第10章 原子力施設の安全対策
§9 放射線障害防止の研究
放射線障害防止の研究は,科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研),関係国立試験研究機関,大学等においてすすめられている。
放医研では,経常研究として,放射線による人体の障害ならびにその予防,診断および治療に関する調査研究を実施している。
これらの経常研究のほか,関連研究部が共同で行なう特別研究として,5カ年計画により「プルトニウムによる内部被曝に関する調査研究」が40年度から実施されており,41年度には,新たに3カ年計画で,特別研究として「放射線障害の回復に関する調査研究」をとりあげ,分子,細胞,臓器,組織,個体の各レベルにおけるそれぞれの放射線障害からの回復に関する研究が推進されている。
大学,その他の研究機関においては,日本学術会議放射線影響部会が中心となり,文部省科学研究費により,放射性物質の環境における動向,人体の被曝線量,放射線の身体的,遺伝的影響等に関する研究が総合的にすすめられており,42年2月,東京大学医学部で41年度研究成果の報告会が行なわれた。
その他,民間企業においても,委託費および補助金の交付を受けて,次節に述べる放射性廃棄物の処理,処分に関する研究をはじめ,原子炉事故等により放出される放射性ガスによる外部および内部被曝線量の評価,防護薬剤,防護服の研究等が実施されている。
最近の傾向としては,人体に対する中性子線の影響についての研究が行なわれており,また,放射線種類別の遺伝的作用機構,核燃料物質の加工過程における粉塵の肺沈着ならびにその対策等,原子力利用の進展とともに積極的な研究がつづけられている。
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