昭和50年7月7日
再処理施設安全審査専門部会
昭和50年7月7日
原子力委員会
委員長 佐々木 義武 殿
再処理施設安全審査専門部会
部会長 高島 洋一
動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設に関する
設計及び工事の主要事項について
本専門部会は、昭和50年2月25日の原子力委員会決定「動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の安全性の確認に係る手続きについて」に基づき、標記の件について検討を行ってきたが、このたび結論を得たので、次のとおり報告する。
Ⅰ 検討の結果
本専門部会は、動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設に関する設計及び工事の主要事項に関し、これまでに科学技術庁原子力局において審査が行われた「再処理施設に関する設計及び工事の方法」についてその内容、基準等の検討を行い、また、同じく科学技術庁原子力局において行われた再処理施設の工事についての検査についてその内容、基準及び結果の検討を行った。さらに、必要に応じ現地で実施状況の調査を行って実際の再処理施設に即しての確認を行った。
その結果、本再処理施設に関する設計及び工事の主要事項は、本専門部会において行った安全審査の内容に従っており、妥当なものであると認められる。
Ⅱ 検討の内容
1 耐震・しゃへい関係
1.1 耐震性
1.1.1 地盤の状況
本再処理施設の主要施設である分離精製工場、廃棄物処理場、分析所、除染場、高放射性固体廃棄物貯蔵庫等の建設位置一帯の地層は、地質及び層厚の変化が少なく、地表面から5m程度で基盤に達する。
基盤は均質な砂質頁岩で、建物建設位置一帯では、ほぼ平担な台地となっており、主要な施設はこの基盤に直接支持されている。
1.1.2 耐震設計
本再処理施設の建物、構築物、機器類等はその重要度に応じてA類、B類及びC類に分類され、次のような耐震設計が行われている。
(1) 建物及び構築物
建物及び構築物は、C類については建築基準法に定められる水平震度0.2、B類についてはその1.5倍の0.3、A類については3倍の0.6を設計震度とし、日本建築学会の鉄筋コンクリート構造計算規準及び鋼構造計算規準に準拠して安全であるような静的な設計がなされている。
さらに、A類の構築物を含む分離精製工場については、基盤における想定最大入力加速度を180galとして動的解析を行い、建物及び構築物の重要度に応じた耐震性が確認されている。
(2) 主排気筒
主排気筒については、水平震度0.3を設計震度として静的な計算を行うとともに、基盤における想定最大入力加速度を270galとして動的解析を行っており、その結果によれば、主排気筒は、前記の鉄筋コンクリート構造計算規準に従った許容応力度に比較して余裕のある強度を有している。
なお、主排気筒と分離精製工場にまたがるダクト等については、地震時の相対的変位を動的に解析し、この変位に対して十分余裕のある伸縮継手が設けられている。
(3) 機器
建物に固定されている主要機器については、機器をばね一質点系とみなし、使用材質及び形状などから機器の固有振動数を算出し、これが剛領域に入るように形状及び寸法が決定されている。さらに、建物の動的解析(基盤における最大入力加速度を180galと想定)の結果得られた機器の取付け位置における床応答加速度特性をもちいて、各支持部材に生ずる応力を静的に計算し、ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section Ⅲ Appendix Ⅰに示されている許容応力値に比較して強度上余裕のある部材寸法が採用されている。
また、A類及びB類の機器内溶液の振動の解析については、溶液の表面の振動荷重及び中間層の衝撃荷重が機器に及ぼす力及び転倒モーメントを解析し、前記のASMEの基準に比較して余裕ある機器設計、支持方法等が採用されている。
(4) 配管系
