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新型転換炉について



前原子力委員会委員長代理
清成 



 原子力委員会が新型転換炉「ふげん」の経験を踏まえて、実証炉計画推進の基本方針を決められた。

 顧ると昭和42年に、原子力委員会が新型転換炉及び高速増殖炉を、さらに昭和47年にウラン濃縮技術の研究開発を国のプロジェクトとして自主開発することを決定実施されたのは、少資源国でしかも大工業国である我が国の所要エネルギー長期安定保障を企図した大決心であり、この様なことは我が国では初めてのことであった。究極の狙いは高速増殖炉にあるのは当然のことながら、高速増殖炉実用の時期は期待より大きく遅延する恐れなしとしない。欧米先進国はその様な場合にも、或いは石油石炭、或いは軽水炉等で、その間を持ちこたえて行けるかも知れないが、我が国に限っては前にも述べた通りその様な代替資源はなく、又核融合や太陽熱、地熱等のいわゆる新エネルギーは到底高速増殖炉より早く実用になるとは考えられない。そこで高速増殖炉迄とは行かないが、軽水炉で出来たプルトニウムを燃料として使用し得る重水型転換炉を先づ開発する。つまりプルトニウムの利用を第一段階と第二段階とに分けたのが、我が国原子力委員会のエネルギー長期安定保障の為の炉型戦略であった。この行き方が先頃IAEAのウィーンの会議で諸国からも評価されたのは結構であった。

 今や原型炉「ふげん」の経験により次の実証炉建設に進むわけであるが、世界のエネルギー事情は種々に変動する。その時その時の情勢に技術的にも経済的にも適合する様な、即ちそのまま実用になる様な実証炉を目標とすると、完成期限が非常に長びく恐れがある。私は実証炉は第1号だけを少しでも早く技術的に完成して置くことが最も肝要で、実用炉はその時の情況に応じて、それから何回かの研究開発試作を繰り返して初めて出来るものと思っている。今回原子力委員会が計画推進の基本方針で実証炉の発電原価に言及されていることは、今述べたことを明らかに意図されたものと考えられる。

 原子力委員会が長期エネルギー安定保障を考えて定められた原子力開発利用長期計画を、我が国の官界産業界が上述の趣旨であるとはっきり理解して、実証炉だけは目前の経済情勢等にとらわれず、方針通り邁進して欲しいものと念願する。




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