IV 日豪,日仏原子力協力協定

2 日仏原子力協力協定

(1)原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国との間の協定
 日本国政府及びフランス共和国政府は,
 原子力の分野における日本国とフランスとの間の協力の進展に留意し,
 原子力の平和的利用に関する協力のための二国間協定によってその協力を促進することを希望し,
 この協定に基づいて供給された情報,資材,設備及び施設が平和的目的にのみ使用されることが両国政府の意図するところであることを確認して,
 次のとおり協定した。

 第1条
1 両締約国政府は,この協定に従い,両国における原子力の平和的利用を促進し及び開発するため,次の方法で協力する。

    (a)両締約国政府は,専門家,特に研究者及び技術者の交換による両国の公私の組織の間における協力を助長する。日本国の組織とフランスの組織との間の取決め又は契約の実施に伴いそのような交換が行なわれる場合には,両締約国政府は,それぞれ自国の領域への専門家の入国及びその領域における滞在を容易にする。
    (b)両締約国政府は,その相互の間,その管轄の下にある者の間又はいずれか一方の締約国政府との他方の締約国政府の管轄の下にある者との間において,公開の情報を相互に提供することを容易にする。それらの情報の交換に関する条件は,関係する締約国政府又は者の間の合意により事例ごとに定める。
    (c)各締約国政府又はその管轄の下にある認められた者は,原子力の平和的利用に必要な資材(特に原料物質及び特殊核分裂性物質),設備,施設その他の物を,他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に供給し又はこれらから受領することができる。その供給又は受領に関する条件は,関係する締約国政府又は者の間の合意により事例ごとに定める。
    (d)各締約国政府又はその管轄の下にある認められた者は,この協定の範囲内において,関係する締約国政府又は者の間の合意により事例ごとに定める条件で,他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に役務を提供し,又はこれらから役務の提供を受けることができる。
2 両締約国政府は,また,原子力の平和的利用を促進し及び開発するため,1の方法以外の方法による協力,特に原料物質の探鉱,採掘及び利用に関する協力を行なうことができる。

 第2条
1 各締約国政府は,この協定に基づいて受領された資材,設備及び施設並びに回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質につき,次のことを確保する。

    (a)平和的目的にのみ使用されること。
    (b)各締約国政府の管轄内では,当該各締約国政府によって認められた者にのみ移転されること。
2 各締約国政府は,この協定に基づいて受領された原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質が,その移転先において国際原子力機関(以下「機関」という。)の保障措置の下に置かれる場合又は供給締約国政府の事前の同意がある場合を除くほか,いかなる国又は国際機関にも移転されないことを確保する。

 第3条
1 両締約国政府は,前条の規定に基づく義務の履行た確保するため,機関との間に,その同意を得ることを条件として,かつ,その憲章に従い,次条の規定に適合する保障措置を定める三者間協定を締結することを約束する。その三者間協定は,できる限りこの協定の効力発生の時に締結する。
2 この協定の保障措置は,この協定に基づいて入手した原料物質,特殊核分裂性物質,設備若しくは施設,回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質又はこの協定に基づいて入手した原料物質若しくは特殊核分裂性物質若しくは回収され若しくは副産物として生産された特殊核分裂性物質を使用し若しくは処理する設備若しくは施設であって,受領締約国政府がこの協定の効力発生の日前に締結した国際約束に従い当該受領締約国の領域において機関の保障措置の下に置かれるものについては,適用しない。
3 いずれか一方の締約国政府が核兵器の不拡散に関する条約第3条4にいう協定又はこれと同様の協定で他方の締約国政府が受け入れることができるものを機関との間に締結する場合には,その協定が適用されている期間中,当該一方の締約国に関する限り,1の三者間協定で定める保障措置の適用は,停止する。

