44原委第289号
昭和44年8月29日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長
日本原子力発電株式会社敦賀発電所の
原子炉施設の設置変更について(答申)
昭和44年7月2日付け44原第3520号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。
記
日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更に関し、同社が提出した変更の許可申請は、核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は、次のとおりである。
日本原子力発電所敦賀発電所の
原子炉施設の設置変更に係る安全性について
昭和44年8月26日
原子炉安全専門審査会
原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
日本原子力発電株式会社敦賀発電所の
原子炉施設の設置変更に係る安全性について
当審査会は、昭和44年7月3日付け44原委第211号をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。
Ⅰ 審査結果
日本原子力発電株式会社敦賀発電所原子炉施設の設置変更に係る安全性に関し、同社が提出した、「敦賀発電所原子炉設置変更許可申請書」(昭和44年6月30日付け)に基づいて審査した結果、本原子炉施設の設置変更に係る安全性は、十分確保しうるものと認める。
Ⅱ 変更事項
本変更は、敦賀発電所原子炉施設の安全保護回路の補助保護機能の一部について、動作条件を次のとおり変更するものである。
1.炉心スプレイ系起動信号
(1) ドライウエル内圧高
(2) 炉内水位異常低下及び原子炉圧力低下の同時信号
(従来 (1)ドライウェル内圧高、(2)炉内水位異常低下 )
2.格納容器冷却系起動信号
ドライウエル内圧高及び炉内水位異常低下の同時信号
(従来ドライウエル内圧高)
3.主蒸気逃し弁起動信号
ドライウエル内圧高及び炉内水位異常低下の同時信号
(従来 ドライウエル内圧高、炉内水位異常低下及び高圧注水系不動作の同時信号)
Ⅲ 審査内容
1. 安全設計及び安全対策
本変更により、原子炉施設の核・熱設計には変更なく、補助保護機能の動作条件の一部を変更するものであって、変更に係る原子炉施設は十分な安全性を有するものであると認める。
(1) 炉心スプレイ系起動信号
炉心スプレイ系は、原子炉の圧力が低下しないと炉心に水をスプレイすることができない。
したがって、この炉心スプレイ系の起動信号を炉内水位異常低下及び原子炉圧力低下の同時信号としても、この系の機能をそこなうことはないと認められる。一方、外部電源が喪失すると、給水ポンプなどの停止により炉内水位異常低下を招き、従来の動作条件ならば炉心スプレイ系が自動的に起動する。
しかるに、本原子炉施設の場合、炉心スプレイ系の起動によって、ドライウエル内ガス冷却系には電気が供給されなくなるためドライウエル内圧高となり、炉内水位異常低下及びドライウエル内圧高の同時信号で格納容器冷却系及び主蒸気逃し弁が起動することになる。
このような、破断事故を伴なわない炉内水位異常低下が生じた場合に、格納容器冷却系及び主蒸気逃し弁が起動することは好ましくないので、この動作条件の変更は適切なものであると認められる。
(2) 格納容器冷却系起動信号
本原子炉施設では、ドライウエル内に窒素を約0.07kg/cm2Gで充填している。このガス補給系の誤動作あるいは誤操作によっては、ドライウエル内圧高となることが考えられる。また、ドライウエル内ガス冷却系がなんらかの理由で停止した場合、ドライウエル内の温度が上昇し、その結果同様にドライウエル内圧高となることが考えられる。このような場合、従来条件では、破断事故とは関係なく、格納容器冷却系が作動し、格納容器内の機器を使用不能とすることが予想されるが、このような事態は好ましいことではない。一方、破断事故の場合には、必ず炉内水位異常低下及びドライウエル内圧高の信号が発生すると考えられるので、今回の変更で格納容器冷却系をこの同時信号としても、この系の所定の機能をそこなうものではないと認められる。また、この系は手動においても動作可能であり、この動作条件の変更は適切なものであると認められる。
(3) 主蒸気逃し弁起動信号
配管破断事故が発生した場合、高圧注水系が作動するが、破断箇所が高圧注水系の接続箇所より原子炉側の場合、高圧注水系は機能を果していないにもかかわらず高圧注水系不動作の信号は発生しない。このため、従来の条件では、主蒸気逃し弁は作動しないこととなる。
したがって、主蒸気逃し弁の起動同時信号から高圧注水系不動作の信号を取り除き、ドライウエル内圧高及び炉内水位異常低下の同時信号とすることは適切なものであると認められる。
2.災害評価
変更に係る本原子炉の各種事故について検討したが、本変更によって、炉心スプレイ系、格納容器冷却系及び主蒸気逃し弁の起動信号が変っても、各種事故に対応する補助保護機能は、変更前と同様に動作し、原子炉の安全性について新たな問題が生ずることはない。
また、災害評価についても、本原子炉の設置の際の審査における評価の内容と変わることなく、周辺の公衆に対し、障害を与えることはないと認める。
Ⅳ 審査経過
本審査会は、昭和44年7月8日第71回審査会において、次の委員からなる第56部会を設置した。
審査委員 |
大山 彰(部会長) |
動燃事業団 |
竹越 尹 |
電気試験所 |
牧野 直文 |
日本原子力研究所 |
調査委員 |
海老塚 佳衛 |
東京工業大学 |
村主 進 |
日本原子力研究所 |
同部会は、本設置変更の安全性について、次表のとおり調査審議を行なってきたが、昭和44年8月18日の部会において部会報告書を決定し、同年8月26日第72回審査会において本報告書を決定した。

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