目次
I 概要
1−1 調査の趣旨と結果
1−2 原子力発電コスト試算の前提条件
1−3 原子力発電コスト
1−4 原子力発電コストと火力発電コストとの比較
(1)試算の対象とした炉
(2)試算の種類
(3)算定方式
(4)コスト算定上の諸因子
(5)試算結果
2−2 火力発電との初年度コストの比較
(定額償却)
(1)比較の対象とした火力発電所
(2)算定方式
(3)算定上の因子
(4)発電コストおよび原子力発電との初年度コストの比較
2−3 火力発電との平均コストの比較
(減債基金償却)
(1)比較の対象とした発電炉および火力発電設備
(2)算定方式
(3)算定上の諸因子
(4)算定結果(比較)
(1)発電原価比較表(第18表)
(2)建設費項目別算定表(第19表)
(3)工事期間中の資金計画(第20表)
(4)昭和37年度資金繰予定表(第21表)
(1)建設費総表(第22表)
(2)建設費(項目別)(第23表)
3−5 各国の原子力発電所の建設費および発電費(第24表)
I 概要
1−1 調査の趣旨と結果
最近米国において1発電所あたり50万kW、あるいは100万kWにもおよぶ大容量の原子力発電所の建設計画があいついで発表された。これは技術の進歩により在来火力発電所とほぼ同じ規模の原子力発電所の建設が可能となったことを示すとともに、経済性においても原子力発電コストが著しく在来火力発電の線に近づいてきていることを示すものである。
このように原子力発電所の規模の増大と発電コストの低下は米国のみならず英国、フランスなどについても同様で世界的な傾向となっている。このような背景のもとにわが国の原子力発電計画を推進するにあたっては、現段階において原子力発電コストをできる限り正確に把握しておくことが必要であると考えられる。この趣旨から地震対策、あるいはわが国の特殊事情による追加安全対策費を考慮しながら海外において運転中、または建設、計画中の原子力発電所のコストを基礎として
(i)発電炉を海外から導入した場合の発電コストの評価
(ii)原子力発電コストと火力発電コストとの比較を行なった。
この調査は科学技術庁原子力局、通商産業省公益事業局の関係者の協力によって実施された。
この調査においては発電炉として米国の軽水減速冷却炉の中から発電コスト算定のための前提条件が比較的明らかにされているヤンキー炉(正味電気出力141MW)およびボデガベイ炉(正味電気出力313MW)をとった。ただし、ヤンキー炉に1960年に運転を開始して以来満2年を経過しているのに対し、ボデガベイ炉はまだ計画中のものであり、また出力規模においてもボデガベイ炉はヤンキー炉の約2倍となっている点からみてもこれらの発電コストの比較をもって両者の優劣をあらわすと考えるのは適当でない。
発電コストの計算方法としてはIAEAのまとめた「原子力発電の経済計算方法」を採用し、また計算の前提条件は対比の便をはかるためできるだけ火力発電コストの前提条件と同じにした。
試算の結果
わが国に原子力発電所を建設した場合、ヤンキー炉で1kWhあたり490銭前後(負荷率80%)、ボデガベイ炉で1kWhあたり290銭前後(負荷率80%)になった。
これに対して新鋭の重油専焼火力は1kWhあたり282銭(重油価格75銭、負荷率70%)、石炭混焼火力は370銭(石油価格83銭、負荷率70%揚地)と試算されている。
したがって近い将来に原子力発電所を日本に建設した場合、新鋭の重油専焼火力よりはやや高く、石炭混焼火力よりは安い結果となった。エネルギー問題における経済性と供給の安定性という両面の要請を考えればこの試算は今後のわが国のエネルギー供給構造における原子力発電の位置付けを行なう上に一つの示唆を与えるものと思われる。
1−2 原子力発電コスト試算の前提条件
原子力発電コストの試算にあたっては、米国で開発されている軽水減速冷却型炉を導入建設する場合を想定し、この場合の建設費および発電コストを試算した。
試算に必要なパラメーターのなかには、不確定な要素がかなり含まれているが、種々の点を検討し、以下のように、現在の時点において、一応妥当と考えられる前提条件をまとめ、これに基づいてコスト試算を行なった。
試算の前提条件
(1)建設費
土地については、1基当り10万坪とした。原子炉部分については米国から導入するものとしわが国の特殊事情による安全対策費、輸入のための経費を考慮して米国におけるものの40%増とした。電気発生設備については、国内で製作するものとするが、在来火力と異なる部分についての製作経験の相違を考慮して、米国におけるものの10%増とした。
(2)資本費
金利については、燃料以外のものについては火力なみに年8%とした。
償却については、火力の場合の条件と合わせ、耐用年数21年、定額償却(但し、残存価値は火力が10%であるのに対し、原子力は0とした。)年償却率4.76%とした。
各種税金については、国定資産税は建設費の0.47%、事業税は、建設費の0.20%(総収入の1.5%相当)を見込んだ。また、当分の間、利益を生じない見通しであるので、法人税は0とした。保険料率については、建設費の0.35%とした。
(3)燃料費
新燃料および残存ウランの価格は、AEC新価格によりプルトニウムの売戻し価格は9.5ドル/gとし燃料に対する賃貸料は、4.75%および6.5%とした。
また、使用済燃料の再処理費は、米国で処理する場合は、米国原子力委員会の公定価格を、わが国で処理する場合は、わが国の再処理専門部会の試算値を用いた。使用済燃料の輸送費は、20ドル/kgU(米国、日本間)および、10ドル/kgU(日本国円)を用いた。
(4)運転維持費その他
運転維持費は、修繕費と人件費とに分けて火力なみとした。なお、原子力の場合には、第三者賠償責任保険を加えた。
(5)負荷率
原子力の場合は80%とした。これは火力の70%に比べて高いが、原子力発電がベースロードとして使用されることおよび原子力の技術的特性を考えれば妥当な見方であると思われる。
1−3 原子力発電コスト
原子力発電コストの算定にあたっては、米国で開発中の軽水減速冷却型炉のなかから、発電コスト算定のパラメーターが比較的明らかにされているヤンキー炉(正味電気出力:141MW)およびボデガベイ炉(正味電気出力:313MW)をとりあげ、試算の前提条件としては、前節1−2の前提条件を、算定方式としては、IAEAのまとめた「原子力発電の経済計算方法」を用いた。
これらの条件における両炉の建設費を示すと第1表のとおりである。また発電コストの試算結果は、第2表のとおりで、ヤンキー炉の場合で、1kWh当り約4.80〜4.90円であり、ボデガベイ炉の場合で、1kWh当り、約2.90円である。
第1表 建設費

