第8章 原子力船

§2 原子力船の研究開発

 わが国の原子力船の研究開発は,第1船「むつ」の建造により,船体および船用炉を一体とした原子力船建造に関する技術体系を確立し,第2船以降の実用原子力船の建造は民間企業が中心となって行なうことが期待され,政府としては円滑な実用化が進められるよう適切な措置を検討する必要があるという基本方針に沿って調査研究がすすめられている。
 原子力船の経済性は,船用炉の価格によって大きく左右され,また,原子力船実用化の技術的問題点の大部分は舶用炉にある。しかしながら安全にして経済的な実用舶用炉は世界的にも未だ実現しておらず,今後の研究開発に期待するところが大きい。実用的な舶用炉は,一次系機器の一体化,炉心の長寿命化,高出力密度化を図るとともに,遮蔽,格納容器等安全防護設備の小型軽量化を達成し,かつ,振動,動揺,衝突等船舶特有の問題に対して十分安全なものとしなければならない。
 昭和45年8月,原子力委員会は原子力船懇談会の報告を受けて,今後船用炉の研究開発の促進等適切な措置を講ずる旨の決定を行なった。この報告書の趣旨に従い,昭和46年度は,前年度に引き続き運輸省船舶技術研究所において,ガンマ線遮蔽,原子炉圧力容器の強度,船体運動による炉心の熱的特性への影響,半潜水船の可能性等の研究が実施されたほか,新たに中性子線の遮蔽,舶用炉の小型化等の研究も実施された。また,(社)日本造船研究協会では原子力平和利用研究委託費により舶用一体型加圧水炉の概念設計に関する試験研究を行なうとともに,海外舶用炉の技術的,経済的評価研究を実施した。一方民間においては日独原子力コンテナー船共同評価研究が実施された。この共同研究は,西ドイツのGKSS(原子力船建造運航利用会社)とわが国の日本原子力産業会議との間で行なわれ,一体型加圧水炉(EFDR-80)を塔載した8万軸馬力,速力約28ノット,約1,850個積コンテナー船を想定し,在来船と比較することにより,技術的,経済的問題点についての検討を行なったものである。


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