昭和45年11月30日
原子力委員会
委員長 西田信一殿
原子力損害賠償制度検討専門部会
部会長 我妻 栄
本部会は、昭和44年10月23日付けで諮問された「現行原子力損害賠償制度につき改善を要する諸点および改善方策」について、14回にわたる審議を重ねるとともに、特に、法律技術的事項については小委員会を設け11回にわたり検討を重ねてきましたが、このたび、次のとおり取りまとめましたので答申します。
原子力損害賠償制度検討専門部会構成員
石田 久市 |
三菱原子力工業(株)常務取締役 |
石田 芳穂 |
日本原子力発電(株)常務取締役(第7回~第14回) |
内古閑寅太郎 |
日本原子力船開発事業団専務理事 |
加藤芳太郎 |
東京都立大学教授 |
金沢 良雄 |
東京大学教授 |
笹森 建三 |
日本原子力発電(株)取締役副社長(第1回~第6回) |
荘村 義雄 |
電気事業連合会副会長 |
高橋 時男 |
日本通運(株)常務取締役 |
谷川 久 |
成蹊大学教授 |
長崎 正造 |
東京海上火災保険(株)専務取締役 |
萩原 荘五 |
安田火災海上保険(株)専務取締役 |
星野 英一 |
東京大学教授 |
真崎 勝 |
日本原子力保険プール専務理事 |
村田 浩 |
日本原子力研究所副理事長 |
青山 博吉 |
(株)日立製作所副社長 |
米田冨士雄 |
(社)日本船主協会副会長 |
我妻 栄 |
東京大学名誉教授 |
荒井 勇 |
内閣法制局第三部長 |
梅沢 邦臣 |
科学技術庁原子力局長 |
川島 一郎 |
法務省民事局長 |
西堀 正弘 |
外務省国際連合局長 |
鳩山威一郎 |
大蔵省主計局長 |
近藤 道生 |
大蔵省銀行局長 |
高橋 淑郎 |
通商産業大臣官房長 |
見坊 力男 |
運輸省官房審議官 |
岡部 実夫 |
労働省労働基準局長 |
小委員会構成員 |
阿部 士郎 |
(社)日本船主協会顧問弁護士 |
荒井 仁 |
日本原子力産業会議動力炉開発課調査役 |
下山 俊次 |
日本原子力発電(株)資材課長 |
杉村敬一郎 |
日本原子力保険プール事務局長代理 |
谷川 久 |
成蹊大学教授 |
名和 正樹 |
日本原子力事業(株)総務課主任 |
(座長) |
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星野 英一 |
東京大学教授 |
わが国の原子力損害賠償制度は、「原子力損害の賠償に関する法律」および「原子力損害賠償補償契約に関する法律」が、昭和36年に制定されて以来、すでに10年近くを経過した。この間において、(1)わが国の原子力船「むつ」の就航が近く実現するとともに、わが国と外国との原子力損害賠償制度の相違が原子力船の相互寄港の障害となっていること(2)発電用原子炉の運転が昭和40年に開始されて以来、続々と原子力発電所の建設、運転が進められ、またこれに伴って核燃料物質の運搬がひんぱんに行なわれるようになってきていること等の新しい事態が生じてきている。
したがって、このような事情の変化に適切に対処するため、原子力損害の賠償に関する諸条約あるいは欧米諸国の原子力損害賠償制度をも参考として検討した結果、現行原子力損害賠償制度に関し、次の諸点について所要の改善が行なわれることが望ましいと考える。
Ⅰ 国の援助および補償契約に関する規定の適用
現行の原子力損害の賠償に関する法律(以下「賠償法」という。)では、原子力損害賠償補償契約締結の規定および原子力事業者に対する国の援助の規定の適用は、昭和46年末までに運転を開始する原子炉等に係る原子力損害に限定されている。これは、現行の原子力損害賠償制度をその発足後10年経過した時点で、原子力の開発、利用の進展等に応じ再検討するために設けられた規定であるが、今後の原子力の開発、利用の促進のため昭和47年以降に運転を開始する原子炉等に係る原子力損害についても、これら国の援助および原子力損害賠償補償契約の措置を、存続させることが必要である。
Ⅱ 損害賠償責任の制限および国家補償
(1)陸上原子力施設
(イ)現行賠償法は、原子炉の運転等を行なう原子力事業者の損害賠償責任を特に制限せず、万一原子力事故が発生した場合には、原子力事業者は、被害者の被った原子力損害を全額賠償しなければならないこととしている。さらに、このような場合の被害者に対する損害の賠償は、同法に基づき原子力事業者に強制されている損害賠償措置額(原則として50億円)から支払われ、万一その額をこえる原子力損害が発生したときは、賠償法の目的を達成するため、すなわち被害者の保護を図り、および原子力事業の健全な発達に資するために必要がある場合に、政府が当該原子力事業者に対し必要な援助を行なうことになっている。
一方、原子力損害の賠償に関する諸条約あるいは欧米諸国の原子力損害賠償制度においては、原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限するとともに、民間の責任保険等の損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合には、一定の額までに限り、国が被害者のために補償するいわゆる国家補償制度が採用されている。