A類及びB類の配管系については、いくつかの基本形の固有振動について振動実験を行い、剛領域に入るように支持点を定め、これらの組合せで配管系を構成した後、静的に応力計算を行って、その応力値がANSI Power Piping Appendix A に示されている許容応力値に比較して安全であるような設計が行われている。例外的に共振領域又は柔領域に入る配管系については、固有値計算を行って配管取付け位置に生ずる応力を計算し、前記のANSIの基準に従い強度の確認が行われている。
C類の配管系については、自重等を考えた通常の材料力学的な計算を行って耐震性が確認されている。
1.2 建築工事及びその管理
(1) 基礎工事
基礎工事については、基礎盤底の深さまで根切りした後、日本建築学会の建築基礎構造設計規準に従い基盤の載荷試験を行って基盤地耐力が80t/m2以上であることを確認したうえで工事が行われている。
(2) 鉄筋コンクリート工事
鉄筋コンクリート工事は、原則して日本建築学会の建築工事標準仕様書鉄筋コンクリート工事(JASS-5)に準拠して行われている。
コンクリートとしては、普通コンクリート、普通しゃへいコンクリート及び重量コンクリートが使用されており、工事前に試験練りを行い、比重の確保、コンクリート強度の確認など、本施設に使用するコンクリートとしての妥当性の確認が行われている。
(ⅰ) コンクリートの品質管理
コンクリートは、骨材、セメント、スランプ、コンクリート強度、比重などについて品質管理が適切に行われている。
このうち、コンクリート強度については、現場打設時に試料を採取した後、4週圧縮強度試験を実施し、普通コンクリート及び普通しゃへいコンクリートは210kg/cm2以上、重量コンクリートは250kg/cm2以上の強度が確認されている。
また、比重については、現場打設時に試料を採取して生比重試験を行うとともに、乾燥比重の測定をも実施し、普通しゃへいコンクリートは、2.3以上、重量コンクリートは3.5以上の比重を有することが確認されている。
(ⅱ) 型枠工事
型枠工事にあたっては、しゃへい上所定の厚みを要するセル壁等について特に厳重な寸法管理が行われている。
(ⅲ) 鉄筋工事
主要鉄筋にはJISG3112に定めるSD30及びSR24が使用されており、JISZ2241による鉄筋引張試験により強度の確認が行われている。
また、主筋の継手にガス圧接工法を採用した場合には、現場において採取した試料の引張試験により継手部の強度の確認が行われている。
施工管理としては、鉄筋間隔、本数、太さ及び継手位置などの確認が行われている。
(3) その他
セル壁の開口部の閉鎖に用いられるコンクリートブロック積みについては、鋼製枠を設けて補強するなどの耐震上の処置が講じられている。
1.3 放射線しゃへい
1.3.1 しゃへい設計の基準
(1) しゃへい設計基準燃料
本再処理施設において、1日当り処理する燃料の最大内蔵放射能は約3×106Ciであり、表1に示される条件の燃料がそれぞれの工程の機器内に保有されるとして線源強度を求め、これに基づいてしゃへい設計が行われている。
(2) 線量率による区域の区分
平常運転に際して、しゃへい設計の基準とする線量率は、建家内の区分に応じて表2のように定められている。
(3) 設計法
エネルギーを5群に分け、線源強度、しゃ へい体と線源との幾何学的相対関係、要求される線量率等を考慮に入れた計算コードにより必要なしゃへい厚を決定する手法が採用されている。
表1 設計基準燃料

表2 区域区分と線量率

1.3.2 しゃへい構造
本再処理施設の主要工程の設備は、大部分セルの内部に置かれているほかその他のしゃへいを必要とする設備もしゃへいバルジ等のしゃへい構造物の内部に置かれている。
セル及び室のコンクリート壁等のしゃへい材は、前記の1.3.1(3)設計法により計算されたしゃへい上の要求を満たす厚みが確保されている。
しゃへい材としては、主として普通しゃへいコンクリート(比重2.3以上)が使用されているが、その他必要に応じて、鉛、鉄、重量コンクリート(比重3.5以上)、水などが適切に使用されている。