 第4条
 前条の保障措置が適用されない場合には,
(a)供給締約国政府は,第2条の約束が遵守されていることを確認するため,次のことを行なう権利を有する。

    (i)この協定に基づき他方の締約国政府若しくはその管轄の下にある認められた者に供給された設備及び施設又はこの協定に基づいて供給された原料物質若しくは特殊核分裂性物質若しくは回収され若しくは副産物として生産さわた特殊核分裂性物質を使用し若しくは処理する設備及び施設の設計を検討すること。ただし,その検討は,この協定が遵守されていることを確保するために必要な最小限度に限定される。
    (ii)他方の締約国政府と協議のうえ,この協定に基づいて供給された原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は回収され若しくは副産物として生産された特殊核全裂性物質の計量の正確性を検認し及び第2条の規定が遵守されていることを確認する目的のため,すべての場所及び資料並びにこの協定に基づいて供給された資材,設備又は施設に職掌上関係するすべての人に必要な場合に近づき,かつ,その目的のため自ら計測を行なうことができる代表者を任命すること。その代表者は,いずれか一方の締約国政府の要請があるときは,その職務の遂行が遅滞させられ又は妨げられないことを条件として,受領締約国政府が任命する代表者を伴わなければならない。
    (i)及び(ii)の目的のため供給締約国政府によって任命された代表者は,その政府に対する自己の責任に従うことを条件として,その公的任務により知るに至った産業上の秘密又は他の秘密の情報を漏らしてはならない。
(b)受領締約国政府は,(a)(ii)の原料物質及び特殊核分裂性物質の正確な計量が常時維持されることを確保するために必要な記録が保持されること,並びにその記録が供給締約国政府の要求に応じてその政府に提出されることを約束する。
(c)両締約国政府は,(a)及び(b)に定める保障措置の適用を容易にすることを約束する。
(b)両締約国政府は,(a)及び(b)の規定を適用するにあたり,機関の保障措置制度の原則及び手続を尊重する。

 第5条
 第1条の規定に基づいて締結される取決め及び契約は,必要があるときは,その当事者の責任についての条件を定めることができる。
 この協定は,それらの取決め及び契約の実施に伴う責任を締約国政府に課するものと解してはならない。

 第6条
 この協定のいかなる規定も,締約国政府が原子力の平和的利用に関する他の国際協定を締結しているためにこの協定の署名の日に負っている義務に影響を及ぼすものと解してはならない。

 第7条
 両締約国政府の代表者は,この協定の適用から生ずる問題について協議するため随時会合する。

 第8条
 この協定の適用上,

    (a)  「設備」とは,原子力計画における使用のために特に設計され又は製造された主要な機械,装置若しくは器具又はその主要な構成部分をいう。
    (b)「施設」とは,原子力計画における使用のために特に設計され又は建設された建物又は構築物をいう。
    (c)  「者」とは,個人又は法人その他の団体(特に公私の協会,会社及び組織)をいい,日本国政府及びフランス共和国政府を含まない。
    (b)「公開の情報」とは「秘・防衛」「極秘・防衛」の秘密区分に属しない情報をいう。
    (e)  「原料物質」とは,次のものをいうウランの同位元素の天然の混合率からなるウラン同位元素ウラン235の劣化ウラントリウム金属,合金,化合物又は高含有物の形状において前記のいずれかの物質を含有する物質他の物質であって両締約国政府が合意によって定める含有率において前記の物質の1又は2以上を含有するもの両締約国政府の間の合意によって定めるその他の物質
    (f)「特殊核分裂性物質」とは,次のものをいう。
     プルトニウムウラン233ウラン235同位元素ウラン233又は235の濃縮ウラン前記の物質の1又は2以上を含有する物質両締約国政府が合意によって定めるその他の核分裂性物質「特殊核分裂性物質」には,原料物質を含まない。
    (g)「回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質」とは,この協定に基づいて供給された原料物質若しくは特殊核分裂性物質から得られた特殊核分裂性物質又はこの協定に基づいて供給された設備若しくは施設を用いて行なう1若しくは2以上の処理によって得られた特殊核分裂性物質をいう。
    (h)  「資材」とは,原料物質,特殊核分裂性物質及び両締約国政府が合意により資材として定めるその他の物質をいう。

 第9条
1  2の規定が適用される場合を除くほか,この協定は,10年間効力を有するものとし,その後は,いずれの締約国政府も,他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意図を通告することができる。その場合には,この協定は,その通告が行なわれた後6箇月で終了する。
2 第4条の規定の適用に関し,各締約国政府は,他方の締約国政府が第2条の約束を遵守しなかった場合には,当該他方の締約国政府に対し是正措置をとるよう要求する権利を有する。その是正措置が適当な期間内にとられなかったときは,その是正措置を要求した締約国政府は,書面による通告によってこの協定を廃棄する権利を有する。この協定が廃棄された場合には,いずれの締約国政府も,この協定に基づいて締結された契約の廃棄及びこの協定に基づいて供給された特殊核分裂性物質でその時に他方の締約国政府の管轄の下にあるものの返還を要求することができる。ただし,その返還につき時価による支払を行なうことを条件とする。

