第8章 国際協力活動
2.開発途上国との国際協力

(1)IAEA/RCA

 我が国は,1978年8月,「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に加盟した。同協定は,アジア・太平洋地域の国際原子力機関(IAEA)加盟国間の原子力科学技術,特に放射線・アイソトープ(RI)の利用に関する研究開発及び訓練の推進・協力を目的とするものであり,日本を含むアジア・太平洋地域の国が加盟している。
 我が国は,これまで,このRCA計画に,資金・技術両面にわたり域内の原子力先進国として積極的に協力を行ってきており,現在,特に,工業利用計画,医学・生物学利用計画(いずれも放射線・ RIの利用分野)及び放射線防護分野の計画に関し,原子力先進国として中心的な立場で,各種のワークショップ,セミナー,研修生の受け入れ,専門家派遣等を通じた協力を行っている。RCA協定は1972年6月12日に発効し,その後1977年,1982年にそれぞれ5年間の延長が行われてきたが,1987年6月12日失効し,同日より新たに「1987年のRCA協定」が発効した。現在,日本,オーストラリア,中国,インド等14ヵ国が加盟している。



(2)開発途上国協力の展開

 近年,中国,韓国,アセアン諸国等は,各国においてその進展の度合いには相当差があるものの,総じて原子力開発利用の推進に高い意欲を有しており,アジアで最も進んだ原子力先進国である我が国に対して放射線・RI利用,研究炉利用,原子力発電等の原子力平和利用分野での協力に対する期待が高まりつつある。
 1984年12月には原子力委員会が「原子力分野における開発途上国協力の推進について」を決定し,特に開発途上国のニーズに応じ,技術協力の一層の促進に加え,人材交流を中心とした研究交流が重要である旨の方針を明らかにしている。
 これを受けて,科学技術庁では,1985年度に日本の研究所と開発途上国の研究所間で研究者の交流を行う研究交流制度を創設し,年々,交流の規模を拡大してきているところである。また1987年度に,開発途上国の原子力関係の中堅行政官を招へいして,日本の原子力分野の経験を修得することを目的とする原子力関係管理者研修を創設したところである。また,通商産業省では原子力発電分野の協力のため,総合エネルギー調査会原子力部会報告(1986年3月)に基づき,官民協力して開発途上国への技術協力に当たっているところである。
 1987年6月には,原子力委員会は,原子力開発利用長期計画を改正したが,3つの基本目標の1つとして「国際社会への貢献」がとりあげられており,開発途上国協力についても,二国間対応,近隣地域対応を主体的,能動的に実施していくよう提言されている。これを受けて科学技術庁では,地域協力の具体化に係る調査・検討,原子力専門家登録派遣斡旋事業等を行っているところである。
 他方,政府ベース技術協力の一環として実施している国際協力事業団による研修員受入れにおいても,従来,「アイソトープ放射線の医学・生物学利用」,「医療放射線技術」,「放射線科学基礎研究」,「原子力基礎実験」,「原子力発電」,「原子力安全規制行政セミナー」の研修コースを実施している。


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