第2表 発電コスト

前節1−3において、原子力発電コストの算定を行なったが、本節では、わが国の火力発電コストとの比較を試みた。もちろん、両発電方式によるコスト比較を行なうにあたっては、その算定基礎がかけはなれては意味がないので、原子力の場合は、さきに用いた前提条件を一部変更して比較した。
比較にあたっては、現在火力発電で用いられている、(1)定額償却方式による初年度コストと、コスト計算において標準的と考えられている、(2)減債基金償却方式による平均コストの2つの場合についての比較を試みた。
また、これらの2方式の比較の前提条件を示すと第3表のとおりである。
第3表 発電コスト比較上の前提条件

(1)初年度コスト
この方式は、現在の火力発電コスト算定において用いられている方式で、21年の定額償却によって行なわれている。したがって、この方式の比較においては、原子力もこの方式に合わせて(第3表参照)計算した。
比較の対象とした火力発電所は、現在わが国で運転中もしくは建設中の川崎(175MW−石炭混焼)、尼崎No.3(156MW−重油専焼)および姫路No.2(325MW−重油専焼)の各発電所で、そのコストは「電源開発の現状」によった。
これらの両発電方式による初年度コストの比較結果を示すと第4表および第1図のとおりである。
(2)平均コスト
前記(1)の初年度コストの算定は、現在火力において行なわれている方式、すなわち、定額償却、初年度コストによって行なわれたが、発電コストの経済計算を行なう場合は、一般に償却方法として、減債基金償却法を用いるのが妥当と考えられている。
この意味から、減債基金償却による平均コストによって、両発電方式による発電コストを比較することとした。この場合の比較の前提条件は、第3表のとおりで、原子力発電所としては、さきのヤンキー炉およびボデガベイ発電炉を比較の対象とし、また火力発電所としては、電源開発方式研究会報告書「電源開発方式の研究」の中から標準的なるものを選び、火力の燃料費は、石炭85銭/kcal、重油65銭/kcalとし、運転費は1,800円/kWとした。
初年度コストとの試算の前提条件の相違は、償却方式の相違によって、資本費率が11%であることと負荷率が共に80%であることである。
平均コストの比較の結果を示すと第5表のとおりである。
第4表 初年度コストの比較(定額償却)

