「国民に正しい知識を与え、国民の理解を得ていくための施策」としており、次いで23%の者が「安全性、信頼性等に関する研究開発の推進」としている。 ② 原子力安全委員会の再審査についての認識
原子力発電所の設置許可に当たり、原子力安全委員会が再審査(ダブル・チェック)していることについては71%の者が「知っている」としており、このうち74%の者が再審査は「機能している」と考えている。 ③ 原子力安全委員会について
原子力安全委員会の機能のうち最も期待していることとしては、40%の者が「行政部局の行った安全審査を、より高度な立場からダブル・チェックすること」としており、次いで27%の者が「安全審査に当たり、公開ヒアリングなどにより、地元住民等の意見を十分に安全行政に反映させること」としている。 ④ 原子力安全委員会の公開ヒアリングについて
原子力安全委員会の公開ヒアリングについては、地元に事情がある場合には、文書を併用した方式によっても住民の声を聞くことが出来る旨決定されたことを62%の者が「知っている」としている。このうち、42%の者がこの方式について「円滑な運営を確保するためにはやむ得ない」と考えており、15%の者が「妨害排除のためにはぜひ必要である」と考えている。一方、41%の者が「時間をかけても原則として対話形式をとるべき」としている。又、公開ヒアリングについて、「より十分議論ができるよう、より広く参加の機会を設け、より時間をかけてほしい」等の意見等が寄せられた。 ⑤ 原子力安全白書について
昭和56年10月に「原子力安全白書」創刊号が発表されたことについて60%の者が「知っている」としている。また、知っていると答えた者のうち、原子力安全白書を読んだ者は35%おり、「読みたい」とした32%の者を併せると67%の者が当白書に関心を示している。 ⑥ 我が国の原子力安全行政についての意見として、
「日頃から多くの機会をとらえて、積極的にPRし広く理解を求めていくことが大切。」などの意見が多く寄せられた。 (4)原子力広報について
① 「原子力の日」に関する広報や記事について
(ⅰ) 「原子力の日」の前後に、政府などによる広報を見た者は78%となっている。また、その中で86%の者が「政府による広報」に接し、次いで55%の者が「電力会社による広報」に接している(MA)
これらの広報媒体としては、85%の者が「新聞」、次いで67%の者が「パンフレット」、61%の者が「テレビ」を通じて接している。(MA)
なお、「原子力の日」に関連した記事については、71%の者が「見た」としている。 (ⅱ) パンフレット「原子力発電の安全性」について78%の者が「読んだ」としている。 なお、このパンフレットについての感想、意見としては
◎ わかりやすく、大変理解を深めた。
◎ 立地地域等へ広く配布されたい。
などの意見が寄せられた。 (ⅲ) また、原子力について特に詳しく知りたいこととして、45%の者が「原子力の長期展望」を、次いで43%の者が「放射性廃棄物の処理処分対策」を、22%の者が「原子力発電所の安全対策」をあげている。(MA)
(ⅳ) 原子力広報についての意見としては
◎ テレビ等により、安全性についてわかりやすいPRを推進する。
◎ 親しみのもてる、心に残る広報を願う。
◎ 老人、子供にも理解できる広報への努力をされたい。
◎ 根気よく広報を実施する。
◎ テレビの放映時間帯の一層の配慮・工夫をされたい
などが多く寄せられた。 3. 集計結果
問1. エネルギーの将来について
1. あなたは石油に代わる大量のエネルギー供給源として、今世紀内はどのようなエネルギーが一番多く利用されると思いますか。
2. 長期的観点から、石油に代わるエネルギー源として21世紀にはどのようなエネルギーが利用されると思いますか。(MA)
問2. 原子力の開発について
1.わが国の原子力発電の規模については、現在の約1,718万KW(全発電設備の約12%、全発電量の約17%)から、さらに拡大する目標が立てられています。あなたは、原子力発電所の建設についてどのようにお考えですか。
2.原子力発電の経済性について
試算によると、昭和57年度運転開始のプラントの1キロワット時当りの発電原価は石炭火力が約15円、LNG火力、石油火力が約19円~20円であるのに対し、原子力発電は約12円となっています。あなたは、このように原子力発電が他の電源と比較して経済性において優れていることを御存知ですか。
3.原子力発電の立地推進について
