第1章 原子力に期待される役割とその展開
2.エネルギー利用と地球規模の環境影響

(3)環境面から見たエネルギー利用

 以上に見たように,どのようなエネルギーであっても,その利用に大なり小なり環境への影響を伴うものであり,ある特定のエネルギー源がすべての環境問題を解決するということはあり得ない。エネルギー利用が我々の豊かな文明生活を支え,人類の活動の一部分であることを考えれば,他の人類の活動が環境に対し様々な影響を与えてきたと同様に,それが環境に対し何らかの影響を及ぼすことは避けられないものである。したがって,我々が現在の文明社会を受け入れるならば,エネルギー利用による環境影響についても,単にその非を論ずるだけではなく,どのようにして制御するかということについて真剣に考える必要があろう。
 各国のエネルギー政策において,どのようなエネルギー源をどの程度導入していくかは,その国のエネルギー資源の賦存状況,経済規模等の条件の下で,各エネルギー源の経済性,供給安定性等を踏まえ決められていくだけでなく,当然,各エネルギー源の環境に対する影響も考慮すべきことと考えられる。エネルギー利用に伴う環境影響は,各エネルギー源によって性格が異なり,ある特定のエネルギー源に依存することは,その影響効果を集積的に拡大し,もともと自然環境が有する自己回復機能の及ぶ範囲を越えて,とり返しのつかない深刻な結果をもたらすことになりかねない。このような危険を考慮すれば,多種のエネルギー源についてバランスのとれた開発を行っていくことが必要であり,その中において,窒素酸化物,二酸化炭素等を発生させないという点において優れた特長を有する原子力発電も,安全確保を大前提として,一つの重要な役割を果たしていくことは疑いない。


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