第1図 初年度コストの比較

第5表 平均コストの比較(減債基金償却)

II 各論
2−1 原子力発電コスト
(1)試算の対象とした炉
(イ)ヤンキー炉(加圧水型、正味電気出力:141MW)
(ロ)ボデガベイ炉(沸騰水型、正味電気出力:313MW)
(2)試算の種類
定額償却方式による初年度コスト
(イ)使用済燃料の再処理を米国で行なう場合
燃料に対する金利(または賃貸料)
4.75%/年
6.5%/年
(ロ)使用済燃料の再処理をわが国で行なう場合
燃料に対する金利(または賃貸料)
4.75%/年
6.5%/年
(3)算定方式
IAEA報告書 “Introduction to the Methods of Estimating Nuclear Power Generating Costs”の米国型炉発電コスト算定方式(第6表)を適用
第6表 発電コスト算定方式


(4)コスト算定場の緒因子
(i)主として建設費に関連するもの
(イ)土地
敷地の広さ:10万坪(1基当り) 原電1号炉
土地代:2500円/坪 敷地:約7万坪
(整理地を含む)
10万坪×2500円=2.5億円 坪当たり単価2500円
(ロ)原子炉
原子炉部分の建設費は、安全性輸入
等導入のために、40%(または25%) 値上がりの程 度については、目下検当中
値上りするものと仮定
(ハ)電気発生設備 (火力発電の場合)
電気発生設備関係(タービン・発 輸入:70億円(横須賀火力第1号機)
電機・コンデンサー等)は、国内で製作
されるが、その建設費は、機器が火力の
ものと異なっていて、特別に製作を要する
点を考慮し10%値上りするものと仮定する。 国産:64億円(横須賀火力第2号機)
出所:「電源開発の現状」
(ii)資本費率
(イ)金利(i)燃料以外に対するもの火力なみ
にみて、8%/年とする(UNO3)からUF8への
転換費5.6ドル/kgU 硝酸プルトニウムから
Pu金属への転換費 1.5ドル/g ←IAEA報告書
(参考)
金利は、所要資金の調達方法により異なる。
わが国の電力会社の資金別金利は次のとおり。
社 債 8.5%
借入金
開 銀 6.5%
興・長銀 8.76%
市 銀 8.4%
外 銀 5〜5.75%
資本金 配当10%
(ただし配当を行なうにはこれとほぼ同額の法人税等を計上する必要あり。)
従って、社債・借入金の外部負債の単純平均は、約7.6%となる。
(ロ)償却率(s) 火力
火力と同様にして、定額償却耐用 耐用年数
年数21年(残存価値なし) 21年
4.76%年 残存価値
10%
(参考)
原子力発電については、従来の説では15年から30年位の幅があり、最近では、この中比較的長期間のものが有力である。(IAEAコストレポートでは英国型天然ウランガス冷却型では20年、アメリカの濃縮ウラン型で30年、カナダの天然ウラン重水型では重水40年、原子炉15年、在来部分30年となっている。原電の東海発電所は20年で計算されている。
(ハ) 税金および財産保険料(x)
○固定資産税 0.47%
(参考)
○法人税(0と仮定)
コストが価格をつぐなわないので利率なく従って法人税は一応考えない
(参考)
法人税は、配当の約2/3と考えられるから資本金が建設費の1/3、配当を8%と仮定すると法人税率は、建設費の1/3×0.08×2/3=0.017即ち、実際には、1.7%となる。
○ 財産保険料 0.35%
Pittan 資料の数字をとる
(参考)
米国AEC資料(TID−8513)によれば、原子力発電所の財産保険は、建設費の0.2〜0.7となっている。また、Pittman資料では建設費の0.35%となっている。
(iii)燃料に関連するもの
(イ)燃料価格
新燃料・・・・・・米国AEC公表価格表による。 別表、価格表参照
プルトニウム・・・・・・9.5ドル/g金属とする。
(ロ)燃料に対する金利(または賃貸料)( if )
4.75%/年および6.5%/年 4.75%・・・現行の使用料
6.5 %・・・開銀の金利
(ハ)成型加工費
ヤンキー炉・・・・・・144ドル/kg
ボデカ炉103ドル/kg ←発表データ
加工期間 90日 ←IAEA報告書
(二) 再処理費
米国で処理する場合 28ドル/kgU
17ドル/kgU×1.65=28ドル/kgU ←IAEA報告書
↑
ホールドアップ・クリンアップ率
日本で処理する場合36.7ドル/kgU
22.2ドル/kgU*×1.65=36.7ドル/kgU ←22.2ドル/kgUは再処理専門部会
↑ 報告書800万円/tによる。
ホールドアップ・グリンアップ率 IAEA報告書の値をとる。
(参考)
第7表 燃料再処理費