(1) 原子力発電施設等の立地に際しては、必ずしも地元住民の協力が得られず立地が難航する面があります。その理由は、次のうちどれが最も大きく影響していると思いますか。(MA)
(2) これらの立地難を解決するには、どのような方策が最も有効であるとお考えですか。(MA)
(3) その他御意見がありましたらお書き下さい。 (回答者数99名)
4.核燃料サイクルについて
(1) 我が国は現在、原子力発電所の運転に必要な濃縮ウランをほとんど海外から輸入していますが、今後我が国が必要とする濃縮ウランをどのようにしたらよいとお考えですか。
SQ.〔対象者246名〕
(ⅰ) 前記の問(1)で「
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SQ.〔対象者38名〕
(ⅱ) 前記の問(1)で「
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SQ.〔対象者7名〕
(ⅲ) 前記の問(1)で、「その他」と答えた方にお尋ねします。あなたがそうお考えになる理由をお書き下さい。
(回答者数7名)
(2) 我が国では原子力発電所で運転に使用された使用済燃料の再処理については、一部は動力炉・核燃料開発事業団の工場で処理していますが、大部分は海外に委託しています。今後我が国の使用済燃料の再処理を円滑に行っていくには、どのようにしたらよいとお考えですか。
SQ.〔対象者263名〕
(ⅰ) 前記の問(2)で「
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SQ.〔対象者34名〕
(ⅱ) 前記の問(2)で「
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(3) 低レベル放射性廃棄物は、現在適切な処理を施した後、施設内に安全に貯蔵されていますが、最終的には処分されることになります。その方法としては陸地への処分及び海洋への処分が考えられます。あなたはこのことについてどうあるべきとお考えですか。(MA)
(4) その他御意見がありましたらお書き下さい。 (回答者数94名)
問3 原子力安全行政について
1.近年、原子力をめぐって、特に立地問題、安全問題等については、国民の理解を得ることが不可決の課題となっており、政府としては、現在次のようないろいろな施策を講じています。あなたは、このうち、どれが最も重要であるとお考えになりますか。
2.原子力発電所の安全規制については、通商産業省が、設置許可から運転管理に至るまで、一貫して規制を行うこととなっており、通商産業省が行う設置許可等に関する安全審査について、内閣総理大臣の諮問機関である原子力安全委員会が最新の科学技術的知見に基づいて客観的立場から再審査(ダブル・チェック)する体制になっています。 (1) あなたはこのような体制を御存知ですか。
SQ.「知っている」と答えた方に〔対象者224名〕
(ⅰ) あなたはこのような体制について、どのようにお考えですか。
3.原子力安全委員会は次の5つの機能を有していますが、あなたはこの中のどれに最も期待していますか。(MA)
4.原子力安全委員会の公開ヒアリングについて
(1) 原子力安全委員会は、57年11月に、公開ヒアリングについて、従来の対話形式の方法を原則とするが、地元に事情がある場合には、文書を併用した方式によっても住民の声を聞くことができる旨の決定をしましたが、あなたは、このことを御存知ですか。
SQ.「知っている」と答えた方に〔対象者196名〕
(2) あなたは文書方式の併用についてどのようにお考えですか。
(3) 公開ヒアリングについて、何か御意見、御提言がありましたらお書き下さい。 (回答者数120名)
5.原子力安全白書について
原子力安全委員会は、昭和53年設置以来、我が国の原子力安全規制行政の「かなめ」ともいえる立場で、国民の健康と安全を護るという観点から安全確保のための諸施策を実施していますが、これらの諸活動の記録をとりまとめて昭和56年10月に「原子力安全白書」創刊号を発表しています。 (ⅰ) あなたは、このことについて御存知ですか。
SQ.知っていると答えた方に〔対象者188名〕
(ⅱ) あなたは、「原子力安全白書」をお読みなったでしょうか。
6.我が国の原子力安全行政について、何か御意見、御提言等がありましたらお書き下さい。 (回答者数90名)
問4. 原子力広報について
1.原子力の日に関する広報について
