第2章 国内外の原子力開発利用の状況
11.原子力分野の国際協力
11.原子力分野の国際協力
(3)近隣アジア諸国及び開発途上国との協力
近隣アジア諸国及び開発途上国との協力としては、アジア地域原子力国際会議の下での協力やRCAの枠組みでの協力、二国間協定等に基づく各種協力を行っています。 また、IAEAは、1997年よりアジア地域における原子力安全性支援のための特別拠出金事業を、我が国の支援により開始しています。 なお、原子力委員会では、近隣アジア地域との協力の在り方及び方策を審議するために、原子力国際協力専門部会を1995年12月に設置し、審議を行っています。 原子力委員会は、1990年より日本を含む近隣アジア諸国9ケ国の原子力担当閣僚等の政策対話を行うための「アジア地域原子力協力国際会議」を毎年開催している。1998年3月3日には、第9回会議が開催され、各国の合意により実施されている協力の進展及び今後の地域協力の更なる進め方について、意見交換、情報交換が行われた。我が国は、同会議を地域協力の具体的な進展に合わせた形態として発展させることを提案し、1999年3月の第10回会合に向け、具体的発展方策について各国間で検討が進められることとなった。
また1997年10月30日、前年4月の原子力安全モスクワ・サミットにおいて橋本内閣総理大臣が提唱した「アジア原子力安全会議」の2回目の会議がソウルで開催され、安全確保のための協力、原子力賠償制度の確立、放射性廃棄物の管理などの原子力安全に係る重要事項が議論された。
また、IAEAは、1997年よりアジア地域における原子力安全性支援のための特別拠出金事業を、我が国の支援により開始した。1998年3月には、本事業の一環として中国原子力発電訓練センター(広東)においてアジア地域の原子力管理者を集めてワークショップが開催された。
表2-11-5 我が国における近隣アジア諸国等との多国間協力
- ○原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)
- 1972年に発効した本協定は、原子力科学技術に関する研究開発及び訓練の計画を、アジア・太平洋地域の締約国(17ヶ国)間の相互協力及びIAEAとの協力を通じて推進することを目的としている。我が国としては①RI・放射線の工業 利用、②核医学、③放射線防護強化の3つの分野を中心に推進。1997年7月、協定の期限到来により、各国は協定の5年間の単純延長に署名。
- ○アジア地域原子力協力国際会議
- 原子力委員会主催。1998年3月には第9回会議が開催され近隣アジア諸国の原子力開発利用の政策及び国際協力の現状などについて意見交換を実施。また、①研究炉利用、②RI・放射線の医学利用、③RI・放射線の農業利用④パブリック・アクセプタンス、⑤放射性廃棄物管理、⑥原子力安全文化の6分野について、インドネシア、フィリピン、韓国、マレーシア、中国及びオーストラリアにおいてそれぞれセミナー等を開催。
- ○アジア原子力安全ソウル会議
- 1997年10月アジア地域における原子力安全確保に向けた各国の取り組みの促進及び域内協力の強化を目的として開催。我が国を含むアジア地域9ヶ国(オーストラリア、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、韓国、タイ、ベトナム)から高級事務レベルの参加者が出席。さらに、オブザーバーとして12の国、国際機関が参加。アジア地域の原子力安全協力などについて意見交換を実施。
原子力委員会では、アジア地域における原子力開発利用への期待及びニーズの高まりを踏まえ、近隣アジア地域との協力の在り方及び方策等を審議するために、原子力国際協力専門部会を1995年12月に設置し、審議を行っており、1998年中に報告書を取りまとめる予定である。
表2-11-6 我が国における近隣アジア諸国等との二国間協力
- ○国際原子力安全セミナー
- アジア諸国の原子力関係の研究者、技術者等を我が国に招へいし、原子力安全に関する研修を実施。
- ○原子力発電所運転管理等国際研修(千人研修)
- 原子力発電技術者の技術レベル・安全意識向上のため、研修生を1992年から10年間に1,000人規模で招へい。
- ○原子力管理者研修
- 開発途上国の原子力関係の行政官を我が国に招へいし、我が国の原子力分野の体制経験等を習得する。
- ○原子力研究交流制度
- 開発途上国の研究者の招へい、我が国の研究者の派遣を行う。
表2-11-7 我が国のRCA協力活動一覧(1997年~1998年3月現在) 開催年月 項 目 1997年 2月IAEA/RCA