(ホ)輸送
費用 (ドル/kgU) 期間(日)
新燃料 付録参照
米国−日本 25 60
米国内 1.5 30 ←IAEA報告書
(参考)
例1 JRR−3(天然ウラン)5.6t トートポープ→東海村間
輸送費 4,600ドル→0.82ドル/kgU
例2 約3%濃縮ウラン成型加工済燃料(400ドル/kgU)10トンを輸送する場合(船)−(試算)
(a)輸送費
海上(日米間)70ドル/トン、陸上(国内)10万円
70ドル×1/1,000kg+100,000円/360円×10,000kg×2=0.12ドル/kgU
(b)財産保険
(物価)×0.35〜0.40(一般機械なみ)
400ドル×0.4/100=1.67ドル/kgU
(c)第三者保険
100万ポンドの保険金に対し、400ポンド、保険料率0.04%
400ドル×0.04/100=0.17ドル/kgU
(a)+(b)+(C)=1.79ドル/kgU
使用済燃料 付録参照
費用(ドル/kgU) 期間(日)
国内 10 20
米国−日本 20 60
米国内 16 30 ←IAEA報告書
(参考)
(例1)Hamburg→Hanford 詳細は付録参照
20ドル/kgU(ユーラトムの試算)
(例2)ヨーロッパ→米国
18ドル/kgU(Stresa会議/59.5)
(例3)日本→米国(使用済3%濃縮ウラン2.64トン輸送)
15ドル/kgU(コフィン66トン)
(原子力船専門部会報告書)
(例4) 米国内
12.45ドル/kgU(SL−1674Power Cost Normalizati on Studyによる)
(iv)運転費に関連するもの
(イ)運転維持費 5ドル/kW
運転維持費は、運転保守費と人件費とに分けて一応火力なみとした。
(参考)
運転保守費は火力では1500円/kWまた、人件費は、1人当り年間50万円として150MW級の発電所としては、人員約100名とするとkW当り年間人件費は
50万円×100名×1/150,000kW=330円/kW
したがって、運転保守費は
1500円/kW+330円/kW=1830円/kW≒5ドル/kW
(ロ)流動資本費 2ドル/kW ←IAEA報告書
(ハ)第三者賠償責任保険料率
報告書50億円に対して 6,300万円/年
(参考)
災害補償保険については、現行法上50億円付保することを要するが、その料率は、わが国においては実用規模の炉では全くない。
海外において、若干の例があるが、その料率は立地、安全性、熱出力によって異なり、極めて幅がある。
ピットマン資料では、アメリカにおける料率の1例として次の表を掲げている。
保険金 百万ドル当たり料率 保険料
最初の1,000ドル 40,000ドル 40,000ドル
次の 4,000 〃 20,000 〃 80,000 〃
〃 5,000 〃 8,000 〃 40,000 〃
〃 10,000 〃 4,000 〃 40,000 〃
〃 20,000 〃 2,000 〃 20,000 〃
〃 20,000 〃 1,000 〃 20,000 〃
計 60,000 〃 260,000 〃
これに基づいて、保険金50億円の保険料を算出すると約63百万円となる。
この保険料は建設費(300〜200億円とし)の0.2〜0.3%であり、幾分低過ぎるように思われる。
(ニ) 負荷率 80%
ただし 火力発電と比較する場合は70%
(ホ)燃焼率
各炉のデータをとる
ヤンキー炉:8,100MWD/T ヤンキー炉“ElectricalWorld, May' 62,”
ボデガベイ炉:15,000MWD/T ボデガ炉公聴会資料
(5)試算結果
(イ) 建 設 費
第8−1表 ヤンキー炉(141MWe)建設費

出所:米国における建設費−“Electrical World May,1962”
第8−2表 ボデガ炉(313MWe)建設費

第9表 発電コスト試算結果

第10−1表 運転上のパラメーター(その1)

第10−2表 コスト算定上のパラメーター(その2)

第10−3表 燃料コスト算定′ミラメーター(その3)(燃料前処理・成型加工)