また、燃料取出しプール、貯蔵プール及び移動プールは、その上面において、人が常時立ち入る場所の放射線量率を基準値以下に保つような水深となっており、これらのプールの水位の急激な下降を防ぐため、プール底には水の排出口を設けず、排水は溢流方式又はポンプによって行うようになっている。
1.3.3 しゃへい工事及びその管理
駆体工事に伴う普通しゃへいコンクリート及び重量コンクリートのしゃへい工事は、特に比重管理、寸法管理に重点をおいて施工されており、寸法検査にあたっては、マイナス例の誤差は認められていない。
セル壁の開口部の閉鎖は、重量コンクリートブロックを放射線の強度に応じた層数で破れ目地積みして行われており、ブロック積みまわりには重量モルタルが詰められている。
また、セル壁を通貫しているのぞき窓、換気スクリューなどは、コンクリート打設時に移動しないよう堅固に取付けるとともに、貫通部の下部に“す”などができないようコンクリートを入念に打込む等の管理が行われている。
このほか、しゃへい材として部分的に用いられている鉛、鉄等については、しゃへい厚さ、材質の均一性について製造工程中及び完成時に検査され、設計との合一性が確認されている。
2 臨界安全関係
2.1 臨界安全設計の概要
本再処理施設の臨界安全設計にあたっては、安全審査の内容に従い、次の臨界安全関係の指針に基づいて安全解析・評価が行われている。
(ⅰ)CEA-R-3114 Guide de Criticité
(ⅱ)AHSB(S)Hand book1(1 st Revision)Hand book of Criticality Data Vol.1
(ⅲ)ANSI N 16.1 Nuclear Criticality Safety in Operations with Fissionable
Materials Outside Reactors
各工程の臨界安全設計は、それぞれの工程における核分裂性物質を含む物質の状態及びその変化を考慮してなされており、表3のような臨界安全管理方法が採用されている。
また、臨界安全設計にあたっては、最も厳しい減速・反射条件を仮定した場合の臨界データを採用するとともに、プルトニウム精製系のプルトニウムは全て核分裂性のプルトニウム239とするなどの安全側の仮定がなされている。
さらに、安全を期するため、独立した2つ以上の異常が同時に起らない限り臨界に達しないよう設計上の配慮がなされているほか、運転時の臨界安全管理を十分に行うため、臨界専用あるいは併用の工程管理設備が設けられている。
なお、万一の場合に構えて、プルトニウムセル操作区域等には、臨界警報装置が設けられている。
表3 臨界安全管理の方法

2.2 各施設における主要な臨界安全設計
(1) 使用済燃料の受入施設及び貯蔵施設
(ⅰ) 燃料取出しプールにおける燃料取出しプールクレーン等では、燃料集合体1体又は濃縮ウラン燃料貯蔵バスケット(燃料集合体4体を収納)1基のみを扱うようになっている。
(ⅱ) 濃縮ウラン燃料貯蔵バスケットは、燃料端面間距離が一定間隔以下にならないようになっている。
(ⅲ) 濃縮ウラン貯蔵プールにおける燃料貯蔵プールクレーン等では、濃縮ウラン燃料貯蔵バスケット1基のみを扱うようになっている。
(ⅳ) 濃縮ウラン移動プールにおける濃縮ウラン移動プールクレーン等では、燃料集合体1体又は濃縮ウラン燃料貯蔵バスケット1基のみを扱うようになっている。
(2) 脱被覆施設
(ⅰ) せん断装置による燃料のせん断は、燃料集合体1体ずつ行うようになっている。
(ⅱ) 洗浄槽及びフィルタは、全濃度安全形状寸法になっている。
(3) 溶解施設
(ⅰ) 濃縮ウラン溶解槽及び溶解槽溶液受槽は、全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) 濃縮ウラン溶解槽溶液が溶解槽溶液受槽で基準濃度以下でない場合は、ジェット・ポンプによる調整槽への送液が行えないようにインターロックが設けられている。
