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再処理問題に関する日米第三次交渉について


科学技術庁・外務省・通商産業省

1 今次交渉は、昭和52年8月29日から9月1日まで東京において開催された。

2 日本側代表は、宇野科学技術庁長官以下14名、米側代表は、スミス代表以下8名であった。

3 今回の交渉は、米国が原子力協定を締結している20数箇国のうち、日本は、再処理施設を運転しようとしている唯一の国として、しかも、米国との「共同決定」を世界最初に行うための交渉であった。

4 交渉は終始友好的な雰囲気の中で進められ、東海再処理施設の運転に関して、双方は、基本的合意に達した。

5 これを受けて、宇野科学技術庁長官以下14名が9月10日から9月17日の間渡米し、合意点を明らかにした共同声明の発表と、東海再処理施設の運転に関する共同決定の署名を行った。

第三次日米原子力交渉代表団名簿

日本政府代表団名簿

首席代表 宇野 宗佑 国務大臣


 科学技術庁長官


 原子力委員会委員長
代 表 新関 欽哉 原子力委員会委員

 大川 美雄 外務省国際連合局長

 橋本 利一 通商産業省資源エネルギー庁長官

 牧村 信之 科学技術庁原子力安全局長

 山野 正登 科学技術庁原子力局長
代表代理 大永 勇作 通商産業省資源エネルギー庁次長

 小林 智彦 外務省国際連合局参事官
随 員 内田 勇夫 科学技術庁原子力動力炉開発課長

 栗原 弘善 科学技術庁原子力安全局保障措置課長

 川崎 雅弘 科学技術庁原子力局調査国際協力課長

 山本 幸助 通商産業省資源エネルギー庁原子力産業課長

 太田 博 外務省国際連合局科学課長
顧 問 瀬川 正男 動力炉・核燃料開発事業団 副理事長

米側代表団名簿

氏名 所属
 国務省

Gerard Smith

ジェラード・スミス 移動大使
Philip Farley

フィリップ・ファーレイ スミス大使補佐官
Lawrence Scheinman

ローレンス・シャインマン 国務次官付上級原子力補佐官
 軍縮庁(ACDA)

Charles Van Doren

チャールス・ヴァンドーレン 核不拡散・高等技術局次長補
Marvin Moss

マーヴィン・モス 原子力部主任
 エネルギー研究開発庁(ERDA)

George Cunningham

ジョージ・カニンガム 原子力担当次官補代理(代行)
Frederick McGoldrick

フレデリック・マクゴールドリック 国際政策企画部員
Robert Maher

ロバート・マア サヴァンナリバー研究所員

共同声明

1977年9月12日

 東海再処理施設(以下「本施設」という。)を1968年2月26日の原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(改正を含む。)(以下「協力協定」という。)に従って運転することに関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の交渉は、東京において、1977年8月29日から9月1日まで行われた。日本側首席代表は、宇野宗佑国務大臣、科学技術庁長官兼原子力委員会委員長、また合衆国側首席代表は、ジェラード・スミス核不拡散問題特別代表兼移動大使であった。本交渉は、全会期を通じて卒直かつ友好的な雰囲気の裡に行われた。

 合衆国は、原子力の開発が日本国のエネルギー上の安全保障及び経済発展にとって重要であることを認める。合衆国は、日本国の原子力の平和利用が引き続き発展することを強く支持する。合衆国は、増殖炉の研究開発計画を含む日本国の長期原子力計画が阻害されないことを保証する目的で日本国と協力する用意がある。合衆国は、天然ウラン及び低濃縮ウランの供給を保証するための仕組みを確立するため日本国その他の国と協力する用意がある。合衆国は、その政策が原子力の平和利用の分野で日本国を差別しないものであることを確認する。

 日本国及び合衆国は、核燃料サイクル及びプルトニウムの将来の役割を評価するために協力する。両国は、プルトニウムが核拡散上重大な危険性を有するものであり、軽水炉でのそのリサイクルは、現時点では、商業利用に供される段階にはなく、その尚早な商業化は避けられるべきであるとの見解を共有する。両国は、また、高速増殖炉及びその他の新型原子炉に関する研究開発用のプルトニウムの分離が行われる場合には、それはかかる目的のための実際のプルトニウムの必要量を超えるものであってはならないとの見解を共有する。

 日本国及び合衆国は、軽水炉へのプルトニウムの商業利用に関する決定を少なくとも、今後2年間続くと予想される国際核燃料サイクル評価計画(INFCEP)の間、延期する意図を有する。日本国は、この期間中、数キログラムのプルトニウムを用いた関連の研究開発作業を行う計画である。更に、日本国及び合衆国は、上記の期間中プルトニウム分離のための新たな再処理施設に関する主要な措置はとらないとの意図を有する。それ以後は、かかる施設に関する決定を行うに際して、両国は、使用済燃料の貯蔵の可能性並びにその他再処理に代わる技術的及び制度的な代替策を含めINFCEPの結果を考慮に入れる意図を有する。

 両国政府は、緊急かつ現実的な問題点及び核拡散防止上できる限り効果のある燃料サイクルを見い出したいという両国政府の願望を考慮し、本施設の運転は、2年の当初期間、日本国の関係法令に従い、次の原則を指針とするとの了解に達した。