第10−4表 燃料コスト算定パラメーター(その4)(燃料再処理,プルトニウム・クレジット)

第11−1表 総コスト

第11−2表 燃料前処理および成型加工費

第11−3表 燃料再処理費およびプルトニウム・クレジット

2−2 火力発電との初年度コストの比較
(1)比較の対象とした火力発電所
(イ) 川崎発電所
石炭混焼、出力175MW(運転中)
(ロ) 尼崎第三発電所
重油専焼、出力156MW(〃)
(ハ) 姫路第二発電所
重油専焼、出力 325MW(建設中)
(2)算定方式
実績による。「電源開発の現状」より引用
(3)算定上の因子
(イ) 償却方式:定額方式
(ロ) 耐用年数:21年(残存価値10%)
(参考)
火力発電の場合は、各部分の法定耐用年数から計算した総合耐用年数は21年で、電力料金算定上も21年が用いられいている。
(ハ) 負荷率 70%
(ニ)コスト算定上パラメーター
第12表 建設、運転上のパラメーター

第13表 火力発電コスト

第14表 初年度コストの比較

2−3 火力発電との平均コストの比較
(1)比較の対象とした発電炉および火力発電設備
(イ)原子力発電
a ヤンキー炉(141MW)
b ボデガベイ炉(313MW)
火力発電
発電コスト 算定上、標準的と考えられる。火力発電所として次のものを選んだ。
出所:電源開発方式研究会報告書
「電源開発方式の研究」
a 正味電気出力 156MW
石炭混焼火力発電設備
b 〃 156〃
重油専焼火力 〃
c 〃 300〃
石炭混焼火力〃
d 〃 300〃
重油専焼火力〃
(2)算定方式
減債基金償却法による平均コストの比較
○原子力の場合
資本費率の算定において、償却法を定額償却から減債基金償却に切換え、燃料費、運転費等は、定額償却法の場合と同様にした。
○火力の場合
資本費率:原子力と同様の減債基金償却法を適用。燃料費は、石炭:0.85円/kcal、重油:0.65円/kcalとし、運転費は、原子力の運転費と同じにした。
(3)算定上の諸因子
(イ) 建 設 費
○原子力の場合
定額償却初年度コスト算定の場合に同じ。
○火力の場合
第15表 標準的火力発電設備建設費

(i)資本費率
火力、原子力共に同じ
(イ) 金 利(i) 8.0%
(ロ) 償却率(s)
耐用年数21年、減債基金償却
○原子力の場合 1.99% 原子力:残存価値=0
○火力の場合 1.80% 火力 :残存価値=10%
(ハ) 税金および財産保険料(x)
1.02%
資本費率(i+s+x)
原子力・火力共に11%とする 厳密には原子力=11.01%、火力=10.82%
(ii)燃料費に関するもの
(イ)燃料費
○原子力の場合定額初年度コストの場合に同じ
○火力の場合
炭 価 0.85円/kcal
重 油 0.65円/kcal
(ロ) 熱効率
○原子力の場合
定額償却の場合に同じ
○火力の場合(発電端)
石炭 重油
出 力(156MW) 38.6% 38.7%
〃 (300MW) 39.4〃 39.5〃
熱効率変化率
負荷率 変化率
70% 0.96%
80〃 0.97〃 0.96を採用
(iii)運転費に関するもの
(イ)運転維持費
原子力の場合:定額償却方式の場合に同じ
火力の場合:原子力の場合と同じく1,800/kWとした。
(ロ)負荷率 80%
(4)算定、結果
第16表 標準発コストの比較

(参考)
kWh当りの所要熱量(kcal)(j)は次式によった。
j=860/η×100ただし η=熱効率(%)
II 付録
3−1 燃料の価格
第17表 核燃料の価格