 第10条
 この協定は,両国のそれぞれの憲法に従って承認されなければならない。この協定は,それぞれの国において憲法上の要件が満たされたことを確認する通告の交換の日に効力を生ずる。
 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けて,この協定に署名した。
 1972年2月26日に東京で,ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書2通を作成した。
 日本国政府のために
    福田赳夫
 フランス共和国政府のために
    ルイ・ド・ギランゴー

(2)原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定第4条(d)に関する交換公文

   (フランス側書簡)

(訳文)
 書簡をもって啓上いたします。本使は,本日署名された原子力の平和的利用に関する協力のためのフランス共和国政府と日本国政府との間の協定第4条(d)の規定に関し,両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
 協定第4条(a)(i)の規定に従い設計が検討される設備及び施設は,国際原子力機関の文書INFCIRC-66-Rev・2に定める同機関の保障措置制度及び同機関の理事会が行なうその追加又は修正において定義される主要な原子力施設に限定する。
 本使は,閣下が前記の了解を日本国政府に代わって確認されれば幸いであります。
 本使は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
  1972年2月26日に東京で
   フランス共和国特命全権大使
       ルイ・ド・ギランゴー
   日本国外務大臣
        福田赳夫閣下
           (日本側書簡)
 書簡をもって啓上いたします。本大臣は,次のとおり通報された本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
           (フランス側書簡)
 本大臣は,前記の閣下の書簡に述べられた了解を日本国政府に代わって確認いたします。
 本大臣は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
  1972年2月26日に東京で
   日本国外務大臣 福田赳夫
   フランス共和国特命全権大使
       ルイ・ド・ギランゴー閣下
(3)原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定第6条に関する交換公文
   (フランス側書簡)

(訳文)
 書簡をもって啓上いたします。本使は,本日署名された原子力の平和的利用に関する協力のためのフランス共和国政府と日本国政府との間の協定第6条の規定に関し,両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
 前記の協定と欧州原子力共同体を設立する条約との間には,いかなる矛盾も存在しない。したがって,前記の協定の実施は,フランスが欧州原子力共同体に加盟しているために負っている義務,特に同条約第7章の規定に基づく義務によりなんら制限されることはない。
 本使は,閣下が前記の了解を日本国政府に代わって確認されれば幸いであります。
 本使は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
  1972年2月26日に東京で
    フランス共和国特命全権大使
        ルイ・ド・ギランゴー
    日本国外務大臣
        福田赳夫閣下
        (日本側書簡)
 書簡をもって啓上いたします。本大臣は,次のとおり通報された本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
        (フランス側書簡)
 本大臣は,前記の閣下の書簡に述べられた了解を日本国政府に代わって確認いたします。
 本大臣は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
 1972年2月26日に東京で
      日本国外務大臣 福田赳夫
      フランス共和国特命全権大使
          ルイ・ド・ギランゴー閣下
(4)原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定第10条に関する交換公文
      (フランス側書簡)

(訳文)
 書簡をもって啓上いたします。本使は,本日署名された原子力の平和的利用に関する協力のためのフランス共和国政府と日本国政府との間の協定第10条の規定に関し,両政府の次の了解を確認する光栄を有します。
 両締約国政府は,前記の協定及びその第3条1の三者間協定が同時に効力を生ずることを確保するために必要な措置をとる。
 本使は,閣下が前記の了解を日本国政府に代わって確認されれば幸いであります。
 本使は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
 1972年2月26日に東京で
   フランス共和国特命全権大使
       ルイ・ド・ギランゴー
   日本国外務大臣
       福田赳夫閣下
         (日本側書簡)
 書簡をもって啓上いたします。本大臣は,次のとおり通報された本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
         (フランス側書簡)
 本大臣は,前記の閣下の書簡に述べられた了解を日本国政府に代わって確認いたします。
 本大臣は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。
 1972年2月26日に東京で
    日本国外務大臣 福田赳夫
    フランス共和国特命全権大使
        ルイ・ド・ギランゴー閣下


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