目次 | 次頁 |
国際原子力機関の二つの会議に出席して 原子力委員会委員長代理
向坊 隆
![]() 国際原子力機関(IAEA)は、設立二十五周年を記念して今年二つの企画を実行した。一つは第二十六回総会の前の週に五日間「原子力発電経験国際会議」を開催したこと、他の一つは総会第一日の午後にパネル討論会(原子力開発の現状と将来のエネルギー供給における原子力の役割)をブリックス事務総長自らの司会で開催したことである。 前者では原子力開発計画、原子力発電、核燃料サイクル、安全と規制、新型動力炉(FBRなど)、国際協力の七つの主題の下に合計二十八のセッションにおいて約三百編の論文発表があった。これには約六十カ国、十八国際機関から千人以上が参加したといわれている。我が国からはフランス、米国に次いで多い約七十名が参加し、五編の招待論文と十一編の応募論文が発表された。私は第一日の午後に「日本の原子力開発の歴史と今後の展望」という題で論文を発表した。 この会議のまとめは前IAEA事務局長エクルンド博士が行ったが、単なるまとめというよりは同氏の意見が相当強く出ていたように思われる。IAEA設立以来の二十五年間における世界の原子力開発の概観と、この中でのIAEAの役割については、同機関発行の季刊誌IAEA Bulletinの特別号(Supplement1982)に要領よくまとめられている。 日本から多数の専門家が出席しているので、私は第1日だけ出席し、翌日からフランスの主な原子力開発機関のうち、未訪問の四カ所を視察し、次の週、再びウィーンに戻って第二十六回総会の第1日のパネル討論に参加した。 私がこの二つの機会に述べたのは、日本の原子力開発の歴史と本年改訂された長期計画の概要で、経験会議では前者、パネル討論では後者に力点を置いて話した。 私は1957年の第一回総会にも日本代表国の一人として出席したので、二十五年を経た今、再び総会に出席する機会を得て感無量なものがあった。 世界における原子力平和利用の発展には目覚しいものがある。しかしながら、その発展の仕方は国の事情により著しく異なり、特に開発途上国が未だ殆んどその恩恵に浴していないことには考えさせられるものがある。また、核兵器が未だに捨て去られないどころか核軍縮すら一向に進展せず、核拡散の防止のみがIAEAの重大な問題となりつつある現状をどう考えればよいのだろうか、原子力の平和利用のための国際協力の推進を目標として設立されたIAEAが二十五周年を迎えた機会に、国際舞台で論ずるのは難しいかも知れないが、少くとも先進諸国においては、これらの問題に深く思いを致すべきではなかろうか。 |
目次 | 次頁 |