第2章 原子力発電
1. 概要

 わが国の電力需要は,国民生活水準の向上や経済社会の発展に伴って,年率約12%と急速な伸びを示してきたが,このような傾向は伸び率に多少の低下はあっても,今後とも続くものと考えられている。そして,この増大する電力需要を満たすために,水力,火力,原子力による発電所の建設が鋭意進められている。
 しかし,包蔵水力には限界があり,火力発電では原油の国際価格上昇および供給不安,大気汚染などの問題があり,水力,火力に将来とも全面的に依存していくことはできず,適切な管理のもとにきれいなエネルギーを安定して供給できる原子力発電に対する要請がますます増大してきている。
 このような状況のもとで,わが国では現在182万3千kwの原子力発電所が運転中であるが,これが昭和55年度末には約3,200万KW,昭和60年度末には約6,000万kWと急速に増大するものと見込まれている。海外諸国でも積極的な原子力発電の開発が進められており,昭和48年5月にOECD―NEAが行なった予測によれば,昭和60年(1985年)の原子力発電規模は米国で約2億8,000万kw,西ドイツで約3,800万kW,英国で約3,500万kWと見込まれており,自由世界全体で約5億6,000万kWに達するものと予想されている。
 しかし,近年における環境保全および安全性に対する国民的関心の高まりの中で,原子炉の安全性,温排水等の問題が大きくクローズアツプされ,原子力発電所建設予定地点で,一部地元住民による反対運動が起り,原子力発電所の建設計画が遅延する傾向にある。安全性,環境保全等の問題については,従来からも積極的に対処してきたところであるが,今後さらに一層研究開発を行なう等によって国民の納得をえて,原子力開発利用の円滑な推進を図って行かねばならない。


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