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太平洋地域拡大首脳会議への出席及びオーストラリア、ニュージーランド両政府との意見交換及び南太平洋諸国に対する説明について



昭和55年9月
原子力安全局

1. 太平洋地域拡大首脳会議

(1) 拡大首脳会議(8月14日、グァムにおいて開催)

議長カルボ・グァム知事
メンバーフアルコム・ポナペ州知事
カマチヨ・北マリアナ連邦知事
アテン・トラック州知事
ネナ・コスラエ州知事
タケリオル・ヤップ州知事
ゲストナカヤマ・ミクロネシア連邦大統領
ナカムラ・パラオ議会議長
デブルム・マーシャル諸島
chief secretary
ウィンケル信託統治領高等弁務官

(2) 我が方の対応
① 基本的考え方として強調した点

イ 日本の計画は放射性物質を海へたれ流そうというものではなく、深海底での隔離をねらっていること。

ロ 国際条約、国際基準を遵守し、NEAによる国際監視のもとで行われること。

ハ 安全評価により最悪の場合でも悪い影響はないことが確認されていること。


② 技術的に詳しい説明を行った点
イ 投棄サイトの選定
ロ 投棄物の安全性
ハ 安全評価
ニ 実施計画(時期)

(3) 会議の模様及び評価

① 午前中約2時間日本側よりpresentationを行い、午後2時間半質疑を行った。午前中は各国首脳とも日本のpresentationを熱心に聴取し、午後の質疑応答においても、安全性の問題を中心とする質問が数多く出され、事実関係の認識が重要であるという我が方の考え方が受けいれられて話し合いを進めようという雰囲気になっていたが、終わり近くになって北マリアナ・カマチヨ知事からかなり政治的な反対演説があり、結果的にこれがプレイアップされた。

② 日本の計画の内容についての理解はかなり進み、事実認識を得るため意見交換をしていくことが重要であるという認識は得られた。ただ、投棄海域に近い北マリアナやトラックを中心とするemotionalかっphilosophicalな反対をつきくずすには至らなかった。

③ 決議文では、我が方の説明が評価されたが、海洋投棄については条件付停止要求の形となった。また、漁業問題への言及は避けられた。

④ 行政府代表との会議のほか立法府の代表者とも質疑応答を行い、これらの人々の理解も進んだと考えられる。また、現地の新聞、TVによりかなり正確な報道が行われたことから事実関係の認識は深まったと考えられる。

(4) 決議文要旨

(前文要旨)
 漁業及び観光業は、太平洋地域を発展させる唯一の産業であるが、これらの産業は汚染のない海洋環境に全面的に依存している。

 日本政府の卓越した説明に大幅な考慮を払いつつも、日本の海洋投棄の計画は、絶対的安全を保証しえないものであると考える。

(決議内容)
一、海洋投棄に関する完全な安全性が相当の期間にわたって実証されるまで、投棄計画が停止されるよう要求する。

一、米国、日本は、太平洋の島に核廃棄物を貯蔵する研究を中止すること。

一、投棄と貯蔵を阻止するため必要なあらゆる法的手段を模索すること。

 2. オーストラリア及びニュージーランド政府との意見交換

(1) オーストラリア(8月19日)

 外務省原子力局ベンソン次官補ほか
 対日委、科学環境省、国家開発エネルギー省、AAECの担当者10名

(2) ニュージーランド(8月25日)

 外務省スチュワート副次官ほか
 原子力委員会、保健省、科学省、総理府、運輸省の担当者11名

(3) 我が方の対応

 南太平洋フォーラム(SPF)の場において日本の立場を支持してくれたことに謝意を表するとともに、首脳会議での我が方の対応及び会議の模様等を説明し、本件に関する意見交換を行うとともに今後の協力を要請した。

(4) 評価

 両政府とも我が国の計画について表立つてはサポートできないが、これが国際的ルールに則ったものであることを理解し、反対の立場にまわることはないことを確認した。この点については正式会談ののち、会食の機会等にさらに議論しかなり積極的に(背後から)支援してもらえる心証を得ている。なお、両国とも投棄後のモニタリングの重要性を強調したことが注目される。

 3. 南太平洋諸国に対する説明

(1) 西サモア(8月27日)

 外務省アーウィン次官、保健省タペニ次官ほか政府機関担当者5名


(2) フィジー(9月4日、5日)

 外務省カブアレブ南太平洋しょ国担当移動大使ほか外務省、内務省、海軍、陸軍等政府機関担当者9名
 南太平洋経済協力機関(SPEC)シェパード次長ほか2名
 南太平洋大学(USP)における本件討論会に参加、参加者約300名

(3) ソロモン諸島(9月8日)

 コローニ官房長官及びオツアナ外務次官代理

(4) パプアニューギニア(9月10日)

 保健省タヴイル次官補ほか外務貿易省、総理席、鉱物・エネルギー省、国防省、第1次産業省、環境・保全省、PNG大学、PNG工科大学等23名

(5) 我が方の対応

 説明に当たっては、太平洋地域拡大首脳会議での説明ぶりに準じて行った。なお、各地において出来うる限り、現地日本人及び報道関係者に対しても、本件内容の説明を行った。

(6) 評価

 いずれの会合においても、事前説明を評価する旨の発言がなされた。また、会合の場においては、いずれの政府関係者からも直接、本計画に反対する旨の発言はなかった。

 4. 今後の課題

首脳会議において、

① 日本としては最大限の説明をしていくことを約束したこと。

② 今回の説明によっても、依然として強い反対をしている地域があること。及び、オーストラリア、ニュージーランドから南太平洋諸国に十分説明するよう求められたことから、今後次の対応をとっていくことが必要である。

(1) 説明チームの継続的派遣

① 今回の説明を受けていない南太平洋諸国への早急な派遣が必要
② 信託統治地域に対しては、それぞれの地域の専門家への説明も含めて第2次の説明を行うことが必要

(2) 米、豪、ニュージーランドとの連絡

 南太平洋地域はこれら3国と密接な関係を有していることから、各地域への説明はこれら3国と十分の連絡を行いつつ実施することが重要である。

(3) 南太平洋経済協力機関(SPEC)の活動

 SPECとの会合の際、南太平洋諸国への今後の情報伝達については、SPECが行う用意があるとの発言がなされたことに留意すべきである。

(4) 太平洋諸国の現地在留邦人、特に水産関係者に対しては、本件についての説明を行う必要がある。

(5) その他

① 各国とも試験投棄後の安全性の実証に大きな関心を持っていることから、モニタリング計画の一層の充実が必要

② 安全評価等英文の資料を作成し積極的に提供していくことが必要。また、パンフレットについても一層わかりやすいものを検討した方が良い。

③ なお、今後のチームの派遣については現地のフライトの状況が東京では十分把握できないので豪の大使館等と連絡とりつつ行うことが必要である。


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