第2章 核燃料サイクル
5.プルトニウム利用

 我が国においては,ウラン資源を有効に利用し,原子力発電の供給安定性を高めるため,長期的に安全性及び経済性を含め,軽水炉によるウラン利用に勝るプルトニウム利用体系を確立することが極めて重要である。このため,再処理により得られるプルトニウムを利用することとし,段階的に開発努力を積み重ねていくこととしている。
 プルトニウムの利用形態に関しては,ウラン資源の利用効率で圧倒的に優れる高速増殖炉での利用を基本とし,高速増殖炉の研究開発を進めることとしている。また,高速増殖炉の実用化までの間においても,将来の高速増殖炉時代に必要なプルトニウム利用に係る広範な技術体系の確立,長期的な核燃料サイクルの総合的な経済性の向上等を図っていくため,できる限り早期に軽水炉及び新型転換炉において一定規模でのプルトニウム利用を進めることとしている。


(1)軽水炉によるプルトニウム利用

 軽水炉によるプルトニウム利用(プルサーマル)については,軽水炉用ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)の特性確認並びに加工及び取扱い経験の蓄積を目的とした少数体規模での実証計画,実用規模のMOX燃料を装荷した際の炉心特性,運転特性等の確認並びに実用規模の軽水炉用MOX燃料の加工及び取扱い経験の蓄積を目的とした実用規模での実証計画PWR及びBWRそれぞれ1基(電気出力80万キロワット級以上)に最終装荷規模1/4炉心程度}を経て本格利用(最終装荷規模約1/3炉心として,100万キロワット級の発電用原子炉10基程度)に移行することとしている。現在は,少数体規模での実証計画が進められており,日本原子力発電(株)敦賀1号機(沸騰水型軽水炉:BWR)に1986年5〜6月MOX燃料体2体を装荷し,関西電力(株美浜1号機(加圧水型軽水炉:PWR)に1988年3月MOX燃料体4体を装荷した。


(2)プルトニウム燃料の加工

 使用済燃料の再処理により生ずるプルトニウムは,高速炉用MOX燃料及び熱中性子炉用MOX燃料への利用を図ることが可能である。高速増殖炉及び新型転換炉の開発の進展に応じて加工体制を整備していくとともに軽水炉への利用の要請に対応していく必要がある。

①プルトニウム燃料加工
 ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団を中心として実施されてきており,その加工実績も1989年5月末までの累積で約100トンに達しており,我が国は世界的にみてトップレベルにある。
 現在の製造設備能力は,新型転換炉原型炉「ふげん」用燃料製造施設の10トンMOX/年及び高速増殖炉用燃料製造施設の5トンMOX/年である。また,新型転換炉実証炉用燃料製造施設(40トンMOX/年)の建設が進められている。

②硝酸プルトニウムの混合転換
 MOX燃料の原料となるプルトニウム原料粉は,海外再処理で得られたもの及び東海再処理工場から得られた硝酸プルトニウムを動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発した「マイクロ波直接脱硝法」によって混合転換したものを使用している。
 本技術の実用化を図るためのプルトニウム転換技術開発施設は,1983年4月から試運転を開始しており,1989年5月末までに約3,800kgの混合転換粉を製造している。



(3)高速増殖炉燃料再処理技術開発

 我が国における高速炉燃料の再処理技術開発は,動力炉・核燃料開発事業団において実施されてきている。現在,ウランまたは放射性同位元素を用いた再処理工程・機器の実規模モックアップによる開発試験とともに高レベル放射性物質研究施設(CPF)において,高速実験炉「常陽」の照射済燃料を用いた実験室規模の再処理の試験が行われている。ここで回収されたプルトニウムが,1984年9月,「常陽」で始めてリサイクル利用された。また,工学規模でのホット試験によりプロセスエンジニアリングの確立を図るためリサイクル機器試験施設の詳細設計が進められている。
 また,前処理工程技術,遠隔技術等の技術開発に関する米国との共同研究が行われている。


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