1 本施設は、米国産使用済燃料については99トンまで処理する。この使用済燃料の大部分は、施設が設計どおり完成していることを立証し、日本の契約上保証された権利を確保するため、既定方式により処理される。この使用済燃料の若干部分は、下記第4項に記されている混合抽出法の実験のために使用され得る。

2 日本国は、当初の運転期間中、本施設に付設される予定のプルトニウム転換施設の建設を延期する意図を有する。

3 合衆国は、新型原子炉の研究開発のための日本国のプルトニウムの必要量を各年毎に日本国と考慮する用意があり、また、前項に掲げるプルトニウム転換施設の建設の延期から生ずるいかなるプルトニウムの不足も、日本国の計画に不必要な遅延をもたらさないことを保証する方法を探求する用意がある。

4 既定方式で本施設の主たる部分が稼働している間、本施設内運転試験設備(OTL)及び他の施設において、混合抽出法の実験が行われる。上記実験作業の結果は、「使い捨て」燃料サイクルと同程度の核拡散防止上の効果がある燃料サイクルを見い出すというINFCEPの努力を支持するために、INFCEPに提供される。

5 当初の運転期間が終了した時点において、もし運転試験設備での実験作業の結果として、及びINFCEPの結果に照らして、混合抽出法が技術的に実行可能であり、かつ効果的であると両国政府が合意するならば、本施設の運転方式は、在来の再処理法から全面的な混合抽出法に速やかに変更される。本施設の必要な変更は、費用と時間の遅れがこれらの原則の目的を達成しつつ最小限にとどめられ、かつ、本施設の運転が混合抽出法で速やかに開始することを保証するような方法で行われる。

6 国際原子力機関(IAEA)は、該当する現在及び将来の国際協定に従い、本施設において常時査察を含む保障措置を適用する機会を十分に与えられる。日本国は、本施設におけるセーフガーダビリティ及び核物質防護措置を改善する意向を有し、並びにこの目的のために改良された保障措置関連機器の試験のためにIAEAと協力し、及び当初期間中かかる関連機器の使用を容易にする時宜にかなった準備を行う用意がある。合衆国は、合意された手段により、この保障措置の試験に参加する用意がある。日本国及び合衆国は、この試験計画の実施に容易にするために、速やかにIAEAと協議を行う。この保障措置の試験の結果は、INFCEPに提供される。

 上記の了解、原則及び意図に基づき、かつ、日本国の核不拡散条約に対する変わらない支持及び同条約中の保障措置に関する日本国の約束、取り扱われるプルトニウムの量が限られていること、工程が注意深く監視された実験的性格のものであること、並びにIAEAによる効果的な保障措置の適用の規定及び改良された保障措置の実験の規定にかんがみ、同協力協定の第8条C項に基づき、同協定の第11条の規定が、合衆国から受領した99トンを限度とする燃料資材を含む照射を受けた燃料要素を本施設において再処理することに効果的に適用されるとの共同決定が行われた。

 日本国及び合衆国は、定期的に、又は一方の当事者の要求により上記の事項の実施及び両国間の協力協定に関連する他のいかなる事項についても協議する。

(訳文)

合衆国産の特殊核物質の再処理についての共同決定

 1977年9月12日に発表された日本国政府及びアメリカ合衆国政府の共同声明において述べられた了解、原則及び意図に基づき、かつ、日本国の核兵器の不拡散に関する条約に対する変わらない支持及び同条約中の保障措置に関する日本国の約束、取り扱われるプルトニウムの量が限られていること、工程が注意深く監視された実験的性格のものであること、並びにIAEAによる効果的な保障措置の適用の規定及び改良された保障措置の実験の規定にかんがみ、

1 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、ここに、1968年2月26日の原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(改正を含む。)第8条C項に基づき、同協定第11条の規定が、合衆国から受領した99トンを限度とする燃料資材を含む照射を受けた燃料要素を動力炉・核燃料開発事業団の東海施設において再処理することに効果的に適用されるとの共同決定を行う。

2 保障措置がピューレックス再処理施設一般に効果的に適用され得るか否かに関する決定はここでは行わない。

3 上記協定第11条の規定が、特殊核物質又は照射を受けた燃料要素であって、上記第一項に掲げる照射を受けた燃料要素を超えたものの再処理又はその他の形状もしくは内容の変更に対して効果的に適用されるかどうかについて、同協定第8条C項に基づき今後決定を必要とすることには何らの変更もない。しかしながら、もし上記施設の運転方式が全面的な混合抽出法に変更される場合には、合衆国は、混合抽出法による運転の範囲及び性格に関する合衆国の法律要件及び双方の合意に従って、肯定的な共同決定を行う用意がある。

1977年9月12日

日本国政府のために アメリカ合衆国政府のために
宇野 宗佑 ジェラード・C・スミス
東郷 文彦 ロバート・W・フライ

共同声明:昭和52年9月13日午前5時(ワシントン時間1977年9月12日午後4時)に東京及びワシントンで同時に発表。

共同決定:共同声明と同じ時に、ワシントンにおいて署名、かつ、東京及びワシントンにおいて同時に発表。

 共同声明については、和英両文を正文とし、共同決定については、英文を正文とする。


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