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昭和41年度原子力開発利用基本計画 |
Ⅰ 基本方針 わが国における原子力の研究開発は着手以来約10ヵ年を経過し、この間、海外における研究開発の成果を吸収しつつ、その計画的な推進がはかられてきた。しかしながら、今や基礎的研究から実用段階に移行するという重大な時期にさしかかっており、動力炉の開発、原子力船の建造等、種々克服すべき問題も生じてきている。 本年度においては、これらの問題の解決をはかりつつ、原子力各分野の諸事業を「原子力開発利用長期計画」(昭和36年2月策定--以下「長期計画」という。)の基本線に沿って、効果的に推進する。なお、最近の原子力開発利用をめぐる内外の情勢の変化を考慮して、原子力発電の規模、動力炉開発の方針等につき再検討し、その検討結果をおりこんで、長期計画に必要な改訂を行なう。 動力炉開発については、近く決定する研究開発に関する基本方針に基づいて、新型転換炉および高速増殖炉の調査、研究および開発の実施計画を早急に策定して、その推進をはかり、また、在来型導入炉の建設、国産化および安全性に関する研究を促進する。これに関連して、在来型導入炉用燃料の国産化、プルトニウム燃料の研究開発および使用済燃料再処理施設の建設計画を重点的に推進する。また、原子力発電の推進をはかるため特殊核物質を民有化する方向で、これに必要な国内的および対外的措置の具体化をはかる。 原子力船の建造については、「原子力第一船開発基本計画」の実施上の問題点を検討し、すみやかに建造契約を締結し得るよう計画の推進をはかるとともに、原子力船付帯陸上施設の建設準備を行なう。 放射線利用については、引き続き各分野における放射線利用に関する研究を促進するとともに、放射線化学に関する中間規模試験を実施する。また、食品の放射線照射に関する研究推進の方針を定める。 安全対策については、原子力施設の安全確保および放射線障害の防止に必要な措置をとるとともに、環境における放射能調査ならびにこれらに必要な研究を推進する。 東海地区原子力施設地帯の整備については、同地区に原子力施設が集中している特殊事情にかんがみ、道路の整備および有線放送施設の設置をはかる。 国際協力については、従来から行なわれている二国間協力および国際原子力機関、欧州原子力機関等を通ずる多数国間協力を一層促進し、さらに、ユーラトムとの協力関係を樹立する等協力関係を積極的に推進する。特に、動力炉の研究開発の分野における国際協力の成果を期待する。 米国および英国との原子力協力協定の有効期限が遠からず到来することにかんがみ、最近の情勢をも考慮してその改訂方針を検討し、所要の改訂交渉を行なう。 以上のほか、民間の研究助成、科学技術者の養成訓練の促進、調査普及活動等必要な施策を講ずる。 Ⅱ 事業の大綱 1. 研究開発の推進 (1)基礎研究 原子力研究開発に関連し、将来、わが国独自の創意を発展せしめることを目的とした基礎研究を日本原子力研究所および国立試験研究機関において推進する。 これ等基礎研究は大学における研究とも緊密な連けいのもとに推進する。 また、これらの研究のため日本原子力研究所の施設の共同利用を積極的に行なう。 (2)動力炉に関する研究開発 近く決定する研究開発に関する基本方針に基づいて、新型転換炉および高速増殖炉の調査、研究および開発の実施計画を策定して、その推進をはかり、また、在来型導入炉の国産化のための研究開発を促進する。 このため、材料試験炉の建設、動力試験炉(JPDR)の整備、高速増殖炉臨界実験装置の建設のほか必要な施設の整備をはかる。 (イ)新型転換炉(3)原子力船に関する研究開発 (イ)原子力第1船(4)核燃料に関する研究開発 (イ)ウラン燃料(5)放射線の利用に関する研究開発 (イ)放射線化学(6)核融合に関する研究 日本原子力研究所、理化学研究所および電気試験所は、高温プラズマに関する基礎研究を引き続き行なう。また、これ等基礎研究は大学における研究と密接な連けいのもとに推進する。 (7)安全対策に関する研究 (イ)原子力施設の安全性2. 原子力利用の促進 (1)原子力発電 日本原子力発電(株)の第1号炉に続き、2号炉の建設準備が進められている。さらに電気事業者による3号炉以降の建設計画についても積極的に検討が進められているが、長期計画に示された原子力発電計画に沿って、その実現をはかる必要がある。そのため上記の国産化のための研究開発をすすめるとともに、特殊核物質の民有化、使用済燃料再処理施設の建設等必要な措置を講ずる。 (2)アイソトープの利用 アイソトープの利用の促進をはかるため、日本原子力研究所は、アイソトープ事業部の体制を整備する。 また、日本放射性同位元素協会が行なうアイソトープ利用にともなう廃棄物回収事業を助成する。 3. 安全対策 (1)原子力施設の安全確保および放射線障害の防止「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」および「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」の施行に万全を期するとともに、引き続き安全基準および緊急時対策策定のための検討をすすめる。 (2)放射能調査 放射線医学総合研究所等の国立試験研究機関および地方公共団体等は、一般生活環境、食品および人体の放射能水準を調査する。とくに、放射性降下物によるストロンチウム、セシウム等長半減期核種の放射能水準調査、原子力施設地域および原子力艦寄港にともなう港湾等の放射能調査に重点をおく。 4. 核燃料物質等に対する措置 (1)核原料物質の探鉱 本年度における核燃料物質の探鉱は、別途定める「昭和41年度核原料物質探鉱計画」に従って行なう。 また、原子燃料公社および地質調査所による今後の探鉱を計画的かつ効率的に推進するため、核原料物質開発促進臨時措置法を改正し、同法を今後10ヵ年間存続せしめるものとする。 (2)核燃料物質等の需給 本年度における核燃料物質等の需要量は、天然ウラン(金属ウラン換算)約70トン、濃縮ウラン(ウラン235換算)約110キログラムおよびプルトニウム約3.5キログラム等が見込まれている。 このうち、濃縮ウラン、プルトニウム等は外国からの輸入により確保し、試験研究用に使用する天然ウラン(金属ウラン換算)10トンについては、原子燃料公社の試験生産により得られたものを充当する。 (3)使用済燃料の再処理 原子燃料会社は、1日当り処理能力0.7トンの天然ウランおよび低濃縮ウラン用再処理施設を建設するため、その詳細設計を行なう。また、これと並行して使用済燃料の国内輸送についての調査をすすめる。 なお、JRR-2の高濃縮ウランについては米国での再処理を実施する。 (4)核燃料の加工 核燃料の国産化上問題となる技術的、経済的諸問題について検討を行ない、核燃料加工事業の基盤の確立に努める。 5. 関連諸施策 (1)民間の研究助成等 本年度は、引き続き軽水冷却型またはガス冷却型動力炉用燃料の設計または製作技術に関する研究に重点をおいて民間の研究を助成する。 また、原子力研究用物品等の輸入関税免除等税制上の措置を引き続き講ずる。 (2)国際協力 日米関係については、わが国の商業用原子力発電計画の進展、米国の特殊核物質の民有化等の内外の諸事情の変遷を考慮して所要の検討を行ない、日米原子力協力協定の更改の交渉をすすめる。また、核燃料および原子炉の安全性に関する研究については、その協力関係を一層深める。 日英関係については、昭和43年12月期間満了となる日英原子力協力協定について更改の準備を始める。 国際原子力機関については、従来どおり、その活動に積極的に参加し、欧州原子力機関については、計算機プログラミング・ライブラリー、核データー・センター等の同機関の事業に参加する。 その他の国際協力については、ユーラトムとの協力をはじめとして、わが国の原子力開発促進に必要な協力を積極的に推進する。 (3)科学技術者の養成訓練 各大学が、原子力関係講座および実験諸施設をさらに充実し、関係科学技術者の教育、訓練を行なうことを期待する。 日本原子力研究所および放射線医学総合研究所は、昨年度とほぼ同規模の養成訓練を行なう。 なお、専門的な知識を海外から習得するため引き続き海外留学生を派遣する。 (4)原子力施設地帯の整備 茨城県東海村周辺地区について、その計画的に調和のとれた発展をはかるとともに、万々一の事故に備えての十分な態勢を確保するため、昨年8月の委員会決定の方針にそって、道路の整備および有線放送施設の設置に必要な措置を講ずる。 (5)原子力発電所の立地調査 引き続き原子力発電所の立地調査を新たな地点について行なう。 (6)調査普及活動 内外における原子力関係情報の調査を引き続き推進するとともに、とくに本年度は動力炉研究開発計画の推進に資するため、核燃料サイクルのあり方および動力炉開発に関連する科学技術者の実態等に関する調査を実施する。 また、アイソトープ利用の振興方策の確立に資するため、アイソトープ工業利用の実態調査を行なう。 原子力知識の普及活動に関しては、関連諸機関の協力により一層これを強化し、原子力映画、原子力デー、講演会、講習会等による普及活動を行ない、健全な知識の育成につとめる。 また、主として原子力関係国内技術の普及に資するため、引き続き、原子力平和利用研究成果報告書を刊行するほか、日本原子力研究所等各原子力開発機関は、研究、調査報告書および各種資料を公表する。 6. 原子力開発機関の整備等 日本原子力研究所は、諸事業を円滑に推進するため人員の充足および諸施設の整備をはかる。東海研究所における高速臨界実験装置建家および高崎研究所における3号加速器の建設をそれぞれ完了する。さらに、大洗地区における材料試験炉の建設を引き続き行なう。 原子燃料公社は、再処理施設の設計およびプルトニウム燃料の開発に重点をおいて人員の充足をはかる。 放射線医学総合研究所は、第2研究棟の建設に着手する。 理化学研究所は、引き続きサイクロトロンの建設を行ない、年度内に完成するほか、バン・デ・グラーフ型加速器の建設に着手する。 そのほか、国立試験研究機関は、必要な施設の整備をはかる。 7. 予算および人員 本年度における原子力開発利用を推進するために必要な原子力予算および人員は、次表のとおりである。 昭和41年度原子力関係予算総表 ![]() |
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