II 原子力委員会の計画および方針

9 軽水炉の非常用炉心冷却設備の性能に関する原子力委員会委員長談話

(46.7.1)

 当委員会は去る6月1日にアイダホ原子炉実験所における非常用炉心冷却設備の実験に関する委員長談話を発表し,既設原子炉の運転停止を必要とするような問題ではないとの見解を明らかにするとともに,米国に調査団を派遣する等により慎重な検討を進めてきた。
 調査団は,6月8日から20日間にわたり米国原子力委員会等においてアイダホ原子炉実験所における実験内容,これに関連して,米国原子力委員会のとった措置等の実情を調査してきた。アイダホ原子炉実験所の実験はごく小規模なモデル実験であり,実験炉を十分に模擬したものではないが,この実験結果から非常用炉心冷却設備について当初期待されていた性能の一部が有効でないかもしれないという懸念が生れた。その実験結果が実用炉にそのまま当てはまるものではないが,米国原子力委員会は安全性を重視する立場から,最近出された暫定指針においてその懸念が実験その他により十分解消されるまでその性能の一部がないと仮定するきびしい条件を用いて安全性を確認することとしている。
 調査団は,この暫定指針について詳細な調査をしてきたが,わが国に設置されているものと同型の原子炉についてすでに米国において暫定指針を用いた検討が行なわれ,炉の停止または出力制限をする必要がないと判断されていることを確認した。
 わが国の安全評価においては,当委員会が定めた原子炉の安全審査のための指針にもとづき万一の冷却材喪失事故を仮定してきわめて過酷な条件のもとに事故評価を行なっており,これに適合しているものについては,今回の米国の暫定指針に照らしても炉の停止または出力制限をする必要がないと考える。
 わが国の原子炉の安全性の確保のためには,従来からたえず新しい研究成果や実験結果を取り入れ対処してきているが,今後とも当委員会および原子炉安全専門審査会において引きつづき調査研究をつづけ,更にその万全を期する所存である。


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