(ⅲ) 洗浄液受槽及びスワーフタンクは、全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅳ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
(4) 分離施設
(ⅰ) 分離第1~第5抽出器及び希釈剤洗浄器は、制限濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) リワーク系の受槽、中間貯槽、サージポット、プルトニウム溶液受槽、溢流溶媒受槽及び溢流槽は、全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅲ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
(5) 精製施設
(ⅰ) ウラン精製系のウラン溶液蒸発缶(第1段)、凝縮器、濃縮液受槽、希釈槽、給液槽、ウラン溶液蒸発缶(第2段)及び脱硝塔並びにプルトニウム精製系の酸化塔、空気吹込塔、希釈槽、プルトニウム溶液蒸発缶、凝縮器、プルトニウム濃縮液受槽、循環槽及びドレン受槽は全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) ウラン精製系のウラン精製第1抽出器、希釈剤洗浄器及びウラン精製第2抽出器並びにプルトニウム精製系のプルトニウム精製第1抽出器、希釈剤洗浄器、プルトニウム精製第2抽出器及びこれらの前後の中間貯槽は制限濃度安全形状寸法になっている。
(ⅲ) 凝縮液受槽には中性子毒が充填されている。
(ⅳ) ウラン溶液蒸発缶(第1段)には液面計が2段に設置され、液面が設定値以上に上昇した場合は、自動的に給液が停止するようになっている。
(ⅴ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
(6) 製品貯蔵施設
(ⅰ) プルトニウム製品貯槽は、制限濃度安全形状寸法になっており、さらに、その内側にはカドミウム板の内張りが施されている。
(ⅱ) 計量槽、プルトニウム溶液輸送容器、配管系及び三酸化ウラン製品容器は、全濃度安全形状寸法になっている。
(7) 酸及び溶媒の回収施設
(ⅰ) 溶媒回収系の希釈剤洗浄器は、全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) 第1~第3溶媒洗浄器は、制限濃度安全形状寸法になっている。
(ⅲ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
(8) 放射性廃棄物の廃棄施設
(ⅰ) 溶解廃気系の酸吸収塔及びプルトニウム製品貯槽の洗浄塔は、全濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) 溶解廃気系の凝縮器は、制限濃度安全形状寸法になっている。
(ⅲ) プルトニウム溶液濃縮系からの気体廃棄物の洗浄液の中間貯槽と洗浄塔には中性子毒が充填されている。
(ⅳ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
(9) 試薬調整設備(その他の再処理施設)
(ⅰ) 第1、第2電解槽は制限濃度安全形状寸法になっている。
(ⅱ) 硝酸ウラン溶液を受入れる貯槽には中性子毒が充填されている。
(ⅲ) 配管系は全濃度安全形状寸法になっている。
3 材料関係
3.1 材料
本再処理施設における内装機器には、主としてステンレス鋼、炭素鋼、チタン、塩化ビニル、ポリエチレン等が用いられている。耐食性が要求される機器、配管等には、JISG4304、G4305又はG3459に定めるSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼が採用され、高放射性廃液貯槽等には、特に耐食性の優れている極低炭素ステンレス鋼が採用されている。
