第1章 原子力開発利用の動向
3 主要研究開発の進展状況

(2)新型転換炉及びプルトニウム利用

 新型転換炉は,プルトニウムの早期利用を図るとの観点から,我が国独自に自主開発を進めてきた炉型であり,中性子利用効率の高い重水減速炉であるため,プルトニウムはもちろん,回収ウラン及び劣化ウランも有効かつ容易に利用できるという特長を有している。
 これまで新型転換炉の開発は,動力炉・核燃料開発事業団を中心に進められてきており,昭和54年3月に運転を開始した原型炉「ふげん」(電気出力16万5千キロワット)が順調に運転されており,この原型炉の建設・運転により実用化に向けての技術経験の蓄積がなされてきた。
 実証炉については,電源開発株式会社を建設・運転の実施主体とすることを決定している。その後,動力炉・核燃料開発事業団と電源開発(株)との間で昭和58年2月には相互協力についての基本事項を定めた「新型転換炉実証炉開発に関する相互協力基本協定」が締結され,また,同年12月には新型転換炉実証炉の合理化設計等の技術資料が動力炉・核燃料開発事業団から電源開発(株)へ引き渡され,電源開発(株)において基本設計が進められているところである。また,昭和58年8月から実証炉の建設予定地点である青森県大間町において立地環境調査が進められている。今後,1990年代初め頃の運転開始を目標に設計・建設を進めることとしている。

 なお,昭和59年6月には,原型炉「ふげん」に,東海再処理工場で得られた回収ウラン及びプルトニウムによる混合酸化物燃料が装荷された。これは,我が国における最初の回収ウランのリサイクルである。
 一方,軽水炉によるプルトニウム利用は,プルトニウムの早期利用を図る上で有力な手段である。これまで,この技術開発は電気事業者を中心として進められてきている。現在,少数集合体規模での照射計画が進められようとしているところであり,また,引き続いて実用規模(1/3炉心程度)での実証計画も検討されている。
 プルトニウム利用に関連して,プルトニウム―ウラン混合酸化物(MOX)燃料加工及び高速炉燃料の再処理についても動力炉・核燃料開発事業団において研究開発が進められている。
 MOX燃料加工については,現在,新型転換炉原型炉「ふげん」用及び高速実験炉「常陽」用燃料加工施設が稼働しており,その経験を踏まえ,高速増殖炉原型炉「もんじゅ」用(5トンMOX/年)の燃料加工施設の建設が進められており,また,新型転換炉実証炉用(40トンMOX/年)の燃料加工施設の建設準備が進められている。今後は,軽水炉でのプルトニウム利用,高速増殖炉の開発等の進展に応じ,その加工体制を整備していく必要がある。
 また,高速増殖炉の使用済燃料については,プルトニウム含有量が多いこと及び熱中性子炉の場合よりも燃焼度が高くなると考えられること等から,基本的には従来の再処理技術をベースとしつつも高速増殖炉使用済燃料に対応した再処理技術を確立する必要がある。現在,東海再処理工場の経験を踏まえて研究開発が進められており,昭和58年6月に高レベル放射性物質研究施設(CPF)で「常陽」の照射済燃料から初めてプルトニウムが回収され,昭和59年9月には再び「常陽」に装荷され,実験炉規模ではあるが,初めて高速増殖炉の核燃料サイクルが完結する等順調な進展をみせている。


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