(ロ)このような状況にかんがみ、わが国においても、被害者の保護および原子力事業の健全な発達を図るという目的からみて、これら諸外国の例を参考として原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限するとともに、民間の責任保険等の措置額をこえる原子力損害については、適正な補償料を徴収することを前提とする政府の損害賠償補償契約(以下「国家補償」という。)の拡大により措置することが望ましい方向であると考えられる。
これに関して、現行賠償法の国の援助の規定は、万一損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合の被害者の保護のための措置としては、必ずしも十分ではなく、むしろ、一定の額まで国家補償を拡大することが、被害者の保護という点においてもより確実な措置といえるのではないかという意見、さらに原子力事業者に無過失の損害賠償責任を集中していることとの均衡から考えても無限の損害賠償責任を課しておくことは酷ではないかという意見が強く述べられた。
この場合、諸外国の例にもかんがみ、原子力事業者の損害賠償責任をたとえば400億円程度で制限し、これをこえる原子力損害について、原子力事業者を免責にするとともに、その額までは民間の責任保険等の措置額で不足する分について国家補償により対処しようとするものである。
(ハ)しかし、このような制度を今直ちに現行賠償法を改正して導入すべきか否かについては、次のような慎重論も強かった。
すなわち、わが国は、地続きで国境を接する欧州諸国とは事情を異にしているので、諸外国の原子力損害賠償制度に合致させなければならない緊急性に乏しいとともに、すでに現行の原子力損害賠償制度のもとにおいて原子力発電所等の建設、運転が続々と進められており、現在までのところ責任制限および国家補償の拡大をしなければ被害者の保護に欠ける原子力事業の健全な発達を阻害するような事態は起っておらず、また近い将来においても必ずしも起こるものとは考えられない。反面、今日、原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限することは、原子力に対する国民感情あるいは最近の社会情勢からみて必ずしも適当とはいえない。また、万一民間の責任保険等の措置額をこえる原子力損害が発生した場合には、被害者の保護を図り、原子力事業の健全な発達を阻害することのないよう原子力事業者に対する国の援助の規定を十分に活用して、援助措置を講ずることにより対処しうるものと考えられる。
(ニ)上記の両意見についてさらに検討した結果、当面現行賠償法どおりとするが、原子力事業者の責任制限および国家補償の拡大については、将来の課題として検討すべき問題であると考える。
(2)原子力船
(イ)原子力船は、陸上原子力施設と異なり、本来それ自身が国際的な移動性のあるものであるので、円滑な相互寄港を図るためには、原子力損害賠償制度について、国際条約を締結するか、または諸外国の制度と合致させることが是非とも必要である。先年、米国のサバンナ号および西独のオット・ハーン号の本邦寄港が実現しなかったのは、わが国との原子力損害賠償制度の相違が大きな障害となったためである。原子力船の原子力損害賠償に関する国際条約としては、現在のところ、未発効であるが、「原子力船運航者の責任に関する条約」があり、原子力船運航者の責任を-原子力事故当たり1億ドル(360億円)で制限するとともに、その制限額まで民間の責任保険等および国家の補償により措置することを義務付けている。このような制度は、すでに米国、西独、フランス等においさても採用れている。
したがって、わが国の原子力船「むつ」が近く就航する場合に備えて、わが国の原子力損害賠償制度を諸外国の例に合わせ、原子力船について、責任制限および国家補償の拡大をすることが基本的には必要である。
(ロ)このうち、特に、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入ろうとする場合、および外国の原子力船が本邦水域に立ち入ろうとする場合においては、「原子力船運航者の責任に関する条約」が発効していない現状では、相互主義の建前等も勘案して、わが国政府と相手国政府と合意した額で、原子力船の運航者の損害賠償責任を制限しうることとするとともに、その額まで確実な損害賠償のための措置を講じさせることが必要である。この場合、本邦水域に立ち入ろうとする外国の原子力船についても、無過失の損害賠償責任が原子力船の運航者に集中されることを明らかにしておくことが必要である。また、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入ろうとする場合については、民間の責任保険等の措置額をこえる額について国家補償の拡大等所要の措置を講ずる必要がある。
さらに、外国の原子力船が本邦水域に立ち入ることに伴い、万一責任制限額をこえる原子力損害が発生した場合の国内の被害者の救済については、領海内におけるわが国の原子力船による原子力損害が発生した場合の被害者の救済とのバランスを失することのないよう考慮することが必要である。
