第4章 濃縮ウラン
§2 ウラン濃縮に関する海外諸国の動向

2 米国の動向

(1) 濃縮能力増強計画
 自由世界で唯一の濃縮ウラン供給国である米国は,現在その3工場の最大分離作業能力の約50%を稼動させ,需要を上回る生産すなわち将来の需要を見越した予備生産を行なっている。
 USAECは今後予備生産量を増やすとともに,現有3工場の改良計画(CIP)および増出力計画(CUP)により現在の最大分離作業能力17,000トンSWU/年を約50%増大し,最大分離作業能力を約27,000トンSWU/年まで増強することを検討している。

 さらに,濃縮工場の廃棄濃度を引き上げることによって生産量を増やす計画も考えられており,これら一連の増産計画を着実に実行することにより,米国は,1980年頃までの内外の需要にこたえようとしている。

(2) 濃縮技術の民間への公開
 ウラン濃縮事業は米国において民間に開放されていない唯一の原子力関係事業であるが,事業の性格が商業的色彩を強めるにしたがい,現在USAECの管理下にある3工場を民間に移管しようとする動きが出ており,1969年11月,ニクソン大統領は濃縮工場を将来民間に移管する方針を明らかにした。さらに1971年6月9日,USAECは濃縮技術を民間企業へ公開する時期に至ったと判断し,限られた数の米国人企業に対しUSAECのガス拡散法および遠心分離法のデータを公表すると発表した。
 従来,米国においては濃縮技術は国家秘密に属する事項とされ,民間における研究開発を禁止してきたが,一定の機密保護の下に民間企業に対し技術提供が行なわれることになるものと思われる。

(3) 濃縮技術の海外への供与
 米国は,1969年7月厳格な機密保護措置の下ではあるが,その濃縮技術を海外に供与することについて検討中であると発表した。そして,1971年7月に至り,その濃縮技術を提供する可能性につきEC諸国,太平洋諸国等と予備的な話し合いに入る用意がある旨提案してきた。
 この米国の提案に基づき1971年11月ウラン濃縮国際合弁事業に関する予備会談が開催され,わが国を初めEC諸国等が参加したが,その結果明らかになった主要な事項は以下のとおりである。
 ① 米国は濃縮ウランを将来とも海外諸国に供給する方針であるが,その独占は考えておらず,この国際共同濃縮工場の成果に大きな期待をよせていること。
 ② その参加国に要請される機密保護措置は,米国内の事情もあり,極めて厳しいものになると判断されること。
 ③ しかしながら,機密事項に関与しない形ででの事業に参加することは可能であること。
 ④ 参加国がグループを形成することが,ウラン濃縮に関するこれ以上の情報提供の条件であること。


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