さらに、濃縮ウラン溶解槽、酸回収蒸発缶等には、耐硝酸性に優れたステンレス鋼として仏国において開発された25Cr-20Ni-0.2Nb系鋼(ウラナス65)が採用されている。また、セル外の水、蒸気等の配管にはJISG3452に定めるSGP、G3454に定めるSTPG等の炭素鋼が使用されている。
3.2 製作・施工
3.2.1 材料の受入れ
主要な機器に使用する材料の受入れの際には、化学成分分析、引張試験等前記各材料のJISに定める試験項目等の検査成績を記載した材料品質証明書の確認が行われ、さらに、高放射性物質を取扱う配管・機器製作用ステンレス鋼については、化学成分分析により材質のチェックが行われている。
3.2.2 溶接法
溶接法としては、タングステン電極・イナートガス溶接法、メタル・イナートガス溶接法及び被覆アーク溶接法が使用されており、一部電子ビーム溶接法が採用されている。
3.2.3 溶接工事及びその管理
溶接工事は、仏国サンゴバン・テクニク・ヌーベル社の提示した機器、配管等の使用条件等に応じた製作規格に基づいて行われるとともに、事前に、溶接士の技能の確認が行われている。
すなわち、製作規格が厳しく、かつ高度の溶接技術が要求されるステンレス鋼等の特殊な材料を使用する機器、配管等の溶接工事については、溶接士の特別な訓練及び資格試験が実施され、これに合格した溶接士によって溶接が行われており、その他の溶接工事についてもJISZ3801に定める溶接技術の標準資格試験法による資格を有するものによって溶接が行われている。また、実際の溶接にあたっては、施工前試験を行って溶接施工法を確認するとともに、原則として下向姿勢など建全な溶接ができる姿勢が採用されており、さらに溶接欠陥が発生するのを防ぐために、作業場の清浄化が不十分な場合は溶接をさせない等の措置がとられている。
3.2.4 検査
機器、配管等は、前期仏国サンゴバン・テクニク・ヌーベル社の製作規格に応じてそれぞれ製作施工中あるいは施行後に染料浸透試験、放射線透過試験、水圧試験、エアソープ試験、アンモニア耐密試験、寸法検査等各種の検査が行われている。製作工場においてこれらの検査に合格した機器類は、梱包検査を行ったうえで現場に輸送し、さらに開梱検査を行い、合格後搬入、据付が行われている。
なお、濃縮ウラン溶解槽、酸回収蒸発缶等の仏国から輸入された塔槽類の溶接継手に若干の小さなブローホールが認められ、詳細な検討を加えたが、JIS Z3106、ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section Ⅲ Appendix Ⅵ による放射線透過試験の結果、使用材料の耐食性及び運転時の応力、温度等の使用条件から総合的に判断して、本件程度の内部ブローホールは問題がないと考えられる。
3.3 管理体制
本施設の主要な内装機器、配管等の製作、施行について動力炉・核燃料開発事業団は、契約者(日本揮発油(株)及び仏国サンゴバン・テクニク・ヌーベル社の共同企業体)に責任施行せしめているが、材料の選定及び機器、配管等の施行にあたっては、各段階ごとに動力炉・核燃料開発事業団の承認を得ること、製作時には単位工程ごとの検査に合格することを条件に次のステップへ進ませる方式が採用されている。なお、ウラナス65製の塔槽類など特殊な機器は仏国内で製作、輸入されているが、これらの機器については、仏国の溶接協会(アンスティテュート・ド・スデュール)において検査が行われており、放射線透過試験、寸法検査、耐圧・気密試験等の各種検査報告書を前記共同企業体及び動力炉・核燃料開発事業団が確認する方式が採用されている。
4 工程関係
4.1 工程
本再処理施設の工程は、安全審査の内容に従った適切な工程となっており、これらの工程を構成する内装機器類は、仏国サンゴバン・テクニク・ヌーベル社の仕様に従ったものとなっている。これらの槽類、機器類、配管等の配置、機器類の作動及び性能、各工程の作動状態等は、通水試験、化学試験等で確認されている。
主要な工程は次の通りである。
(1) 使用済燃料の受入施設及び貯蔵施設
燃料の受入、貯蔵及びプール水の処理が行われる。
(2) 脱被覆施設
