第3回中共核爆発実験に伴う環境放射能調査について
昭和41年5月9日、中共政府は「5月9日北京時間午後4時、中共西部地区上空で熱核材料を含む核爆発実験に成効した」と発表、放射能対策本部(昭和36年10月閣議決定)はこれに対処するため、本部会2回、幹事会3回を開催し、その対策について協議した。
核爆発実験の実施が伝えられてから1日余を経過した5月11日の朝6時には新潟で放射性巨大粒子が発見され、さらに同日午前中には全国各地でその降下が確認された。
今回は従来(第1、第2回中共核爆発実験)に較べて、巨大粒子の飛来時間が短かいこと(従来は2~3日)、その比放射能が比較的強いこと(1個当り1μcにも達するものもあった)、フォールアウトの降下期間が短く、その殆んどが巨大粒子(直径3~23μ)として降下し、Dry falloutおよびRain outとしての降下が極めて少なかったことなどを特徴としてあげることができる。
なお、第3回中共核爆発実験前後のわが国の放射能対策本部の動きおよび環境放射能の測定調査結果は次の通りである。
放射能対策日誌
5月10日 第46回放射能対策本部幹事会
第3回中共核爆発実験に対処し、放射能調査体制の強化および報道体制について協議。
5月12日 放射能対策関係閣僚会議
政府は中共の核爆発実験対策について、関係閣僚会議を開催し、放射能対策本部の強化およびその活動について協議。
5月12日 第10回放射能対策本部会
第3回中共核爆発実験とわが国の環境放射能の変化及びその対策について協議し、本部構成員の増加を決定。
5月13日 第47回放射能対策本部幹事会
関係省庁における放射能調査結果の検討および今後の予想ならびに幹事会構成員の増加等について協議。
5月17日 第9回放射能対策本部長顧問会議
第3回中共核爆発実験を含め、放射能対策全般について、対策本部長顧問諸氏の意見を聴取。
5月17日 第11回放射能対策本部会
関係省庁における放射能調査結果の報告と今後の措置および見とおし等について協議。
5月18日 第48回放射能対策本部幹事会
今後の放射能調査体制、現在までの調査結果等について協議。
|
(Ⅰ)地表浮遊塵の全β放射能
 |
(Ⅱ)雨水中の全β放射能降下量

(Ⅲ)放射性巨大粒子の核種分析結果
(1)機器分析
(a)放射線医学総合研究所
Mo99,Tc99m,Ce143,Zr97-Nb97,Ba140-La140,I131,I133
(b)大阪府立放射線中央研究所
Np239,Mo99,Ce141,Zr97-Nb97,Ba140-La140,Nd147,※U237
(e)新潟大学理学部
Np239,Zr97-Nb97,Mo99,Ce143
ただし,※は雨水を用いて確認。
(2)化学分析(気象研究所)
核種 |
放射能(%) |
U-237 |
0.9 |
Np-239 |
0.5 |
Mo-99
Te-132
Ru-103 |
5.1 |
Sr-89
Ba-140 |
6.8 |
Rare Earths |
76.6 |
Zr-95,Nb-95 |
10.1 |
ただし、放射能(%)は核爆発実験後16日目の値である。
|
|