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令和4年度版原子力白書の公表に当たって


原子力委員会委員長 上坂 充


 我が国における原子力の研究、開発及び利用は、原子力基本法にのっとり、これを平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、民主的な運営の下に自主的に行い、成果を公開し、進んで国際協力に資するという方針の下、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上に寄与するべく行われています。


 原子力委員会では、平成29年7月に決定した「原子力利用に関する基本的考え方」について、原子力を取り巻く環境変化を踏まえて5年を目途に見直し、改定することとしていたことを受け、約1年にわたる有識者等からのヒアリング・議論を通して検討を行い、令和5年2月に改定しました。原子力白書は原子力行政のアーカイブであるとともに、今般改定した「原子力利用に関する基本的考え方」や、原子力委員会による「決定」や「見解」の内容をフォローする役割も担っており、毎年作成することとしています。今回の白書は、おおむね令和4年度の事柄を取りまとめ、広く国民の皆様にご紹介するものです。また、白書全体にわたって、コラムとしてトピックスや注目点を記載しております。


 今回は特集として、カーボンニュートラルの実現やエネルギー安全保障の確保などの観点から、世界的に原子力イノベーションに向けた取組が進んでいることを踏まえ、革新炉開発や原子炉の安全研究、廃止措置のための研究、放射線利用等に関する研究などの幅広い分野での原子力に関する研究開発・イノベーションの動向について、社会実装に向けた課題も含めて紹介しました。原子力に関するイノベーションが花開くためには、社会実装に向けた課題なども早い段階から議論の俎上に載せ、透明性・客観性を持って国民からの信頼を確保しつつ、研究機関・産業界が連携して研究開発に取り組むことが求められます。


 一方、第211回通常国会においては、原子力基本法等の改正を含む「GX脱炭素電源法」が成立し、原子力については、安全性の確保を大前提とした上で、その活用を進めるための措置が講じられました。我が国の原子力エネルギー利用に際しては、福島の復興・再生が再出発の起点であるということを認識しつつ、国民の信頼を大前提に進めていく必要があります。


 原子力白書が、原子力政策の透明性向上に役立つことを期待するとともに、原子力利用に対する国民の理解を深める際の一助となれば幸いです。


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