燃料のせん断、溶解槽への燃料装荷及びハルなどの取出しが行われる。
(3) 溶解施設
燃料の溶解、溶解液の清澄及び調整が行われる。
(4) 分離施設
溶媒抽出法により、溶解液中のウラン及びプルトニウムが核分裂生成物から分離され、さらに、ウランとプルトニウムの分離が行われる。
(5) 精製施設
ウランの精製、蒸発濃縮及び脱硝並びにプルトニウムの精製及び蒸発濃縮が行われる。
(6) 製品貯蔵施設
ウラン製品(三酸化ウラン粉末)及び硝酸プルトニウム溶液の貯蔵が行われる。
(7) 酸及び溶媒の回収施設
廃液を蒸発濃縮処理して酸の回収が行われ、廃溶媒を洗浄して溶媒の回収が行われる。
(8) 計測制御系統施設
各施設の工程が計測制御系により集中管理される。
(9) 放射性廃棄物の廃棄施設
気体廃棄物、液体廃棄物及び固体廃棄物の処理が行われる。
(10) その他の再処理施設
各施設に必要な水、電気、蒸気等の供給、試薬の調整、各種の分析等が行われる。
4.2 火災・爆発の防止(異常反応の防止を含む)
本再処理施設には火災・爆発等の防止のため、次のような安全対策が講じられている。
4.2.1 ジルコニウム等による火災の防止
(1) 濃縮ウラン溶解槽内には、ジルコニウム捕集缶が設置されており、この捕集缶に集められたジルコニウム細片は、水中で廃棄物用缶に詰め除去できるようになっている。
(2) 機械処理セルに炭酸ガスを供給できる消火設備が設置されている。
(3) ジルコニウム細片等の可燃性固体廃棄物は、高放射性固体廃棄物貯蔵庫において水中貯蔵される。
4.2.2 濃縮ウラン溶解槽における異常反応の防止
(1) 溶解槽には、圧力計、液面計、温度計等が設けられており槽内の異常を検出することができる。
(2) 溶解槽の加熱ジャケットは、冷却水による冷却も行えるようになっており、蒸気、冷却水、試薬等の供給配管には、圧空作動の弁類が設けられ、溶解槽内圧が規定値を越えた場合は、自動的に蒸気の供給停止、硝酸等の試薬の供給停止及び冷却水の供給並びに純水の供給が行えるようになっている。
4.2.3 有機溶媒による火災の防止
(1) 有機溶媒としては、比較的引火点が高く、かつ放射線分解の少ないTBP及びドデカンが使用されている。
(2) 抽出器、希釈剤洗浄器などは、接地されている。
(3) 溶媒洗浄器などの加温は、温水が使用され、ジャケット方式で行われるようになっている。
(4) 有機溶媒を使用するセルは、十分な換気が行われるとともに、これらのうち主要なセルには火災感知器、消火設備等が設けられている。
4.2.4 蒸発缶の爆発防止
(1) ウラン溶液蒸発缶(第一段)、プルトニウム溶液蒸発缶及び高放射性廃液蒸発缶について、次のような対策が講じられている。
(ⅰ) 蒸発缶へ供給される溶液に同伴した有機溶媒(TBPなど)を除去するため、希釈剤洗浄器が設けられている。
(ⅱ) 蒸発缶へ供給される溶液の中間貯槽には、同伴有機溶媒を溢流除去するための溢流口が設けられている。
(2) ウラン溶液蒸発缶に設けられている温度計を蒸気供給配管の圧空作動弁と連動させ、蒸発缶内の温度が規定値を越えた場合、自動的に蒸気の供給が停止されるようになっている。
(3) プルトニウム溶液蒸発缶に設けられている温度計及び圧力計を蒸気供給配管及び給液配管の圧空作動弁と連動させ、蒸発缶内の温度又は圧力のいずれかが規定値を越えた場合、自動的に蒸気の供給及び給液が停止されるようになっている。
(4) 酸回収蒸発缶に設けられている圧力計を蒸気供給配管及び給液配管の圧空作動弁と連動させ、蒸発缶内の圧力が規定値を越えた場合自動的に蒸気の供給及び給液が停止されるようになっている。
(5) 高放射性廃液蒸発缶に設けられている圧力計を蒸気供給配管、冷却水配管、ホルマリン供給配管及び安全ベッセルへつながる純水供給配管の圧空作動弁とそれぞれ連動させ、蒸発缶内の圧力が規定値を越えた場合、自動的に蒸気の供給の停止、ホルマリン等の試薬の供給の停止及び冷却水の供給並びに純水の供給が行えるようになっている。
また、ホルマリンを供給するための配管端は、蒸発缶内の液面下になるような位置にある。
