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原研における最近の話題


原子力委員会参与
(日本原子力研究所理事長)
藤波恒雄


 最近、日本原子力研究所において、核融合装置に用いる中性粒子入射加熱装置(NBI)と多目的高温ガス炉建設のための模擬原子炉とも言うべき大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)について大きな成功をおさめましたことは、それぞれについて本年3月31日と4月19日に新聞発表を行いましたので、既にご承知の方も多いことと存じます。(NBIはニュートラル・ビーム・インジェクターの略であり、HENDELはヘリウム・エンジニアリング・デモンストレーション・ループの略。)

 現在、原研は世界の4大核融合装置の1つである臨界プラズマ試験装置JT−60を昭和60年に完成すべく建設を進めているところでありますが、このJT−60に用いるNBIの原型装置で、今回、ビームエネルギー75キロ電子ボルト、ビーム強度70アンペア、パルス幅10秒という世界最高の性能を達成し、JT−60による臨界プラズマ条件の達成につき、さらに自信を深めた次第であります。もとより、核融合炉の開発にはNBI以外にも多くの技術開発が必要であり、それらも着々と進めているところであります。

 多目的高温ガス炉は冷却材にヘリウムガスを用い、高温になったヘリウムガスを製鉄や化学工業などの熱源として多目的に利用するものであります。HENDELは多目的高温ガス炉が目標としている高温高圧のヘリウムガス流を発生し、それを用いて多目的高温ガス炉の構造や材料の実証試験を行う大規模な装置であります。今回HENDELにおいて摂氏1000度、40気圧のヘリウムガスを毎秒4kgの流量で180時間連続に配管中を循環させたのは、これも世界最高の記録であります。今後HENDELを有効に活用することを中心として、関連の研究開発を進め、多目的高温ガス実験炉の早期建設着工を目標として、大いに努力する所存であります。

 この外にも例をあげますと、高レベル廃棄物の安全性試験を目的とする廃棄物安全試験施設(WASTEF)が試験運転を行っていること、燃料試験施設において使用済実用燃料の試験を順調に進めていること、原子炉解体技術の開発に着手していること等が比較的新しい話題であります。その他基礎研究等の分野も含めて、国際的にも注目されるような成果が増えて来ているのは喜ばしいことであります。

 原研では既に多国間及び二国あるいは三国間の多くの協力計画に参加しておりますが、原研の研究計画を見込んで新たな協力要請がいくつもよせられている現状であります。国際協力と申せば、保障措置技術開発やIAEAのRCA計画を中心とする開発途上国対策等における国の国際協力計画にも原研として応分の協力をさせて頂いております。原子力のような巨大科学における国際協力の重要性は改めて申すまでもありませんが、独自の研究開発成果を上げてゆくことが国際協力をより効果あるものにするという実感を深めているこの頃であります。

 原研の幅広い研究開発計画を進めるには、原子力委員会をはじめとする国の御指導はもとより、学界・産業界の多面的な御協力が必要であり、ここに日頃の感謝の意を表するとともに、今後一層の御協力をお願いする次第であります。


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