放射線防護インフラ強化のための政策策定会合(韓国) 3月第19回RCA政府専門家会合(ミャンマー) 5月放射線利用CRP準備会合(オーストリア)
原子力情報ネットワークプロジェクト専門家グループ会議(オーストリア) 6月放射線加硫専門家会合及び地域トレーニングコース(インドネシア) 7月廃棄物のインベントリー、特性及び処分場に関するワークショップ(中国)
ラドン専門家会合(モンゴル)
生物学的線量評価法のトレーニングコース(日本) 9月第26回RCA総会(オーストリア) 11月放射線防護基礎に関するトレーニングコース(日本)
環境試料分析ワークショップ(オーストリア) 12月体外線量計比較専門家会合(インド) 1998年 2月放射線防護に関する専門家会合(インド) 3月UDNP/IAEA/RCAサブプロジェクト
「電子伝達網の整備と技術支援」に関する専門家会合(マレーシア)
保健に関する専門家会合(インド)
工業利用・環境問題に関する専門家会合(日本)
第20回RCA政府専門家会合(ニュー・ジーランド)
表2-11-8 近隣アジア諸国及び開発途上国の関係機関との協力
1.韓国との協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 韓国 科学技術庁 韓国科学技術処(MOST) 規制情報交換 原子力防災を含む原子力安全に関する情報交換を行う。 1991~ 資源エネルギー庁 韓国科学技術処(MOST) 原子力発電安全規制情報交換 原子力発電所の安全性に関する情報交換を行う。 1991~2002 原 研 韓国原子力研究所(KAERI) 原子力の平和的利用分野における研究 原子力の平和利用分野での研究協力を行う。 1994 (財)原子力発電技術機構 原子力安全技術院(KINS) 原子力安全情報及び原子力安全解析 原子力発電安全情報及び原子力安全解析の分野で人的交流を含め情報交換を行う。 1991~2002 韓国機械研究院(KIMM) 耐震試験技術 原子力発電機器の耐震試験設備の設計、保守の分野での技術協力。 1997~2000
2.インドネシアとの協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 インドネシア 原研 インドネシア原子力庁(BATAN) 放射線加工処理 放射線加工処理(天然ゴムラテックスの改質)に関する共同研究を行う。 1984~1998 研究炉の利用と安全性等 研究炉の利用、RIの生産及びその利用炉物理等の各分野における研究協力を行う。 1988~1998
3.中国との協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 中国 科学技術庁原子力安全局 国家核安全局(NNSA) 規制情報交換 原子力施設の安全管理及び緊急時対応を含む安全規制に関連する情報交換を行う。 1994~1999 資源エネルギー庁 国家核安全局(NNSA) 原子力発電安全規制情報交換 原子力発電所の安全性・信頼性に関連する情報交換を行う。 1994~1999 原 研 中国清華大学 高温ガス炉技術の情報交換 高温ガス炉の研究開発に関する技術情報交換を行う。 1986~2000 中国核工業総公司(CNNC) 原子力の平和的利用分野での研究 原子力平和利用分野での研究協力を行う。 1993~1998 中国輻射防護研究院(CIRP) 放射性廃棄物処分浅地中処分の研究 低レベル放射性廃棄物浅地中処分の安全評価手法に係る研究を行う。 1995~2001
4.マレ-シアとの協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 マレーシア 原研 マレーシア原子力(MINT) 放射線加工処理 放射線加工処理(オイルパーム廃棄物)の有効利用に関する共同研究を行う。 1987~2002
5.タイの協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 タイ 原研 原子力庁(OAEP) 放射線加工処理及び研究炉 放射線加工処理(汚泥処理等)及び研究炉分野に関する共同研究を行う。 1994~1998
注)原研:日本原子力研究所
6.メキシコとの協力 実施機関 協力の分野 協力の内容 協力の期間 日本 メキシコ 原研 メキシコ原子力研究所(ININ) 放射線利用等 アクチニド化学、RI技術、研究炉の設計及び工学、並びに環境保全のための照射技術及び線量分野における協力を行う。 1990~2000
目次へ 第2章 第11節(4)へ