原子力委員会

核燃料物質の所有方式について

 原子力委員会は、昭和33年4月4日「核燃料物質の所有方式について」を決定し、核燃料物質については暫らくの間は原則として民間にその所有を認めないことを定めたが、その後における内外の諸条件の整備に伴なって、この際核燃料物質の一部について民有を認めることとし、今回昭和36年9月11日付で下記の如き決定を行なった。

核燃料物質の所有方式について

昭和36年9月11日

原子力委員会

 当委員会は、昭和33年4月、当時におけるわが国の原子力開発をめぐる諸般の事情を勘案し、核燃料物質については、内外の諸条件が整うに従い民間の所有を考慮するが、暫くの間は原則として民間にその所有を認めない旨の決定を行なった。

 その後原子力損害賠償制度の確立、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の改正による厳重な規制措置の整備、国際約束の内容の具体化等平和利用の保障、安全の確保などに関する諸般の体制が十分に整うに至った。

 従って、今後は「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に規定する許可を受けた者に限り、特殊核物質(濃縮ウラン、プルトニウム及びウラン−233)以外の核燃料物質についてその所有を認めるものとする。

使用済燃料について

昭和36年9月11日

原子力委員会

 今回、当委員会は、特殊核物質(濃縮ウラン、プルトニウム、ウラン−233)以外の核燃料物質については民有を認めることを決定し、特殊核物質については、ひきつづき国有または公的性格を有する機関に所有せしめることとした。

 これに関連し、使用済燃料(原子炉で燃焼せしめ、かつ、冷却したもの)については、国際約束にもとづいて相手国に売り渡す場合を除き、国有または公的性格を有する機関に所有せしめる方針とし、関係諸事項について今後検討するものとする。今回の決定に当り原子力委員会は、次の如き説明書を発表した。

説明書

昭和36年9月11日

原子力委員会

1.当委員会は、昭和33年4月、暫くの間、民間に核燃料物質の所有を認めない旨決定したが、当時の状況は、日米、日英一般協定の未締結、国際原子力機関による保障措置の未制定等海外からの核燃料物質の受入れに伴う諸条件が不明確であり、国内的には原子力損害賠償制度の欠如、不十分な経験等開発初期段階における平和利用の保障、安全の確保に対する政府の責任上の見地及び国民感情に対する考慮等の理由により、核燃料物質は当分の間は国または公的性格を有する機関が所有することが適当であった。

2.その後、内外の諸情勢には、次のような進展がみられた。すなわち

(1)核燃料物質の供給国である米国、英国およびカナダとの間に一般協定が締結され、また国際原子力機関における保障措置が制定されるなど核燃料物質の受入れに伴う対外的諸条件が明確になり整備されるにいたった。

(2)原子力損害賠償制度が確立され、無過失責任の原則の確定、責任主体の明確化、賠償措置の確保など万一の際の被害者の保護に遺憾なきを期しうることとなった。

(3)研究開発が進展し、原子力平和利用に関する知識経験が深められた。

(4)対外的諸条件の整備、知識経験の深化等を基に、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に所要の改正を加え、国際規制物資について国際約束履行上必要な規制措置を講じ、原子炉について定期検査、プルトニウム、使用済燃料について施設検査、保安規定の認可等の措置を加え、更に検査官制度の新設、記録報告の整備による核燃料物質計量管理制度の完備を図るなど、国内的に十分な規制措置が整備された。このような諸般の体制の整備に伴って平和利用の保障、安全の確保に関し十分な措置が講じられたので、この際、特殊核物質(濃縮ウラン、プルトニウム、ウラン−233)を除く核燃料物質については政府の厳重な規制の下に民間にその所有を認めるものとし、民間における原子力発電等わが国原子力産業の自主的発展を更に期待することが適当である。

 この問題に関しては、さらに昭和36年9月12日の閣議において次の如く了解された。

核燃料物質の所有方式について

昭和36年9月12日

閣議了解

 政府は、昭和36年9月11日付原子力委員会の決定に基づき、天然ウラン、劣化ウラン及びトリウムについては、民間にその所有を認めるものとする。

 なお、自由民主党においても、本件に関して次の如き決定を行なっている。

核燃料の取扱いについて

(36.9.12)

自由民主党総務会

自由民主党政務調査会

科学技術特別委員会

1.特殊核物質を除く核燃料物質については、民間の所有を認める。

2.使用済燃料は国有または公有とする。

 但し、国際協定により外国に売渡すものは除く。