(ハ)わが国の原子力船がわが国の領海内にはいる場合の損害賠償制度についても、一般の船舶について責任制限が採用されているという特殊性および前述の相互寄港の際の措置とのバランスよりみて、責任制限および国家補償の拡大を行なうべきであるとの意見が強かったが、陸上原子力施設の損害賠償責任および損害賠償措置と異なった取扱いをする理由に乏しいとする意見も強かった。
この両意見についてさらに慎重に検討した結果、わが国の原子力船がわが国の領海内にいる場合の損害賠償制度は、当面現行賠償法どおりとし、将来「原子力船運航者の責任に関する条約」が発効し、これへのわが国の加入が問題となった時点で、再度検討することが適当である。
Ⅲ 損害賠償措置額
(1)現行賠償法では、原則として50億円の損害賠償措置を講じなければならないことになっている。この50億円という金額は、諸外国の例に倣ったものであるとともに、現行賠償法制定当時における民間の責任保険の引受能力の限度とみられたことによるものである。その後の保険会社の資産の増加等よりみて、損害賠償措置額の大幅な増額を行なうべきであるとの意見が強かったが、現在においても民間の責任保険の引受能力から大幅な増額は困難であるとの理由で、損害賠償措置額は、10億円の引上げが限度であるとの意見もあり、また、諸外国の例等を総合勘案し、さらに今後とも、損害保険業界における責任保険の引受能力の拡大のための一層の努力を期待して、当面の措置額としては、60億円とする。
(2)また、現行賠償法は、その政令により、原子炉の運転等の種類に応じ、最低1000万円までの低額損害賠償措置を細かく設けているが、その低額損害賠償措置は、強制的措置としては低すぎるので、諸条約等を参考として、相当の額にまで引き上げることが妥当である。
Ⅳ 従業員災害
現行賠償法では、原子力事業者の従業員が業務上被った原子力損害については、その対象から除外しているが、これは従業員は雇用契約に基づき原子力事業に従事するもので、このような関係にない一般第三者の被った原子力損害に対する保護をまず優先させるべきものと考えられたほか、従業員については、労働者災害補償保険制度があるので、それに委ねるべきものと考えられたことによる。原子力事業者の従業員災害も賠償法により填補することが妥当であるか否かについては、昭和40年原子力事業従業員災害補償専門部会より労働者災害補償保険制度をさらに充実する必要があるとともに、原子力損害の賠償に関する諸条約との関係において、労働者災害補償保険制度で填補されない損害に限り一般第三者の保護を阻害することのないような形で、賠償法で填補することが望ましいとの答申が出されている。当専門部会としても、この点について再度十分に検討したところ、①労働者災害補償保険制度もILO条約並みの水準に相当充実されてきているとともに、すでに相当数の原子力事業においては、従業員災害について労働協約等により労働者災害補償保険制度の上積みの補償が行なわれていること ②同一の事業体において原子力部門に従事する従業員に限り特別の措置を講ずることは、他部門の従業員との間においてバランスを失することになること ③従業員災害を責任保険等の損害賠償措置で填補する場合には、それだけ一般第三者に向けられる分が少なくなること ④従業員災害を填補するための新しい損害保険を損害保険業界において創設することとなり、検討を進めることとなったこと等の理由により、当面現行賠償法を改正する必要はないものと考える。
しかし、この問題については、今後とも原子力事業者の従業員の一層の保護のため、慎重に検討を続けることが必要である。また、別に労働者災害補償保険制度については、その給付水準、給付範囲等の改善につき検討が加えられることが望ましい。
Ⅴ その他
(1)責任保険の填補範囲
現行賠償法では、損害賠償措置額までの原子力損害について、民間の責任保険で填補されない原子力損害(地震、津波、噴火、正常運転に起因する損害、事故発生後10年以降の請求、および保険会社に対する通知義務違反に係る損害)について、政府の補償契約により填補している。
このうち、通知義務違反に係る損害については、現行賠償法制定時には、海外再保険市場の制約があり、補償契約により填補することになったが、その後海外再保険市場の制約もなくなったので、民間の責任保険で填補することとし、ただし、現在補償契約で行なっているように、事後に原子力事業者から填補金を返還させることが妥当である。
(2)敷地内にある財産および輸送手段に対する損害
原子炉の運転等が行なわれている施設と同一の敷地内にある原子力事業者以外の者の財産(たとえば建設中の第2号原子炉、建設機械)に対する原子力損害および核燃料物質を運転中の輸送手段(たとえば船舶、航空機、トラック)に対する原子力損害については、現行賠償法上原子力事業者の損害賠責任の対象となるか否か明文の規定はないが、運用上、敷地内にある財産は対象外とされており、また輸送手段に対する損害は対象とされている。