3−2 核燃料輸送費
(1)新燃料の輸送費
例−1 JRR−3の場合
5,620kg(天然ウラン)
トートホープ(カナダ)→東海村
輸送費
鉄道
陸上(トートホープ→バンクーバー)
2,780ドル
新日本汽船
海上(バンクーバー→横浜) 960
トラック
陸上(横浜→東海村) 333
保険料 536
計 4,609ドル
0.82ドル/kgU
例−2 半均質臨界装置の場合
86,732g(UO2)15,145g(U235)
輸送費
Packing Charge 104.82ドル
Air Freight 1,377.00
Insurance Premium 477.82
1,959.64
22.6ドル/kg(UO2)
(参考)
JRR−3燃料 輸送関係費(内訳)
往路 ウラン地金 4,000kg
帰路 製品 5,620kg
(A) 往 路
ウランこんぽう費 60,000円
陸上輸送、保管費(国内) 40,000
海〃(横浜→バンクーバー) 284,917
保険料(東海村→バンクーバー) 8,000
422,914円
(B)帰路
(加工費142,560ドル)
鉄 道
輸送費(トートホープ⇔バンクーバー)*
(国外)4,757ドル
新日本汽船
〃 (バンクーバー→横浜) 960〃
保険料 536〃
陸上輸送、保管費(国内) 120,000円
*鉄道輸送は往路を含む。
(c) その他
信用開設費 410,601円
業者金融仲介料 547,461〃
連絡通信費 100,000〃
手数料 1,658,029〃
(2)使用済燃料の輸送費
I 資料−Nuclear Fuel Processingおよび“Cost of Naclear Power”(TID−8531)
A 陸上輸送費(ドル/kgU)
30tキャスク 70tキャスク
(2,000lbU) (7,600lbU)
原子炉サイトから処理工場までの輸送
2.40 1.50
空キャスク返送 2.30 1.40
キャスク借料 2.90 2.00
財産保険* 1.50〜6.00 1.50〜6.00
計 9.10〜13.60 6.40〜10.90
*使用済燃料残存価値(300ドル/kgU)の0.5〜2%
条件 (イ)距離3,000マイル、(ロ)冷却120日以上
B 海上輸送費
$5,000〜10,000 保険料(量に無関係)
その他
(例−1)Hamburg→Hanford $20/kgU
(ユーラトムの計算)
(例−2)ヨーロッパ→USA $18/kgU
(Stresa会議1959年5月)
原子力船専門部会報告書
2,640kg(3.12%)
A 輸送費
○陸 上(San Francisco−Idaho Falls)
〔コフィン重量〕×〔距離〕×2
×0.1ドル/tmile
2.64×25=66t 500mile=6,600ドル
○海 上(日米間)
〔コフィン重量〕×〔距離〕×2
×0.05ドル/tmile
66t 5,000mile=33,000ドル
B 保険料
〔使用済燃料価値〕+〔コフィン価値〕×2
713,400ドル 92,300ドル
×{〔保険料率〕0.01}=8,970ドル
(A)+(B)=39,600ドル→15.0ドル/kgU
C 期 間(年)
UF6→U02 0.3 燃料成形加工 0.3
新燃料輸送 0.1
冷 却 0.25 使用済燃料輸送 0.15
再処理 0.30
Power Cost Normalization Studies(SL−1674)
使用済燃料輸送費=12.45ドル/kgU
新燃料輸送費 = 3.00ドル/kgU
試算例
例−1 PWR(231MWe、13,000MWD.55.4t)
Shipping−0.20ミル/kWh
||
15.5ドル/kgU
(e=0.25 La=20.8トン)
例−2 BWR(306MWe 11,000MWD.56.4t)
Shipping−0.19ミル/kWh
||
15.5ドル/kgU
(e=0.31.La=26.3トン)
3−3 原子力発電(株)東海発電所のコストと資金
第18表 発電原価比較表(37.9)

第19表 建設費項目別算定表(37.9)

第20表 工事期間中の資金計画(37.9)

第21表 昭和37年度資金繰予定表(37.9)

説明
○ ウラン地金代の支払は原研には無関係で、日本政府が米国政府に支払う。したがってこの金額は燃料要素集合体の項目を除き最後に特計した。
○ 工事、機器の分類は詳細内容が不明なものがあるので現在分けられる範囲で分類したが、最終的分類法(勘定科目の整理法)とは若干相違している。
○ ケーブル管路ないケーブルの金器、既設変電所を利用するため、変圧器と所内変圧器間の距離が mとなったため多くなっている。
○ 取水口工事、JPDRの復水器冷却水は隣接のJAPCOから分水する。したがって、海水取水のための海中鋳鉄管敷設ならびにキャナルはJAPCOのそれを利用し原研はcanal傍にポンプ室を設け取水する。このため見かけは取水口工事の費用が小さくなっている。
○ 濾過水および浄水管−JPDRの濾過水および浄水はJPDRに隣接している廃棄物処理場までの既設施設から延長して給水する。したがって、既設施設の費用はJPDR建設費には含まれず、延長給水管のみが計上されているため少額になっている。
3−5 各国の原子力発電所の建設費および発電費 (第24表)
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