第7章 国際協力
§4 2国間協定

 現在わが国が締結している原子力平和利用のための2国間協定には,原子炉,濃縮ウラン等の受入を予定した日米協定,動力用原子炉,天然ウラン燃斜等の受入れを予定した日英協定およぴウラン精鉱等の受入れを予定した日加協定がある.研究用特殊核物質の供給について規定した日米協定第5条Aについては,改正のための議定書が,38年8月ワシントンにおいて署名され,39年4月効力発生のための要件を満たした旨の文書による通告が相互に行なわれ,効力が発生した.これは,わが国における原子力研究開発の進展にともない,研究用特殊核物質(燃料用以外のウラン235,ウラン233およびプルトニウム)の需要が増大しているので,これに応ずるため日米協定第5条Aに規定された研究用特殊核物質の供給限度わくの撤廃が必要となり,37年2月米国側に申し入れて以来交渉が行なわれた結果,合意に達したものである.上記の2国間協定の38年度の実施状況は,おおむね次のとおりである.
 日米協定第7条の規定にもとづき米国から賃貸借する濃縮ウラン燃料については,36年5月に締結された特殊核物質賃貸借協定(旧ブランケット協定)によって賃貸借が行なわれていたが,同協定の期限が38年6月30日をもって満了したことにともない,現在新ブランケット協定の締結について日米間で交渉中であり,これが合意に達するまでは旧ブランケット協定の暫定延長措置が講じられている.従って,38年度の濃縮ウランの入手は,旧ブランケット協定の期限満了以前に米国に発注したものおよび前記暫定延長措置により特別に日米間で合意したものに限られることとなった.これらは,(第7-2表)のとおりである.

 旧ブランケット協定が締結される以前の5次にわたる賃貸借協定によりわが国が賃貸した濃縮ウラン約26キログラム(ウラン235量以下同じ.),旧ブランケット協定により36年度および37年度に賃借したもの約175キログラム,38年度中に前記の暫定延長措置等により賃借したもの約25キログラムならびにJPDR用燃料として購入した濃縮ウラン約119キログラムを合計すると,わが国が米国から供給をうけた燃料用濃縮ウランは,345キログラムに達する.これは,日米協定第7条Aに規定された燃料用濃縮ウランの供給限度わく2700キログラムの約13%に当たる.これらは,(第7-3表)のとおりである.
 日米協定第5条Aの規定にもとづき米国から購入する研究用特殊核物質については,前述のとおり,その供給限度額は撤廃されたが,実際に購入するに当たっては,さらにその細目について購入協定を締結することが必要であり,37年2月および11月に締結された購入協定にひきつづき,38年2月に第3次の購入協定の締結について米国側に申し入れ,現在,日米間で,その案文について交渉が行なわれている.

 これは,従来のような特定の物質を対象とした購入協定ではなく,今後における全ての研究用特殊核物質の購入をカバーする包括的な協定となる予定である.
 日米協定第3条の規定による日米研究協力は,酸化物および炭化物系核燃料をテーマとし,37年度に定められた実施要領にもとづき次のように活発に行なわれた.37年5月上記のテーマに関する専門家会議は,日本側技術者25名およぴ米国側技術者8名の参加により東海村において開催され,研究発表および討議が行なわれた.この専門家会議を契機として,酸化ウラン等の試料の日米間における交換が行なわれた.第2回二ューズレターの交換は,38年11月に行なわれ,また,論文の交換も随時行なわれた.なお,日米研究協力のテーマを原子炉の耐震性および安全防護装置に拡大することについて日米間に合意が成立したので,39年度から具体化される見込である.
 日米研究協力における技術者交流にともなう特許権の取得および使用に関する問題については,日米両国間にそれぞれの特許制度の相違があるため,未だ結論に達していないが,本問題解決のため,関係各機関との協議を行ない,検討が進められている.
 日英協定にもとづき,日本原子力発電(株)が英国から導入した発電第1号炉の燃料の購入に関する日本原子力発電(株)と英国原子力公社との間の,契約は,38年7月調印された.


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