最近わが国においては、同一敷地内に第2号原子炉が建設される事例が増加するとともに、使用済燃料を含む核燃料物質の運搬が増加しつつあるが、原子力事業者と特別の契約関係にある者のこれら敷地内にある財産および輸送手段に対する原子力損害を対象とする場合には、損害賠償措置からの一般第三者に対する支払額がその分だけ減少することになる。
したがって、敷地内にある財産のうちの建設機械等および核燃料物質を運搬中の輸送手段に対する損害については、賠償法上の原子力事業者の責任を対象とするとしても、損害賠償措置額のうち、一定の金額は一般第三者に優先的に支払う分として確保されるよう、損害賠償措置に一定の内枠を設けるとか、財産保険で填補させるとかにすることが妥当である。ただし、敷地内にある財産のうち建設中の第2号原子炉についてはいずれ完成後は原子力事業者の財産に帰属するものであり、一般第三者への支払分を確保するために、これに対する損害は、原子力事業者の財産保険で填補させることとし、損害賠償措置からの支払いの対象外とすることが妥当である。
(3)核燃料物質を運搬中の責任の所在および損害賠償措置
現行賠償法は核燃料物質を運搬中に原子力損害が発生した場合には、一律に受取人である原子力事業者が損害賠償責任を負うこととされており、かつ、そのための損害賠償措置を一回ごとの運搬について講じている。
核燃料物質を運搬中の責任を運送業者でなく、原子力事業者に集中することについては、現在のところ特にこれを変更する必要はないが、発送人および受取人のうち、いずれの原子力事業者が責任を負うかについては、一律に受取人である原子力事業者とすることは、実務上の問題等もあるので、諸条約等を参考に、原則として原子力事業者間の契約に委ね、責任を負った者が損害賠償措置義務を負うこととする。また損害賠償責任の所在についての特段の契約がない場合には受取人ではなく発送人である原子力事業者が損害賠償責任を負うこととすることが妥当である。
さらに、核燃料物質の運搬の際の損害賠償措置は事務処理簡素化のため、また損害賠償措置の講じ洩れを防止するためにも一定期間の運搬をまとめてする包括予定保険契約方式を導入することが望ましい。
(4)原子力事業者の求償権の制限
現行賠償法では、原子力損害を賠償した原子力事業者は、その損害が、①一般第三者の故意または過失により生じた場合はその者に対し ②資材もしくは役務の供給者またはその従業員の故意により生じた場合は、それぞれその者に対し、求償権を有することとし ③ただし、求償権に関し特約をすることを妨げないとしている。
しかしながら、たまたま過失で核燃料物質を運搬中の輸送手段等と衝突したために、一般の第三者が巨額の求償を受けることになるのは、その者にとって酷であり、さらに現行賠償法の責任集中の原則を徹するためにも、諸条約等を参考に原子力事業者の求償は、関連事業者の場合と同様一般第三者に対しても、故意ある場合に限定することが妥当である。
さらに故意の内容も諸条約のように「原子力損害を発生させようとする」故意に限定することが望ましい。
(5)過失相殺
被害者に故意または過失のあった場合の損害賠償額の減額について、現行賠償法は、特に規定しておらず、したがって、民法の一般原則に基づくことになり、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、これを斟酌しうることになる。
しかしながら、たまたま核燃料物質を運搬中の輸送手段等と衝突し、原子力損害を被った場合等の被害者について、被害者側に過失があったからといって民法の過失相殺の原則をそのまま適用することは、当該被害者に酷であると考えられるので、過失相殺の適用を故意(または故意、重過失)の場合に限る等の配慮をすることが望ましい。
(6)運搬中の天然ウラン、放射性生成物および廃棄物の取扱い
現行賠償法では、天然ウランの運搬は対象となる一方、放射性生成物および廃棄物の運搬は対象とならない。
しかしながら、天然ウランについては、運搬中の原子力事故の危険性はほとんどなく、また、諸条約でもこれを除外しているので、これを参考に天然ウランの運搬は対象外とすることが適当である。
また、放射性生成物および廃棄物については、原則として賠償法の対象とすることが望ましいが、ただ工業用、農業用、医療用等のラジオアイソトープについては、諸条約等を参考とし、かつ、その危険の程度も勘案した結果、これを除外することが望ましい。
(7)原子力船および核燃料物質運搬中の船舶に係る損害賠償請求権の消滅
現行賠償法では、損害賠償請求権の消滅に関し特別の規定をおいていないので、陸上原子力施設に起因する原子力損害については民法第724条の3年の消滅時効の規定が、原子力船および核燃料物質運搬中の船舶の衝突に起因する原子力損害については商法第798条の1年の消滅時効の規定が適用になる。しかしながら、商法第798条の1年の時効は、原子力損害の遅発性を考慮すると被害者に酷であり、かつ、陸上原子力施設の場合とアンバランスであるので、これら船舶の衝突に起因する原子力損害についても民法の規定が適用されるよう措置することが妥当である。
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