(1) 今年度の「原子力の日」の前後に政府などによる広報を御覧になりましたか。
SQ.御覧になられた方に〔対象者244名〕
(ⅰ) どこの広報を御覧になりましたか。(M.A)
御覧になったものすべてに○印を御記入下さい。
(ⅱ) また、その広報は何で御覧になりましたか。(MA)
(2) 「原子力の日」に関連した記事は御覧になりましたか。
2.ところで、先にお送りいたしましたパンフレット「原子力発電の安全性」はお読みいただけましたでしょうか。
3.前記のパンフレットについて、御感想、御意見等がありましたらお書き下さい。 (回答者数124名)
4.あなたは、原子力について、特にどのようなことを詳しくお知りになりたいですか。(MA)
5.その他詳しくお知りになりたいことがありましたらお書き下さい。 (回答者数43名)
6.原子力広報については、さらに国民の理解を得るため、今後一層の拡充・強化を進めていきますが、何か御意見、御提言がありましたらお書き下さい。 (回答者数158名)
Ⅱ 随時報告 1. 意見の内訳
昭和57年度に原子力モニターから寄せられた随時報告の件数は74件であり、これを事項別にみると、原子力広報についての意見が31件と最も多く、次いで原子力開発利用についての意見が16件、原子力行政についての意見が12件などとなっている。(表1参照)
職業別の報告件数をみると主婦等が28件と最も多く、次いで商工・サービス業が15件などとなっている。(表2参照)
また、年代別の報告件数では、60代が25件と最も多く、次いで40代が14件などとなっている。(表3参照)
男女別の報告件数をみると、男性が40件、女性が34件となっている。(表4参照)
2. 意見の概要
(1) 原子力広報に関しては「これまでの幅広い広報活動のお蔭で難しい原子力について理解できるようになった。」「原子力に頼らざるを得ない日本、原子力の必要性について積極的に広報されたい。」「人々は既に現在原子力発電によって恩恵受けていることを、広く知らせていただきたい。」などの原子力の必要性についてより一層の広報を求める意見が多く、「百聞は一見に如かず、多くの人に原子力発電所等の見学の機会をつくってほしい。」「テレビ放映は有効なので、多くの人に見られるよう放映時間帯等について、一層工夫されたい。」などの意見も見られた。 (2) 原子力開発利用に関しては、「今後とも平和目的に限定した原子力開発利用を進めていただきたい。」「原子力によって地域暖房等を行うなど多目的利用を推進する。」「社会・経済の発展のためには、原子力エネルギーの安定確保がぜひ必要と考える。」など、原子力開発利用の必要性及び推進を訴える意見が多かった。また、「原子力船むつの必要性、安全性について、国民にわかり易く説明し、納得を得た上で開発を推進してほしい。」との意見が見られた。 (3) 原子力行政に関しては、「原子力発電等について国民がより安心するためにも、原子力安全委員会が行う公開ヒアリングに期待している。」「原子力発電所の安全運転の実績によってすべての国民を安心させてほしい。」など、より多くの国民の原子力に対する理解を得るため万全の安全確保を求める意見が多く、「原子力関連産業の育成・発展を図ってほしい」などの意見も見られた。 (4) 安全性・事故に関しては、「安全確保のためにぜひとも原子力発電所等に対する指導監督の強化を願う。」「原子力開発利用の安全を確保するため、一層の研究開発を進めてほしい。」との意見が見られた。 (5) 放射性廃棄物処理・処分に関しては、「処理・処分対策確立が急務となっているが、安全確保についてはとくに配慮されたい」などとの意見が見られた。 (6) 石油代替エネルギー開発に関しては、「太陽光・熱エネルギー開発を積極的に行っていただきたい。」との意見が見られた。 (7) その他の意見としては、ソ連の原子炉衛星コスモスの落下を機として「原子炉衛星は危険である。」「原子炉衛星の安全性について十分責任を持て」などの原子炉衛星を危惧する意見が見られた。 (参考) 報告の内訳
表1 事項別の内訳 ![]() 表2 職業別の内訳 ![]() 表3 年代別の内訳 ![]() 表4 男女別の内訳 ![]() Ⅲ 参考 昭和57年度原子力モニター構成 1. 職業別 ![]() 2. 年代別 ![]() 3. 男女別 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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