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在欧科学アタッシェ会議(パリ)



 10月3日午前9時30分より、ジョルジュ・サンク小会議室において長官他一行、大使館より香川参事官他2名、在欧科学アタッシェ6名が出席して第1回の科学アタッシェ会議が開催された。

 冒頭香川参事官から開催地側大使館として歓迎の言葉があり、次いで村田局長からわが国における最近の科学技術政策の動向と、問題点について概略説明し、その後英(伊原)ソ(高素)、OECD代表部(岩本)、仏(福永)、西独(柳田)墺(大沢)の順序で、それぞれの任国における科学技術政策の特色、最近の問題等につき報告があった。

 最後に長官より各科学アタッシュに対し、その任務の重要性を改めて強調するとともに、今後の一層の活躍を期待する旨の説示があり、会議を終った、各アタッシェの主なる発言要旨以下の通り。

(提出資料は第Ⅲ部に収録)

〔英国〕
 ウイルソン内閣は軍事研究を平和研究へ転用する方策をとっている。

 技術格差については、他の欧州諸国におけるほど大きな議論になっていない。

 反面、米国への頭脳流失が深刻であり、また科学系大学の定員増にかかわらず、理工系志望者が少なく、欠員を生じている。

 原子力関係では、1975年までに1,300万KW完成、1976~1985年までに5,000万KWうち50%はFBRを予定、宇宙開発関係では、年間300億円を投入しているが、その割に大きな成果をあげていない。

 関係省庁が入り交り、長期見通しが明確でない。

 一般に斜陽化の感があるが、政治経済問題では、永年培った底力がある。
〔ソ連〕
 ソ連の科学技術政策の問題は、科学アカデミー、各省研究部門および生産工場間の総合調整が不十分な点とされている。

 (研究と生産の結びつきが弱い)生産企業と研究機関(大学をふくむ)との間の研究契約の拡大を推進中(プレミアム・ファンド制度の導入)、技術格差については、ソ連の天然資源について関心のある分野の技術レベルは相当高いが、その他の部門、たとえば、化学工業、エレクトロニクスについては技術レベルが不足している。

 原子力発電について公式発表はないが、1967年現在約100万KW、1975年に数百万KW、1980年に数千万KWといわれている。

 熱中性子炉についてはPWR。他は高速炉に力を入れている(BR-350建設中、BR-1000計画中)。

 宇宙開発についても公式発表はないが、科学アカデミーが訓練、計画、研究用ロケットを担当、工業各省が実用ロケット開発、通信衛星の開発を担当している。
〔OECD代表部〕
 加盟諸国の経済成長に最大の関心。

 第3回科学担当閣僚会議が明年3月に開催されるが、議題は①技術格差問題、②科学技術情報、③基礎研究とくに技術格差については、第2回閣僚会議において設けられたWPの調査研究結果が提出されるので、日本よりの参加をとくに要請されている。

 European Institute of Seience & Technology、科学情報のための欧州センターの設置案などが問題になっている。

 また教育投資効果の検討と関連し、マンパワーの数よりも質の向上が問題とされてきている。
〔仏〕
 最近決定された第5次経済社会開発計画において5ヵ年間の投資は400億フランを予定。

 従来各省にまたがっていた研究機関の統合化がすすんでいる、海洋開発研究所、情報自動化研究所がいずれも総理府に統合しておかれた。

 基礎研究を工業化に成功させる面が弱いとの反省がある、電子計算機開発計画を昨年より実施中、1969年にフランスの開発した第1号機が、サクレー・センターで完成の予定。

 宇宙開発については、米国に依頼して1コ、自国で4コ計5コの衛星の打上げに成功しているが、ロケット開発は完全な軍機に属す。

 衛生関係は宇宙本部が統括し1967年で第1段階を終了。

 1968年から実用衛星(通信等)を目指して第2段階に入る。

 ELDO、ESLOの有力メンバーであるが、12国間協力に重点を指向して来ている。

 原子力開発については、EDF型(炭酸ガス冷却)で行くか、軽水型で行くかが論争されている。

 高速炉についてはラプソデー(20MWt)が本年1月完成、運転成績良好のため、50万KW級実用プロトタイプを1969年から1年くり上げ建設着手する考えがある。
〔西独〕
 ストルテンベルグ大臣就任以来、長期計画の策定、予算の拡大を約束し、着々実現して来ている。

 最近中期財政計画が閣議決定され目下国会で審議中であるが、財政全体の伸び率6%に対し科学技術関係は16%の伸びを確保している。

 宇宙開発、原子力開発ともに長期計画を策定し新しい段階に入る。

 このように積極的になった理由は、①米国との技術格差、②核拡散防止条約の関係から、どうしてもこれからは技術を持たなければならないとの認識が高まって来たことによる。

 大学の増設が問題となっているが、入学希望者がそれほど伸びない悩みがある。

 また連邦政府と州政府との関係で全体をとりまとめ調整することが困難。

 従来から、宇宙、原子力、一般科学技術(基礎研究)が3本の柱とされていたが、最近、技術情報処理が重視され、1966年本問題に対する各省間委員会が設立された。

 目下5ヵ年計画作成中であり、およそ300億円を電子計算機開発に投入するという。

 宇宙開発も立ち遅れて出発したため、各国に追いつくため本年7月長期計画を閣議決定し、1971年までの開発が約束された。

 動力炉開発については、高温ガス炉と高速炉に力を入れ、後者では蒸気冷却型とナトリウム冷却型の2方式をとり上げている。
〔墺・IAEA〕
 第11回総会における各国代表演説の主なる内容について

事務総長:核拡散防止条約の成立を強く要望、IAEAが安全保障措置の確保に重要な役割を果すことを要望。

 従来通り技術援助の増大と原子力平和利用の発展を期待するとともに、米国の新しい考え方に協力し、他方ソ連の推す国際原子力情報組織の設立を希望する。

米国代表:アグロ・インダストリアル・コンプレクス(農業と工業を原子力開発によって結びつける考え方)を提唱、その研究をオーリッジで開始している。

 二重目的発電炉により安価な豊富な電力を利用し、農地開発・肥料生産ひいては作物増産をはかる、未開の沙漠に大都市を建設する等新しい分野の開発を提案した。

ソ連代表:ベトナム戦争について米国を真向から非難。

 核拡散防止条約の成立促進を強調、その際IAEAを唯一の査察機関とすること。

 この点に反対する西独を攻撃、自国の原子力開発については全くふれず。

英国代表:研究開発計画にプライオリティをつける方針、とくにプラズマ研究と核物理研究については、今後5年間で従来の計画の半分に減らす、ただしその間にも良い気ざしが現われれば元に戻すという政策。

西独代表:IAEAの保障措置制度について立入った主張を行ない、核拡散防止条約を保障措置で裏付けするからには無差別実施が必要。
 東欧諸国が西独のIAEA査察適用を条件とする態度に反撥、エラトムは査察機関と して完全にinternationalであり正当性を有する。
 査察はmaterial flowを追うことで十分であり、今後査察の自動化の可能性を追求すべきである。

仏代表:保障措置をIAEAの一般資金でまかなうのは不合理であり、関係国の間で別途負担すべし、技術援助についても問題あり。

インド代表:IAEAの保障措置についてはフランス代表と同様の意見。
 なお、会期中、米国、ソ連およびカナダの原子力専門家から特別講演が行なわれた。
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