(1)再処理施設の建設
動力炉・核燃料開発事業団は,昭和46年6月,茨城県東海村にわが国最初の使用済燃料再処理施設の建設を開始した。
本計画は,わが国における核燃料サイクル確立の一環として推進されているものであり,この施設は,年間210トンの処理能力を有し,処理方式として溶媒抽出法による湿式ピューレックス法を採用しており,昭和49年度末に操業開始の予定である。
現在,主工場,廃棄物処理場,分析所,高レベル廃棄物貯蔵所等の主要な建屋の躯体工事がほとんど完了し,内装機器類の据え付けが進められている。また,主要機器の多くは据え付けを待つばかりとなっている。
(2)再処理技術に関する研究開発
現在,世界の主流を占める再処理方式は湿式法であるが,この方式に比べて乾式法は工程が短く,液体廃棄物を出さない等の利点を有し,その開発が期待されている。このため,日本原子力研究所において乾式法,とくにフッ化物揮発法について模擬燃料によるプルトニウムのフッ素化,プルトニウムの分離などの基礎研究を行なっている。
(3)使用済燃料の輸送
日本原子力研究所のJRR-2および京都大学の原子炉の使用済燃料が,昭和46年度にひきつづき再処理のために米国のアイダホ工場に輸送された。
また日本原子力研究所の材料試験炉(JMTR),日本原子力発電(株)の東海発電所および敦賀発電所の使用済燃料も再処理のため英国のBNFL(英国原子燃料公社)に輸送された。
なお,敦賀発電所の使用済燃料は,軽水炉からのものとしてはわが国で初めてであり,その輸送は今後の軽水炉からの使用済燃料の安全輸送を行なう上で参考になった。
使用済燃料の輸送の安全を確保するためには,輸送容器の設計および輸送の方法について適切な規制が必要である。国際間の輸送については,従来,国際原子力機関(IAEA)の放射性物質安全輸送規則に基づいて規制が行なわれてきた。国内輸送についても,このIAEAの規則に準じて規制が行なわれてきているが,その規制に関する法体系は必ずしも十分に整備されていなかった。
IAEAの同規制が,1972年に大幅に改訂されたのを契機に,わが国としては,放射性物質の安全輸送のための国内関係法令を整備することとく,所要の検討を進めている。
一方,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設が操業を開始する昭和49年度からは,発電炉から再処理施設への使用済燃料の国内輸送が頻繁に行なわれることとなるので,これに対応して民間においても使用済燃料の輸送事業をめぐる動きが活発化している。
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3. 使用済燃料の再処理