2.動燃問題と動燃改革
(3)動燃改革への原子力委員会の対応
原子力委員会は、原子力への国民の信頼回復はもとより、核燃料サイクル開発機構の運営に係る原子力委員会の責務の重大さを認識し、機構の業務の基本方針策定に主体的に取り組むこととしています。 原子力委員会は、動燃問題により、国民の原子力に対する不安感や不信感が、動燃のみならず我が国の原子力開発利用の円滑な展開にも影響を及ぼしたことを重く受け止め、原子力に対する国民の信頼の回復や原子力政策への影響の観点から動燃問題及び動燃改革に関し、審議を重ねた。
原子力委員会は、1997年6月20日、委員長談話として「核燃料サイクルの推進について*(参照)」を発表し、「もんじゅ」事故及び火災爆発事故という二度にわたる事故が、「原子力に対する国民の不安、不信を惹起し、今後の原子力開発利用、特に核燃料サイクルの円滑な展開に少なからぬ影響を及ぼしている」との認識を示すとともに、「原子力発電を今後とも安定的に進めていく上で、核燃料サイクルの重要性はいささかも変わるものではない」と、改めて核燃料サイクルの重要性について確認した。
表1−2−1 動燃改革に対する原子力委員会の対応 1997年
- 3月14日
- アスファルト固化処理施設における火災爆発事故(3月11日発生)の概要等について聴取、審議
- 3月28日
- 動燃事業団の危機管理体制に係る科学技術庁の対応状況等について聴取、審議
- 4月11日
- 動燃改革検討委員会の設置等について聴取、審議
- 4月22日
- 第1回動燃改革検討委員会(4月18日開催)の結果について聴取、審議
- 5月9日
- 核燃料サイクルの重要性について再確認
- 5月13日
- 第2回動燃改革検討委員会(5月12日開催)の結果について聴取、審議
- 5月20日・委員による現地視察
- ・動燃改革検討委員会との意見交換
- 6月10日
- 第3回動燃改革検討委員会(6月6日開催)の結果について聴取、審議
- 6月17日
- 事業者(電事連、日本原燃)から核燃料サイクルを巡る状況について聴取、審議
- 6月20日
- ・委員長談話「核燃料サイクルの推進について」取りまとめ
- ・第4回動燃改革検討委員会(6月17日開催)の結果について聴取、審議
- 7月8日
- 第5回動燃改革検討委員会(7月7日開催)の結果について聴取、審議
- 8月1日
- 動燃改革検討委員会の検討結果の聴取、委員長談話取りまとめ
- 8月22日 動燃事業団の抜本的改革と新法人設立のための1998年度予算要求について聴取、審議
- 8月26日
- 新法人作業部会本会合(8月22日開催)の結果について聴取、審議
- 9月2日
- 動燃事業団東海事業所におけるウラン廃棄物管理問題について聴取、審議
- 10月7日
- 動燃事業団東海事業所のウラン廃棄物貯蔵ピットに係る業務状況調査結果について聴取、審議
- 10月14日
- 高速増殖炉懇談会報告書(案)について聴取、審議
- 11月28日
- 新法人作業部会の結果について聴取、審議
- 12月1日
- 高速増殖炉懇談会報告書取りまとめの経緯、概要について聴取、審議
- 12月2日
- 高速増殖炉懇談会報告書案に関する一般国民からの意見、回答について聴取、審議
- 12月5日
- ・「今後の高速増殖炉開発の在り方について」委員会決定
- ・第7回動燃改革検討委員会(12月2日開催)の結果について聴取、審議
- 12月19日
- 動燃事業団より海外ウラン探鉱業務、ウラン濃縮技術、「ふげん」の活用方策について意見聴取
- 1998年
- 1月13日
- 動燃事業団のウラン濃縮・海外ウラン探鉱事業について電気事業連合会より聴取、審議
- 1月16日
- 動燃事業団のウラン濃縮について日本原燃(株)より聴取、審議
- 1月20日
- 動燃事業団の海外ウラン探鉱について日本鉱業協会より聴取、審議
- 2月3日
- 通産省より動燃事業団の整理・廃止事業について意見聴取
- 2月6日
- 「動力炉・核燃料開発事業団の改革の方針について」委員会決定
また、動燃改革検討委員会の報告書を踏まえ、1997年8月1日、原子力委員会は委員長談話を発表し、この中で動燃改革検討委員会が提案する核燃料サイクル関連の中核的研究開発機関のあるべき姿と動燃改革の実現の方向性に理解を示し、これらに沿って動燃改革の具体化が図られることが、核燃料サイクルの着実な推進と国民の原子力に対する信頼の回復にとって必要であるとの認識を示した。また、原子力委員会自らも、動燃改革が適切かつ確実に行われていくように引き続き審議を行っていくとともに、新法人の運営にかかる原子力委員会の責務を的確に果たしていく旨を表明した。
さらに、動燃改革法案の閣議決定に先立ち、原子力委員会は、1998年2月6日、「動力炉・核燃料開発事業団の改革の方針について*(参照)」を決定し、国の政策や社会との乖離が未然に防止できる体制が構築されることや、安全確保を最優先に地元重視を基本とし、国民に対する適切な情報公開を行うなど社会に開かれた体制の下で業務運営を進めることが極めて重要などの認識を示した。
なお、動燃が従来行ってきた海外ウラン探鉱、ウラン濃縮技術開発及び新型転換炉の研究開発については、新法人「核燃料サイクル開発機構」の設立に伴い、民間活動への移行ないし廃止が適当であり、それに向けた取り組みが必要であるとの考え方を示した。
原子力委員会は、1995年12月の「もんじゅ」事故を契機とした国民の原子力に対する不安、不審の高まり等を踏まえ、原子力政策円卓会議の開催、同会議での議論を踏まえた情報公開の促進等、信頼の回復のために具体的な努力を積み重ねてきた。しかしながら、1997年3月、火災爆発事故及びその後の不適切な対応により、動燃のあり方が根本的に問われる状況を招くに至ったことは、原子力政策に責任を有する原子力委員会としても、誠に遺憾と考える。
この点に関し、動燃改革検討委員会は、原子力に対する不信不安を惹起したことの根源的責任が動燃のみならず、科学技術庁、原子力委員会にもあること、また、これら三者の責任の輪郭が不明であることなど、動燃問題に係る原子力委員会の責任とその問題点を指摘した。さらに、「もんじゅ」事故を契機に開催された高速増殖炉懇談会は、国民の声を反映した、定期的な評価と見直しを行うなど、柔軟な計画の下に研究開発を進めることの必要性を指摘した。
原子力委員会としては、これらの指摘を真摯に受け止め、原子力に対する国民の信頼回復に努めることはもとより、原子力委員会、科学技術庁、核燃料サイクル開発機構の三者の責任関係の明確化も念頭に、機構の業務の基本方針の策定に主体的に取り組むとともに、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法のあり方についての大綱的指針」(1997年8月7日内閣総理大臣決定)を踏まえ、高速増殖炉研究開発など原子力の大規模かつ重要なプロジェクトについて研究評価の充実を図るなど、これらの指摘を今後の原子力政策の教訓とすることが重要と考える。
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