4.2.5 その他
(1) 高放射性の廃液の貯蔵に際しては、廃液の放射線分解によって発生する水素の爆発防止対策として、装置の接地及び貯槽空間の換気が行われ、さらに、圧空による槽内溶液の攪拌が行えるようになっている。
(2) 廃希釈剤貯槽及び廃溶媒・廃希釈剤貯槽の廃気系に設けられている温度計を、それぞれの機器につながっている炭酸ガス供給配管の電磁弁と連動させ、機器内の温度が規定値を越えた場合、自動的に炭酸ガスの供給が行えるようになっている。
(3) 焼却設備の焼却炉及びバグフィルタに設けられている温度計を、それぞれの機器につながっている炭酸ガス供給配管の電磁弁と連動させ、機器内の温度が規定値を越えた場合、自動的に炭酸ガスの供給が行えるようになっている。
4.3 インターロック
本再処理施設には、運転管理及び放射線管理を適切に行い、施設の安全を確保するために、次のようなインターロックが設けられている。
(1) 脱被覆施設においては、燃料のせん断装置、燃料分配器及び溶解槽の燃料装入部の開閉装置が互いに関連をもち
(ⅰ) 燃料装荷バスケットが溶解槽に入っていること。
(ⅱ) 燃料分配器がせん断された燃料の受入可能な溶解槽の位置にあること。
(ⅲ) 開閉装置のプラグが上って、せん断された燃料が分配器から溶解槽へ装入可能となっており、かつ、プラグが下らないようになっていること。
等の条件が満されない場合、燃料集合体のせん断ができないようにインターロックが設けられている。また、せん断操作は、あらかじめ設定されたせん断回数に達すると、自動的に停止されるようになっている。
(2) 使用済燃料の受入施設のトラックエアロックからキャスク除染室へ通ずるトラップ扉は、トラックエアロックのシャッター扉が閉じていない場合、「扉開」のボタンを押しても開かないようにインターロックが設けられている。また、脱被覆施設のエアロックセルのプラグ扉は、同セルと除染セルの間の鉄扉が閉じていない場合、「扉開」のボタンを押しても開かないようにインターロックが設けられている。
(3) 溶解槽溶液受槽内の溶液のウラン濃度を測定する密度計を、同受槽とパルスフィルタ給液槽間のジェットポンプへの蒸気供給配管の圧空作動弁と連動させ、ウラン濃度が規定値以下でない場合、ジェットポンプによる送液が行えないようにインターロックが設けられている。
Ⅲ 検討の経過
本専門部会は、昭和50年3月7日に現地調査を実施し、昭和50年3月15日の第32回会合において、耐震・しゃへい関係(藤井、林委員)、臨界関係(清瀬、青地委員)、材料関係(稲垣、鈴木、高島委員)及び工程関係(内藤、青地、益子、高島委員)の4ワーキング・グループを設置した。
以後部会、施設関係グループ及びワーキング・グループにおいて別表のとおり検討を重ねてきたが、昭和50年7月7日の第37回会合において本報告書をとりまとめた。
なお、本専門部会の委員は次のとおりである。
(アイウエオ順)
部会長 |
高島 洋一 |
|
東京工業大学教授 |
|
青地 哲男 |
|
日本原子力研究所多目的炉設計研究室長 |
|
伊沢 正実 |
|
放射線医学総合研究所環境汚染研究部長 |
|
伊藤 直次 |
|
日本原子力研究所保健物理安全管理部次長 |
|
稲垣 道夫 |
|
金属材料技術研究所溶接研究部長 |
|
内田 秀雄 |
|
東京大学教授 |
|
清瀬 量平 |
|
東京大学助教授 |
|
佐伯 誠道 |
|
放射線医学総合研究所臨海実験場長 |
|
坂上 治郎 |
|
お茶の水女子大学教授 |
|
左合 正雄 |
|
都立大学教授 |
|
鈴本 正敏 |
|
金属材料技術研究所腐食防食研究部長 |
|
内藤 奎爾 |
|
名古屋大学教授 |
|
林 正夫 |
|
電力中央研究所土木技術研究所地盤耐震部長 |
|
日野 幹雄 |
|
東京工業大学教授 |
|
藤井 正一 |
|
芝浦工業大学教授 |
|
益子 洋一郎 |
|
東京工業試験所長 |
別表

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