第1章 原子力発電
3.軽水炉の改良・標準化
3.軽水炉の改良・標準化
軽水炉の改良・標準化については,通商産業省において原子力発電機器標準化調査委員会及び原子力発電施設改良・標準化調査委員会を設け検討が進められている。昭和52年度には,これらの委員会の下に改良ワーキング・グループ,標準化ワーキング・グループ及び耐震設計小委員会を設置し,第1次改良標準化(昭和50~52年度)の締めくくりというべき第1次標準プラントの概念を定める一方,これと並行して第2次改良標準化計画策定のための調査等を実施し,昭和53年5月に「昭和52年度軽水炉改良・標準化調査報告書」がとりまとめられた。
同報告書の概要は次のとおりである。
①第1次標準プラントの概念
取り入れた改良項目
(イ)改良型原子炉格納容器(PCV)
沸とう水型炉(BWR)については,
・PCV内機器配置妥当性の見直し
・配管の配置の応力上妥当性のチェック
加圧水型炉(PWR)については,
・プレストレスト・コンクリート製格納容器(1,100MW級)について格納容器内配置計画,耐震性等のフィージビリスティスタデイ
・蒸気発生器コンパートメント内配置計画の見直し
(ロ)その他取り入れた改良項目
BWRについては,
・応力腐食割れ(SCC)対策
・供用期間中検査(ISI)の自動化及び作業性向上
・クラッドの発生防止・除去等
PWRについては,
・燃料取扱系統の改善
・ISIの自動化
・蒸気発生器の細管検査の改良等
②第2次改良標準化計画策定のための基本調査
(i)定期検査から見た改良標準化策
BWRについては・・・・・・完全自動遠隔CRD自動交換器の開発,高速燃料交換器の開発等
PWRについては・・・・・・圧力容器蓋一体化装置の開発,燃料交換用マニピュレータクレーンの採用等
(ii)供用期間中検査(ISI)から見た改良標準化策・・・・・・自動超音波探傷装置の実用化等
(iii)運転機能から見た改良標準化案
・平常運転時における15~30%/時程度の負荷変動に耐えうる燃料の開発と信頼性実証
・系統事故時における高速度多相互閉路,所内単独運転機能,低周波数運転機能の採用
③改良プログラム
BWRについては,
・燃料の信頼性向上・・・・・・燃料自体の改良等
・オーステナイト系ステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC)に対する信頼性向上,熱疲労に対する信頼性向上・・・・・・給水昇温システムの開発
PWRについては,
・燃料信頼性向上
・蒸気発生器の信頼性向上・・・・・・伝熱管の改良,管支持板の改良
④標準化プログラム
日本型軽水炉の定着化を図るため以下の目的を持って耐震性を含めた標準化範囲の拡大,許認可申請書類の標準化を実施する。
・プロジェクトの計画,建設期間の短縮化
・機器設備の量産化(信頼性の向上,経済性の向上)
・重要機器支障時の代替品調達の迅速化
・技術者ポテンシャルの効率的活用
・許認可の効率化
現在,昭和55年度までを目途として一層の信頼性向上,被ばくの低減化,検査の効率化等を目的とした第二次の改良標準化が進められているが,この改良標準化を進めるに当たっては,今後とも,政府,電気事業者,機器メーカーが一体となって,強力に推進されることが期待されている。
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